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令和元年(2019年)5月5日(日) / 日医ニュース

令和を寿(ことほ)ぐ

 新しい元号「令和」が、新天皇が即位された5月1日から使われています。この元号は248番目になりますが、これまでは全て中国の古典を典拠に決められていました。
 「令和」は初めて日本の古文、しかも、貴族から民衆まで合わせて4500首の歌を編纂(へんさん)した万葉集から採用されたのは画期的と思います。
 梅花の歌32首の序文、「初春の令月(れいげつ)にして、氣淑(きよ)く風和ぎ梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす」(初春のよい月に空気は清く風はやわらかで、梅は佳人の鏡の前の白粉のように白く輝き、蘭は貴人が身に付ける香り袋の香のように匂っている)から生まれた元号で、32名の貴人がうららかな春の日に集い、銘々が歌を詠んでいる情景を表しており、和やかで、これからますますよい季節を迎える雰囲気を伝えています。
 振り返れば、平成は、バブルの崩壊による不況から始まり、オウム真理教によるテロ事件、阪神・淡路大震災、東日本大震災、地球温暖化による洪水や土砂崩れなどの大規模な災害、経済格差の拡大、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発達とは裏腹な地域コミュニティの崩壊等々、少子高齢化と合わせ、先行き不透明な時代だったと思います。
 昭和の戦後生まれの私から見ますと、昭和には高度経済成長、一億総中流化(平等化)、地域コミュニティの存在など良い面があったと思います。
 「令和」は昭和を連想させます。中村草田男を借りて、「春来たり昭和は近くなりにけり」と「令和」を寿ぎたいと存じます。

(かまくら)

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