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平成30年(2018年)8月5日(日) / 「日医君」だより / 日医ニュース

平成30年7月豪雨の被災地に対する具体的な支援策を検討

 被災者健康支援連絡協議会が7月13日、日医会館小講堂で開催された。
 今村聡同協議会事務局長(日医副会長)の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武同協議会長(日医会長)は「平成30年7月豪雨では大きな被害が出ており、多くの方が避難生活を余儀なくされている。本日は被災地のニーズを基に、その具体的な支援方法を検討していきたいと考えているので、よろしくお願いしたい」と述べた。
 議事に移り、報告では、まず、三つの被災県医師会からの現状説明が行われた。
 松山正春岡山県医師会長は、7月11日に県外からのJMAT派遣を日医に要請したことを報告。「今後の最大の課題は、地域医療が壊滅状態にある倉敷市真備町の機能を回復させることにある」として、支援を求めた。
 平松恵一広島県医師会長は、①水不足により診療を中断している医療機関がある②避難所ではダンボールのベッドが不足している他、深部静脈血栓症の疑いのある避難者が見られる―ことなどを説明。「避難所生活が長引くことで、今後医療ニーズがどのように変化するかは不明だが、現時点では県内で対応が可能である」とした。
 村上博愛媛県医師会長は、7月11日から先遣JMATを派遣した結果を基に、医療機関の機能は回復してきているが、水の供給支援が求められているとした他、今後は保健師を中心とした支援体制の構築が必要との考えを示した。
 行政(厚生労働省、内閣府、文部科学省、環境省)からは、保健師の派遣状況、消毒薬不足地域への対応等の感染症対策、大学病院を中心とした患者の受け入れ状況、医師の派遣状況、熱中症対策―等の報告がなされた。
 各構成団体からの報告の中では、石川広己常任理事が、①7月5日以降、休日夜間を問わず、「都道府県医師会・日本医師会事務局災害時情報共有システム」などにより、各都道府県医師会に対して情報共有を要請し、全国で情報共有を図ってきた②岡山県医師会からの要請を受けて、7月12日に県外からのJMAT派遣を決定し、都道府県医師会に編成を依頼した③被災した医療機関及び地元の医師会を支援するため、支援金の募集を開始する―ことなど、日医の対応を説明した。

都道府県医師会と協力し被災地支援に当たる―石川常任理事

 その後の協議では、岡山県医師会から当面2週間のJMAT派遣が、広島・愛媛両県医師会からは水の供給が改めて求められ、構成団体で協力し対応していくこととなった。
 当日の議論を踏まえて、横倉会長は、「各構成団体には現地のニーズにあった支援を、行政には緊密な連携に基づいた支援を、それぞれお願いしたい」と述べ、協議会は終了となった。
 協議会終了後、石川・江澤和彦両常任理事が記者会見を行い、改めて日医の対応等について説明を行った(写真左)
 石川常任理事は、①岡山県医師会に対して、当面2週間、常時8チームが活動できるようJMATの派遣を決定し、都道府県医師会に協力を求め、7月13日には福岡県のJMATが倉敷市内で活動をしている②翌14日には兵庫県医師会が組織した統括JMATが倉敷市内に入る予定である③自身も日医の救急災害医療担当として、被災地入りする―ことなどを報告。その上で、「今後は、避難者の熱中症や深部静脈血栓症、心のケアについて対応が必要になると考えられる。日医としても、都道府県医師会と連携し、引き続き全力で被災地支援に取り組んでいきたい」と述べた。

「先遣JMAT」の早期派遣を検討へ

 石川常任理事は7月18日にも記者会見を行い、15日に江澤常任理事と共に「平成30年7月豪雨」の被災地である岡山県、次いで広島県を訪問したこと及びJMATの活動状況について報告した。
 同常任理事は、現地では熱中症や復旧作業中のけが、結膜炎等が増えているとの報告があることから、メディアに対し、全国からボランティアで向かう人々に向け、熱中症対策や、破傷風の予防接種を受けた上で現地に赴くよう、働き掛けて欲しいと要望した。
 更に、今後は医療機関の復旧が焦点となると指摘。"医療がなければ、まちの再建はない"と強調し、日医として、地域医療、地域包括ケアの復旧を全力で支援していくとし、厚労省の「医療施設等災害復旧費補助金事業」、経産省の「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」、また、被災して休業している医療機関の従業員の雇用を守るため、災害で休業している場合の失業手当、休業手当を支払う場合の厚労省の助成金制度等の情報を、岡山・広島・愛媛各県医師会に提供し、検討を依頼しているとした。
 その上で、今回のJMAT活動では、平成28・29年度の「救急災害医療対策委員会」が提言した「統括JMAT」を倉敷市に派遣したことを踏まえ、今期の同委員会で検証を行い、被災地の都道府県医師会との連絡緊密化を図りつつ、「先遣JMAT」を早期に派遣できるように検討していくとした他、本年度、「基本編」「統括JMAT編」「地域医師会JMATコーディネーター編」の三つに分けて、JMATの研修を実施する予定であるとし、これらを通して全国のJMATの質を底上げし、裾野を広げていく意向を示した。
 また、会見に同席した江澤常任理事からは、避難所にいる介護を必要とする方の介護施設への入所や市内近辺施設へのマッチング作業と、急性期病院等から二次的な施設等への移動などが、併行して行われている岡山県の状況について説明があった。

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 なお、岡山倉敷地域へのJMAT派遣については、県外からの派遣(支援JMAT)は7月24日をもって撤収することを決定した。今後は、岡山県医師会による「被災地JMAT」が引き続き派遣されることになっている。

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