日医定例記者会見 4月3・10日
厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」報告書が取りまとめられたことを受け、今村聡副会長は日医の見解を述べた。
同副会長は、本検討会に日医から構成員として2名が参画し、平成30年7月に日医が中心となり医療界の総意として取りまとめた、「医師の働き方改革に関する意見書」を基に意見を述べてきたことを説明した上で、「本報告書は、これまで日医が主張してきた『医師の健康への配慮』と『地域医療の継続性』の両立という観点から、取りまとめられている」と総括。
新しく取り入れられた勤務間インターバル・連続勤務時間規制の一部義務化という健康管理の方法は、月々の労働時間管理だけに頼り、結果として休息が確保できなくなる事態を回避する手段として極めて有効であるとし、これまで日医が行ってきた勤務医の健康支援の取り組みの重要性が理解・評価されたとの認識を示した。
今後、医療機関には、36協定の締結や労働時間管理の確実な実行など、労働時間短縮計画策定とPDCAサイクルによるマネジメントシステムの構築が求められるとし、「こうした事項は地域医療提供体制を維持していくため、医療機関が行うべき責務である。このことを医療界はしっかりと肝に銘じる必要がある」と強調した。
報告書では、2024年度から適用される時間外労働の上限について、原則を年960時間(A水準)とし、地域医療確保の暫定特例水準(B水準)や集中的技能向上水準(C水準)では、特例として年1860時間を認めるとしているが、B水準の医療機関には適用後も労働時間の短縮を求め、2035年度末の終了を目指して検討することが盛り込まれている。
これに対し今村副会長は、「1860時間は高い上限だが、上限時間の罰則の関係で医療提供が過度に制限されたり、罰則適用で地域医療が崩壊することのないような制度設計になっている。いずれの上限時間も全ての医師に適用されるものではなく、対象となる医療機関や医師について一定の要件を満たす必要がある」と説明。健康確保措置として、「月の上限を超える場合の面接指導と就業上の措置」と「連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル9時間の確保・代償休息」のセットが、Aでは努力義務、B、Cでは義務化されることに伴い、厚労省の医政局と労働基準局が連携し、医事法制と労働法制の両面からチェックする仕組みが整えられたことは画期的であるとし、実効性の担保に期待を寄せた。
今後の検討課題としては、(1)C水準に関する審査組織の設計、(2)連続勤務時間制限、勤務間インターバル、面接指導等の医事法制・医療政策における法制上の措置、(3)兼業を行う医師の労働時間管理・追加的健康確保措置の在り方、(4)都道府県での医療機関の評価・支援機能を担う仕組み――などを挙げた他、AIやICTの導入が医師の長時間労働の改善につながるとして、安全性を担保しながら、基本となるルールを医師主導でつくり上げていくことが重要であるとした。
同副会長は、「将来の地域医療提供体制は、偏在対策を含む医師確保計画、地域医療構想、医師の働き方改革が三位一体となって形づくられていくものである。不確実な要素が多く、相互が複雑に関わっているため、問題が起こらないよう検証しながら進めていく必要がある」と強調。医師の働き方改革を進めていくためには、上手な医療のかかり方について国民の理解も不可欠であるとの考えを示すとともに、「多くの医療機関が少しでも早く960時間の上限を達成できるよう、厚労省に対し必要な財源や税制など、全面的な支援を要望していく」と述べた。