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平成30年(2018年)10月5日(金) / 日医ニュース

災害医療対策の一層の充実や控除対象外消費税問題の解消等に努める考えを示す

災害医療対策の一層の充実や控除対象外消費税問題の解消等に努める考えを示す

災害医療対策の一層の充実や控除対象外消費税問題の解消等に努める考えを示す

 平成30年度第1回都道府県医師会長協議会が9月18日、日医会館小講堂で開催された。
 当日は、「医師の働き方改革」「JMAT」「消費税問題」など、9都道県医師会から出された多岐にわたる質問並びに要望に対して、担当役員から回答した他、日医から「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言」「准看護師試験事務の委託」「次世代医療基盤法に対する日医の取り組み」について報告を行い、理解と協力を求めた。

会長あいさつ

 協議会は小玉弘之常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、7月の西日本豪雨を始め、台風21号及び北海道胆振東部地震で被害に遭われた方々へのお見舞いと被災地支援の尽力に対して感謝の意を示した上で、「わが国はその地理上、遺憾ながら今後も多くの自然災害に見舞われる危機を有している」と指摘。その備えに当たっては、平時からの災害医療の教育・研修体制の整備やかかりつけ医機能を中心とした地域連携の強化が不可欠であり、日医としても10月に開催される「防災推進国民大会2018」でのセッションの提供や日医かかりつけ医機能研修制度等を通じて、災害医療対策の一層の充実に努めていくとした。
 控除対象外消費税の問題については、三師会・四病院団体協議会で「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言」を取りまとめたことを改めて報告。「今後は、この新たな仕組みが平成31年度税制改正に反映されるよう、医療界が一丸となり要望活動を展開していきたい」と述べた。
 また、この問題に関連し、診療報酬による補てん状況の集計ミスについて、厚生労働省保険局長に対し、厳重な抗議と速やかな対策等の申し入れを行ったことに言及。経過を見守りながら、厚労省に対して再発防止ときめ細やかな対応を求めていくとした。
 医師の働き方改革に関しては、議論が本格化するに当たり、長時間労働の是正を進めることを前提に、現行法令の枠内における「特例の在り方」だけでなく、必要であれば、必ずしもその枠組みにはこだわらないことが必要であるとし、今後も医師という特殊な職種の働き方を訴えつつ、勤務医の労働法制の構築も視野に入れながら、医師の働き方に合った、より良い制度を目指していく考えを表明。都道府県・郡市区等医師会に対しては、予防と健康づくりに向けた活動等を通じて、医師の働き方改革の議論を後押しして欲しいと要請した。
 その他、横倉会長は、「日医が考える国民視点に立った医療を実現するためには、医療政策をリードし続ける強い『組織づくり』が不可欠である」と強調。11月25日には、前期の医師会将来ビジョン委員会からの報告書での指摘を踏まえ、初の試みとして、全国の医師会長等を招いて、「全国医師会・医師連盟医療政策研究大会」を開催することを紹介し、協力を求めた。

協議

(1)「医師の働き方改革」と共に進めるべきこと

 「医師の健康と地域医療の両立」を図る上で求められる体制に関する山口県医師会からの質問に対して、松本吉郎常任理事はまず、今期も会内の「医師の働き方検討委員会」において議論が開始されたことを報告。勤務医間インターバル制度を始め、有効かつ実現可能な健康確保策を国へ提言していく考えを示した。
 また、救急患者への対応も重要課題であるとして、在宅・介護施設等からの急変患者受け入れ体制の整備について、引き続き国に予算要望していくとした他、かかりつけ医機能や外来機能の分化に関して、国民の理解を得られるよう努めていくとした。
 更に、診療報酬上の対策については、平成30年度改定の基本方針の一つとして「働き方改革の推進」が加えられたことに言及した上で、「働き方改革の推進のためには、今後も改定の度に継続的に対応していくべきと考えており、その具体的な対策については、厚労省と相談していく」と回答した。
 その上で、同常任理事は、日医として、あらゆる観点から検討を行い、医師にとって最良の働き方改革になるよう引き続き努力していくとの決意を示し、そのための理解と協力を求めた。

