

中医協総会が2月13日に開催され、令和8年度診療報酬改定に関する答申が取りまとめられたことを受けて、松本吉郎会長は高橋英登日本歯科医師会長、岩月進日本薬剤師会長と共に記者会見を行い、今回の改定に関する見解を説明した。
松本会長は令和8年度診療報酬改定の改定率決定までの議論に関して、(1)「骨太の方針2025」を踏まえ、インフレ下における賃金・物価上昇への対応を「別枠」で確保する、(2)適正化等の名目により医療費のどこかを削って財源を捻出するのではなく、純粋に財源を上乗せする、いわゆる「真水」による思い切った対策を行う、(3)令和7年度補正予算の土台を「発射台」とする―ことを各方面に求めるとともに。昨年度には「国民医療推進協議会・総会」を複数回開催した他、昨年11月には「国民医療を守るための総決起大会」を開催。医科・歯科医療機関及び薬局等が置かれている難局を乗り越えるべく、43団体が一丸となって対応してきたことなど説明。
その結果、公定価格で運営されている医療・介護分野は、賃金・物価上昇分を価格に転嫁することができないため、経営状況が著しく逼迫しているという窮状に理解が得られ、「令和8年度診療報酬改定は、『別枠』『真水』『発射台』の三つの主張に対応した、インフレ下での今後の『道しるべ』となる極めて重要な改定となった」として、高市早苗内閣総理大臣を始めとする国会議員の先生方、行政関係の皆様、その他、医療界にとって力強い後押しとなった各方面の方々に改めて感謝の意を示すとともに、「国民の生命(いのち)と健康を守るという、我々医療者の使命に対する大きな期待であり、日本医師会は総力を挙げて取り組んでいく」とした。
今回改定の大きなポイントについては、社会保障審議会 医療保険部会・医療部会でとりまとめられた、「令和8年度診療報酬改定の基本方針」の重点課題として位置付けられた「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」があると指摘。
賃上げについては、病院における入院ベースアップ評価料の届出が9割を超えるということで、令和6・7年度分は入院料に溶け込ませ、令和8・9年度分の評価が新たに設定されることとなった一方で、外来・在宅ベースアップ評価料については、医科診療所では4割の届出に留まっていることから、初・再診料に溶け込ませることができなかったことに言及。「今後、さらに外来・在宅ベースアップ評価料の届け出が増え、各医療機関等の従事者の賃上げにしっかりと反映され、人材流出に一定の歯止めが掛かるよう、日本医師会としても、各医療機関への周知徹底、届出の呼び掛けに努めていくとした。
物件費対応については、「これまでの消費税対応を参考に、令和8年度以降の物価上昇への対応を、施設類型ごとの費用関係データ等に基づき配分するとともに、令和6年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応も行われ、各医療機関に、できるだけ公平に配分されるよう検討されたものであると理解している」とした上で、十分とは言い切れないが、一定の評価になったものとの認識を示した。
ICT、AI、IOT等の活用について、業務効率化やカンファレンスなど、連携強化などが図られるような対応が行われることになったことに関しては、以前より新たなシステム導入においては、導入費用のみならず、ランニングコストや機器の入れ替え費用について、医療機関等の負担となっていたことから、今回、少しでも前進できたのではとの認識を示した。
入院については、「新たな地域医療構想」に先行して対応する部分もあるように思われるとした上で、これまでの看護師配置だけでの評価区分に加え、1.他の医療職種が協働して病棟業務を行う新たな体制の評価2.救急搬送件数や全身麻酔手術件数に視点を置いた病院機能に着目した施設基準の設定3.専従要件の緩和―など、今後の生産年齢人口の更なる減少に備えた、新たな評価体系を取り入れた点について、今後、しっかりと検証していく必要があるとした。
その上で松本会長は、今回改定がインフレ下での「道しるべ」となる大変重要な診療報酬改定になったとするとともに、インフレ下において、賃金上昇・物価高騰を価格に転嫁できない公定価格で運営されている医療機関等に対し、今回の対応が医療現場でどのように反映されるのか、今後、中医協等でしっかりと検証・分析していく必要があるとし、「我々、医療団体としても、しっかりと足元の状況をとらえ、議論の場に届けていく責務があると考えている」と強調。同時に、今回の改定に関わった関係者に改めて謝意を示し、国民の生命・健康を守る安心・安全の医療提供体制が引き続き実現されるよう、日本の医療を支える三師会として、相互に連携し、しっかり団結していく決意を示した。
高橋英登日本歯科医師会長は、長らく続いていたデフレがインフレに転じ、物価・賃金が上昇する中で迎えた令和8年度診療報酬改定について、医療界の訴えに応える形で3.09%という高い改定率が実現したことについて謝意を示した上で、医療側としても医療の効率化などを進め、医療費の伸びを抑制する努力が必要になると強調した。
一方、日本の歯科の特性として、金や銀といった投機性のある金属を用いた治療が保険適用されていることに言及。「昨今、金属価格が右肩上がりの上昇を続ける中では、改定が追い付かず、治療が逆ざやとなっている」と訴え、医療側の努力だけでは解消できない問題であることに理解を求めた。
その上で、医療の安定は政権の安定に寄与するとの認識を示し、医療の崩壊が起きないよう、国に対して特段の配慮を求めた。
岩月進日本薬剤師会長は、令和8年度診療報酬改定の結果について、医療界が一丸となり、病院や診療所、薬局等の窮状を訴えてきたことが実を結んだものとの認識を示した上で、今後、医薬品の適正使用、並びに医薬分業のあるべき姿の実現に向け、更なる取り組みが進んでいくことに期待感を示した。
その上で、調剤報酬については、賃金上昇・物価高騰に係る対応として、(1)調剤ベースアップ評価料、(2)調剤物価対応料―が導入されされたことに触れ、(1)については、関係者で協力し、薬局従事者の賃上げが確実に行われるよう対応していくとした。
また、「かかりつけ薬剤師」の更なる推進のため、既存の評価体系の見直し、残薬対策、ポリファーマシー対策等の強化及び薬剤師による在宅医療提供体制を整備・強化するための評価の充実が行われたことになったことにも言及。令和8年度診療報酬改定を受け、「患者のための薬局ビジョン」で示された未来像の実現に向け、かかりつけ医機能をより一層強化し、国民が質の高い薬剤師によるサービスを実感できるようにするとともに、地域の医薬品提供体制及び在宅医療提供体制の確保のための取り組みを積極的かつ早急に進めていく決意を示した。
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