平成30年(2018年)11月20日(火) / 日医ニュース
「子どもは国の宝。次代を担う子どもたちの健やかな成長を願って~学校医の果たす社会的意義~」をメインテーマに開催
平成30年度(第49回)全国学校保健・学校医大会
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平成30年度(第49回)全国学校保健・学校医大会(日医主催、鹿児島県医師会担当)が10月27日、「子どもは国の宝。次代を担う子どもたちの健やかな成長を願って~学校医の果たす社会的意義~」をメインテーマとして、鹿児島市内で開催され、日医からは、今村聡副会長、道永麻里常任理事が出席した。
午前には、「『からだ・こころ(1)』心臓、腎臓・尿糖、成長曲線、その他」「『からだ・こころ(2)』運動器、生活習慣病」「『からだ・こころ(3)』こころ、特別支援、発達障害、アレルギー、感染症、色覚、健康教育」「耳鼻咽喉科」「眼科」の五つの分科会が行われ、各会場では、研究発表並びに活発な討議がなされた。
続いて行われた都道府県医師会会議では、埼玉県医師会を次期担当とすることを決定。金井忠男埼玉県医師会長より、平成31年11月23日(土)にさいたま市内で大会を開催する旨の説明が行われた。
また、鹿児島県医師会からの日医に対する「学校医宣言」の制定に向けた提案が了承された他、文部科学省より学校保健の最新情勢についての報告が行われた。
学校保健活動に対する長年の貢献を顕彰
午後からは、まず、開会式と表彰式が行われた。
開会式のあいさつで横倉義武会長(今村副会長代読)は、「今後、人生100年時代を迎える中では、健康寿命の更なる延伸が重要であり、そのためにも予防・健康づくりに向けた取り組みが必要である」と述べるとともに、少子化対策や子育てを社会全体の問題として捉え、産みやすく、育てやすい社会をかかりつけ医が中心となってつくり上げていくことの重要性を強調した。
また、学校保健分野は、国民の健康の基礎づくりに当たる部分であり、その役割は欠くことができないとして、健康教育に関する関係者の緊密な連携等に対する更なる協力と支援を求めた。
表彰式では、長年にわたり学校保健活動に貢献し、当日出席した九州ブロックの学校医(6名)、養護教諭(7名)、学校関係栄養士(8名)に対して、今村副会長が表彰状と副賞を、池田琢哉鹿児島県医師会長が記念品を、それぞれ贈呈。受賞者を代表して今村正人氏から、今回の受賞に対する感謝と、子ども達のからだと心を守るために更なる研鑽(けんさん)を誓う旨の謝辞が述べられた。
シンポジウム「次代を担う子どもたちの健やかな成長・発達のために~考えよう学校医の果たす役割~」
引き続き、「次代を担う子どもたちの健やかな成長・発達のために~考えよう学校医の果たす役割~」をテーマとしたシンポジウムが行われた。
「ヘルスプロモーションの理念に立ちかえり、改めて学校医の役割を考える」と題して基調講演を行った池田鹿児島県医会長は、ヘルスプロモーションの定義に関する歴史的経緯を紹介。改善のためのアプローチの対象が個人から社会環境等に変化しているとした他、「自分の健康は自分で守る」という認識を得るための教育の必要性も強調した。
その上で、「これからの学校医は、従来の『学校健診』『健康相談』に加え、『健康教育』に更に力を注ぐことを求められる」と述べ、教育現場における学校医のより一層の関与を求めた。
4人のシンポジストによる発表では、まず、松﨑美枝文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課健康教育調査官が、主に「保健室利用状況に関する調査(平成28年度調査結果)」について、養護教諭は多様な心身の健康問題に対応していることなどを示すとともに、特にアレルギー疾患の対応に関しては全ての学校で取り組まなければならないとした。
また、「学校が地域と切れ目のない連携を進めていくためには、『誰』もしくは『どこ』と連携するのがよいか考えていく必要がある」との認識を示した。
田代達也姶良(あいら)地区医師会学校・母子保健統括副会長は、医療関係者が学校を訪問し、学校関係者、児童生徒、保護者が一体となり、種々の体験を通じ、健康について考え、学ぶことを目的として、姶良地区内で実施している「親子で体験健康教室」について解説。
①こころ②栄養③小児生活習慣病④手洗い・うがい⑤たばこ⑥歯科⑦超音波・放射線―について学習してもらう中で、一定の評価を得られているとする一方、長期間講義内容に大きな変化がないことや開催後のフォロー等が課題との認識を示した。
増田彰則医療法人増田クリニック院長は、アンケート結果や自身の診療経験を基に「子ども達の睡眠不足とメディア漬け対策」について解説した。
同院長は、「メディア等の依存症になってからでは治療が非常に困難であり、通院も続かないことが多い」として、予防の重要性を強調。ゲームやメディア依存の低年齢化や睡眠への影響等を説明した上で、大人や親の問題も大きいとした。同時に、この問題は家庭での取り組みだけでは限界があるとして、「学校・PTAや医療関係、更には業界や国が本格的に取り組む時期ではないか」と提言した。
橋口知鹿児島大学学術研究院法文教育学域教育学系教授は、「地域における切れ目のない支援体制をつくる特別支援教育」について説明。医療的ケアを受けている子どもの各種受け入れ体制や環境整備が不十分な現状を指摘した。
その中では、就学前から学齢期、社会参加までの流れの中で、各種ツールの活用や行政区分を越えた連携、「顔の見える関係」の構築等が必要だとした上で、①多様性のあることを認め合う②支援内容を徐々に自ら求め選ぶ③学校医が移行支援でもキーパーソンとなる―ことが重要になってくるとした。
シンポジウムの後、歴史家・作家の加来耕三氏による特別講演等が行われ、大会は終了となった。参加者は594名。