(2)JMAT(日本医師会災害医療チーム)と日本医師会プラットフォームの設置について

(3)JMATの組織化について

 岡山県医師会と愛知県医師会からのJMAT活動に関する質問には、石川広己常任理事が一括答弁した。
 同常任理事は、まず、愛知県医師会からのJMAT体制についての質問に対し、「日本医師会防災業務計画」及び「JMAT要綱」の改正内容を説明。新たに要綱に明記された「統括JMAT」に関しては、そのチームを派遣する場合には、都道府県医師会へ速やかに周知徹底するとした他、基本的には派遣経験が豊富な都道府県医師会に派遣を要請することになると回答した。
 岡山県医師会からの先遣JMATの早期派遣体制の構築を求める要望については、「JMAT要綱」の改正で「被災地の都道府県医師会からの要請を原則とするが、状況把握が困難な場合は日医の判断により統括JMATを派遣する」ことが明記されたことを説明。
 今回の北海道胆振東部地震では、北海道医師会と密な連絡が取れたことから、被災地外からの統括JMATの派遣は見送り、長瀬清北海道医会長をリーダーとする先遣JMATを初めて派遣したことを報告した。
 更に、統括JMATの構成メンバーについては、JMAT研修のうち、「統括JMAT編」を修了していることが望ましいとして、本年度から始まった日医のJMAT研修の予定を説明するとともに、提案のあった郡市区等医師会向けの研修について、「地域医師会JMATコーディネーター編」のプログラムを作成していることを報告。引き続き、「救急医療対策委員会」で各研修プログラムの改善について検討していくとした。
 また、日本医師会プラットフォームの設置に関する提案については、恒常的に寄付金を募り、資金面でもスピーディーな医療支援・復興支援ができる体制をつくることは急務であるとの認識を示した上で、従来から申請していた「税額控除対象法人」が認定され、税制上の優遇措置が適用されることになったことを紹介。「今後は災害時のみならず、常時、日医のホームページ等を通じて寄付金募集を進めていく」と述べた。

(4)地域医療構想の議論の活性化のための方策(地域医療構想調整会議に設置する専門部会の開催経費に対する地域医療介護総合確保基金の活用と病床機能報告に係るデータ活用)について

 地域医療構想の議論の活性化のための方策に関する鹿児島県医師会からの質問には、釜萢敏常任理事が回答。地域医療構想調整会議に係る経費については、地域医療介護総合確保基金で対応できるよう、引き続き国に強く求めていくとした。
 国が一括して主な診療実績データの「見える化」を行うことについては、厚労省に対し、各構想区域の事務局・関係者の負担軽減に向けた施策を要請するとともに、国のデータの出し方、示し方が、調整会議の協議内容を全国で画一的なものに導くことのないよう、引き続き注視していく考えを示した。
 その上で、鹿児島県医師会の「地域医療構想議長連絡会」については、医師会が事務局機能を担い、行政が全面的に支援するという日医の主張に合致したものだと指摘。各都道府県医師会に対して、「好事例や課題について、日医に知らせて欲しい」と呼び掛けた。

(5)地域住民の健康や衛生を支える保健所勤務医師の現状と課題

 地域住民の健康や衛生を支える保健所勤務医師の現状と課題についての茨城県医師会からの質問には、羽鳥裕常任理事が、公衆衛生関係の医師の需要は認識されているものの、その具体的な確保策が示されていないことを問題視していると説明。
 その解決策として、国が平成16年から開始している公衆衛生医師確保推進登録事業の各自治体への更なる周知が必要と指摘した他、日医と関係学会、保健所長会などとも連携して、「一般社団法人社会医学系専門医協会」が昨年度から開始している専門医養成に関しても周知を図っていく考えを示した。
 更に、5月の全国保健所長会の理事会で、公衆衛生医師の紹介も行っている日医女性医師バンクの更なる活用を呼び掛けたところ、既にいくつかの自治体で就業成立に至ったことを報告。各都道府県医師会に対しては、公衆衛生医師の確保のため、こうした事業の周知・活用に対する協力を求めた。

(6)特定健診のより一層の充実と実施上の混乱回避に向けて

 特定健診のより一層の充実と実施上の混乱回避に向けて、①血清クレアチニン検査とeGFR②消費税③全国組織の保険者におけるルールの徹底―を求める滋賀県医師会の質問には、城守国斗常任理事が回答した。
 ①には、日医が、制度開始当初から全受診者に実施する重要性を主張してきた結果、詳細な健診項目ではあるが制度の中に位置づけられたとして、その意義を強調。引き続き有用性に関するエビデンスを積み上げ、基本項目として位置づけられるよう、検討の場で主張していくとした。
 ②に関しては、「地域医師会において平成31年度の契約に支障を来さないよう、10月から再開予定の厚労省『実務担当者による特定健診・特定保健指導に関するワーキンググループ』で議論を進めていきたい」と述べた。
 ③では、今後も、全国組織の保険者による市町村国保への保険者間の委託を進め、地域住民の健診は市町村国保と医師会による契約に一本化するとともに、検討会で決められたルールの徹底を、厚労省や保険者に強く申し入れていくとした。

(7)児童虐待を中心とした母子保健・乳幼児保健、学校保健対策について

 児童虐待について、日医の対応を求める東京都医師会からの要望には、平川俊夫常任理事が回答した。
 まず、児童虐待については日医としても問題視していると強調した上で、①妊産婦のメンタルサポート②未受診妊婦、若年妊娠に対する対策と支援③妊娠前からの健康教育、虐待防止、自殺防止の対策と支援④教職員等の研修事業―に関する日医の考えを説明。
 ①では、妊産婦の自殺等は、産後うつが原因の一つと考えられることから、「産婦人科医、小児科医、精神科医が連携し、妊産婦を地域で支える必要がある」との認識を示した。
 ②及び③では、厚労省の調査でゼロ歳児に死亡事故が集中しているため、出産前からの予防など、より早期の介入が有効であるとした。
 ④では、普段の学校生活の中で児童生徒の心身の変調等を見逃さないような体制づくりの必要性を強調した。
 その上で、「今後は、母子保健医療体制の充実等、社会環境の整備や多職種連携が必要となる」と述べるとともに、引き続き成育医療等基本法の早期成立に向けて強く働き掛けていく考えを示した。

