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令和元年(2019年)5月5日(日) / 日医ニュース

産業医の組織化や医師の働き方改革について意見交換

産業医の組織化や医師の働き方改革について意見交換

産業医の組織化や医師の働き方改革について意見交換

 都道府県医師会産業保健担当理事連絡協議会が4月4日、日医会館小講堂で開催された。
 松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長は、生涯保健の一環である産業保健活動の推進は労働生産性の向上につながり、企業経営に貢献するだけでなく、わが国の国益にも合致すると強調。
 また、10万人を超える産業医を輩出してきた日医認定産業医制度については、「産業医の地位向上、仕事の内容や責任に見合った報酬、身分保障など、産業医を守り、活躍の場を広げることにつながるシステムの構築が重要だと考えている。日医として、産業医活動を魅力あるものにしていきたい」とした。

議事1「産業医の組織化について」

 神ノ田昌博厚生労働省労働基準局労働衛生課長は、「最近の産業保健行政の動きを踏まえて」と題して講演した。
 同課長は、「今後の産業医に期待したいこと(私見)」として、(1)一億総活躍社会の実現に向けたリーダーシップの発揮、(2)産業保健活動に対する事業者のマインドセットの変容、(3)事業者からの信頼の獲得、(4)産業保健チーム、外部機関などの活用による、産業保健活動の活性化――を挙げ、(1)では、年平均労働時間と長時間労働者の各国比較のデータを示した上で、「長時間労働が当たり前という働き方を改めなければ、高齢者や女性、障害者、難病患者等の職場での活躍は困難である」と指摘した。
 (2)では、産業保健活動について、近年の健康経営の発想においては、経営上の「コスト」ではなく、戦略的な「投資」であるという考え方が広がってきたと説明。
 (3)では、事業者等との意見交換の実施のみならず、産業医からの提言も必要になってくるとの見方を示した。
 また、専門外の内容の相談でも門前払いせず、まずは話を聞き、専門家につなげることが重要であるとした。
 (4)では、産業医が1プレイヤーとして行えることには限界があり、チームとして産業保健活動を行う中でコンダクター(指揮者)としてリーダーシップを発揮することが重要と強調する一方、外部機関を活用する場合にはその質の見極めに注意が必要とした。
 次に、松本常任理事が、「産業医の組織化に伴う方策と取組スケジュールを踏まえて」と題して講演し、働き方改革関連法が成立したことにより、産業医・産業保健機能の強化や治療と仕事の両立支援等が推進されることになり、今まで以上に産業医に求められる職責が高まる一方で、さまざまな課題も出てきていると説明。
 そのような状況の中、産業医が安心して産業医活動に専念できる環境・体制づくりに向け、各都道府県医師会に設置されている産業医(部)会と連携を図りつつ、日医主導で産業医の全国ネットワークづくりを進めていることなどを紹介。その取り組みのイメージ及び事業内容・スケジュール案を示した他、あくまで参考とした上で、作成の要望が寄せられていた産業医の契約書の例を提示し、同契約書の解説文書と共に、その活用を求めた。

議事2「医師の働き方改革について」

 松本常任理事が、医師の働き方改革に関し、(1)働き方改革関連法、(2)厚労省「医師の働き方改革に関する検討会」の経緯と取りまとめ、(3)これから取り組まなければならないこと――について解説。
 (1)では、働き方改革関連法における注意点等を詳説した他、(2)では、「医療側として厳しい交渉があった」との所感を述べた上で、宿日直や研鑽、応招義務、時間外労働規制等の取り扱いについて、検討会における議論及び結論を説明した。
 また、時間外労働規制については、「地域医療確保暫定特例水準、集中技能向上水準の年1860時間は、あくまで暫定の時間である」として、暫定特例水準の適用終了までに、該当する医療機関の努力が求められるとの見方を示した。
 (3)では、勤務間インターバルの取り組みの推進や健康管理について日医が作成した資料等を示した上で、「『地域医療の継続性』と『医師の健康への配慮』の両方にバランスの取れた取り組みが重要である」と強調した。

協議・その他

 協議では、当日の参加者並びに事前に寄せられた各都道府県医師会からの意見・質問に松本常任理事らが回答。
 最後に、総括を行った今村聡副会長は、「産業医の組織化は今後大きなテーマとなる」として、都道府県医師会に協力を求めた他、「働き方改革と医師需給については繰り返しの説明が必要となることから、今後、日医として合同で説明する場を設ける」とした。出席者はテレビ会議での出席者を含め130名。

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