釜萢敏常任理事は11月7日の定例記者会見で、乾燥BCGワクチンの添付溶剤に微量のヒ素の混入が確認されたことを受け、日医の見解を述べた。
本問題は、乾燥BCGワクチンを溶解するための生理食塩液中に、日本薬局方における規格値(0.1ppm)を超える濃度(最大0.26ppm)のヒ素を含む製品が見つかったというもので、11月5日に開催された厚生労働省の医薬品等安全対策部会安全対策調査会で報告された。ヒ素の混入は、生理食塩液をガラスの容器に充填する際の加熱によって、容器から溶け出したことが原因とみられるが、これまで検査が容器充填前の生理食塩液に対してなされていたため、10年前からこの製法で作られていたワクチンは同様の状況であったと推察されている。
同常任理事は、「幸いにも人体に影響のないレベルであったとしているが、規格を満たさない製品が全国に流通し、定期予防接種に使われていたという事実自体、あってはならないことである」とするとともに、報告に至るまでの過程にも問題があると指摘。
厚労省が製造販社である日本ビーシージー製造株式会社より8月9日に連絡を受け、出荷を停止していたにもかかわらず、3カ月近くも報告がなかったことから、「このような情報は、当該部局と関係部局とで共有し、日医を始め、現場の医療機関に対しても速やかに報告されるべきもの。これまで予防接種行政について日医としても全面的協力してきたが、今回の対応には大変憤りを覚えている」として、厚労省に対し、近日中に文書で抗議することを明らかにした。
今後については、最終製品中のヒ素の濃度を確認することが必須であるとし、同社が11月中旬にも新たな容器を用いた製品を提供する予定となっていることから、速やかに従来の製品と交換することを求めた。更に、「全国の医療機関からも問い合わせがきているが、厚労省が間もなく発出する文書を踏まえて対応していく。現場の混乱や接種を受ける方々の不安につながらないよう、全力を尽くしたい」と述べた。
また、釜萢常任理事は、関東地方を中心に、風しんの感染が拡大している状況を踏まえ、「日医では、風しんワクチンの接種を呼び掛けるポスターを作成し、9月19日の定例記者会見で紹介したが、その後も感染拡大が続いている」として、改めて注意喚起を行った。
同常任理事は、風しんのワクチンは主に麻しんとの混合ワクチン(MRワクチン)で接種され、定期接種に約20万本が確保されているとした上で、医療機関から任意接種MRワクチンの入手が困難だとの声が届いていることにも言及。任意接種分の約5万本を有効に用いるため、流行が確認されている5都県(東京、千葉、神奈川、埼玉、愛知)への優先的な出荷や、抗体価が低い妊婦等への優先接種が行われていることを説明した。
現在、同ワクチンは使用量の2カ月分が流通備蓄として確保されているが、不測の事態で供給できない場合や需要が増大した場合に備え、備蓄量を更に拡大する必要があり、接種の機会のなかった成人男性への接種を進めるためにも、ワクチンの増産が必須と強調。また、使用期間切れで廃棄される場合には、国がメーカーに対して補償をする仕組みの検討が必要であるとし、今後も強く厚労省に要請していくとした。
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