(8)大学病院医療情報ネットワーク研究センター「オンライン学術集会演題抄録登録システム」の継続について

 大学病院医療情報ネットワーク研究センターの「オンライン学術集会演題抄録登録システム」について、同センターによる継続運用または日医が引き継いだ形での運用を求める北海道医師会からの要望には、羽鳥常任理事が回答した。
 同常任理事はまず、これまで同センターが無償でサービスを提供してきた同システムが、財政上の理由で終了することになった経緯及び、日医並びに日本医学会の働き掛けにより有料化を条件に1年に限って提供が継続されたことを説明。
 その上で、日医が同システムを引き継ぐ場合、大きなコストが掛かることに加え、これまでに利用したことのある医師会等はごく一部であり、今後の利用者数も不透明であるなど、将来性にも疑問があるとした。
 今後の対応については、「日医としても、同センターに対して平成32年度以降も継続運用されるよう強く働き掛けていきたいと考えている」と述べる一方、引き継いで運用するという点に関しては、「費用の問題と将来性という二つの側面を踏まえ、慎重に検討していきたい」との姿勢を示した。

(9)消費税問題への対応及び経過について

 医療機関の消費税問題に関して、補てん率把握の誤りがあった問題や抜本的解決に向けた対応について、現在の状況や取り組みを問う長崎県医師会からの質問には、小玉常任理事が回答した。
 同常任理事は、これまで消費税問題の抜本的解決に向けて、日医として医療界の意見を一つに取りまとめることを最優先に尽力してきた結果、「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言」として公開することができたと説明。提言には、「現行の診療報酬への補てんの仕組みを維持した上で、個別の医療機関等に生じる補てんの過不足に対応する税制上の仕組みの創設」等の内容が含まれていることを紹介した。
 また、診療報酬による補てん状況の集計ミスの問題については、8月30日に厚労省に抗議文書を提出しており、今後も対応を注視していくとした。
 その上で、年末の税制改正大綱決定までの流れを説明するとともに、「本問題の解決へ向けて、日医として引き続き全力を尽くしていく」と述べ、各都道府県医師会にも協力を求めた。

(10)「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組み」についての提言について

 中川俊男副会長は、「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言」について、医療界が一丸となってまとめたものであるとした上で、「各医療機関自身で過不足分を把握し、申告することが今回の提言のポイントである」と述べ、その概要を説明した。
 また、新たな仕組みを実現するための課題として、①消費税補てん額の把握②薬価・特定保険医療材料価格への対応③小規模医療機関への対応―があると指摘。「控除対象外消費税問題解消は待ったなしであり、具体的な制度設計は各界の叡智(えいち)も頂きながら、医療界が一致団結して新たな仕組みの実現に向けて邁進(まいしん)していきたい」として、理解と協力を求めた。

(11)准看護師試験事務の委託について

 釜萢常任理事は、保健師助産師看護師法が改正されたことにより、都道府県知事が指定した試験機関に准看護師試験事務の全部または一部を委託することが可能になったことを踏まえ、病院団体と共にその受け皿となる「一般財団法人准看護師推進センター(仮称)」を設立し、受託に向けた準備を進めていることを報告した。
 同常任理事は、①新たに設立する法人では最低2パターンの試験問題を作成し、それに応じて複数の試験日を設定する②試験日は看護師国家試験とは別の日とする③試験問題の質の確保を図り、作問に関わる会議等は十分にセキュリティが確保された空間で開催する④試験問題の印刷や輸送についても、国家試験等で実績が十分にある事業者に委託する―ことなどを説明。
 今後については、「各都道府県は試験問題を作成するために六つのグループに分かれていることから、その幹事県にしっかり今回の趣旨を説明し、理解を求めていきたい」とした。

(12)「次世代医療基盤法」に対する日医の取り組みについて

 石川常任理事は、厚労省を中心にデータヘルス改革が進められる中で、5月11日に施行された「次世代医療基盤法」の概要を説明。
 その上で、日医が一般財団法人を設立し、同法に規定されている匿名加工医療情報作業事業を行う認定事業者として認定を受けるべく申請を行う予定であることを明らかにし、「法人の詳細等については決定次第、改めて報告したい」と述べた。
 なお、当日は議事に先立って、「第30回日本医学会総会2019中部」の齋藤英彦会頭(名古屋大学名誉教授)から、来年4月に開催予定である総会の概要の説明と参加の呼び掛けが行われた他、長瀬北海道医会長からは、9月6日に発生した北海道胆振東部地震の被災地支援に対する感謝の意が示された。

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