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令和元年(2019年)5月20日(月) / 日医ニュース

消費税率10%への引き上げに伴う控除対象外消費税の対応等を詳説

消費税率10%への引き上げに伴う控除対象外消費税の対応等を詳説

消費税率10%への引き上げに伴う控除対象外消費税の対応等を詳説

 平成31年度都道府県医師会税制担当理事連絡協議会が4月11日、日医会館小講堂で開催された。
 小玉弘之常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長は、新たな税制措置や予算措置について、「全国の医療機関にとって身近なものであり、活用頂くことによって患者が新たな医療の恩恵を受けやすくなる」と強調。医業経営を取り巻く諸税制についてはさまざまな課題があるとして、毎年8月末に取りまとめる「医療に関する税制要望」に基づき、今後も実現に向けた活動を行っていくとした。
 協議では、まず、本年10月からの消費税率10%への引き上げとともに実施が予定されている「消費税軽減税率制度」について、医療機関への影響を田原芳幸財務省主税局税制第二課長が解説。
 8%の軽減税率の例として、売上では、病院の売店や自動販売機による飲食料品の販売、仕入では、病院食の食材、待合室用の新聞購読料、売店や自動販売機等で販売するための飲食料品の仕入れなどを挙げた。
 また、軽減税率対象の売上がない医療機関においても、仕入税額控除に当たっては、軽減税率対象の仕入れについて「区分経理」を行うなどの対応が必要になると説明した。

(1)控除対象外消費税への対応

 「控除対象外消費税問題に係る経緯」については、中川俊男副会長が、昨年8月、日本歯科医師会、日本薬剤師会、四病院団体協議会と控除対象外消費税問題解消に向けた新たな仕組みを提言するなど、各方面への働き掛けを行ってきたことを報告。「控除対象外消費税相当額については、消費税率が5%から8%へ引き上げられた時と同様の方法により全額補てんされ、基本診療料へのきめ細かな配分が精緻(せいち)に行われることとなるが、今後は診療報酬への消費税対応による上乗せ分について頻回に検証を行い、必要に応じた是正を求めるとともに、設備投資の支援措置としての特別償却制度についても、その効果が十分であるか注視していく」と述べた。
 「診療報酬への精緻な補てんと検証」については、森光敬子厚生労働省保険局医療課長が説明。
 平成26年度の消費税率5%から8%への引き上げに伴う診療報酬での補てん率について、集計ミスがあったことを陳謝するとともに、10%への引き上げに当たっては補てん方法の見直しに向け議論を重ね、医療機関等の収入に占める補てん項目のシェアを病院種別や入院料別に考慮し、上乗せ率を算出したことを概説した。
 「設備投資への支援措置」については、北波孝厚労省医政局総務課長が、平成31年度税制改正大綱において、①医師の勤務時間短縮のために必要な器具及び備品、ソフトウェア②地域医療提供体制の確保のため地域医療構想で合意された病床の再編等の建物及びその附属設備③共同利用の推進など効率的な配置の促進に向けた高額医療機器―の3点について、特別償却制度の拡充・見直しが行われたことを解説。「2年間の時限的な措置であるが、延長も視野に入れて取り組んでいく」として、活用を求めた。
 また、「平成31年度予算編成による対応」として、地域医療介護総合確保基金(医療分)の100億円の増額と、オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための医療情報化支援基金(300億円)の創設について説明した。

(2)事業承継税制

 「個人版事業承継税制」については、小玉常任理事が、改正の概要について、「多様な事業用資産が対象」「相続税だけでなく贈与税も対象」「納税額の全額が納税猶予」「10年間の時限措置」である点などを紹介。①平成31年度から5年以内に承継計画を提出②承継計画に記載された後継者が経営承継円滑化法に基づく認定を受ける―ことが必要であるとし、「あくまで納税を猶予する特例で単純な減免措置とは異なる。医療法人成りの際には個人事業の廃止となる」と注意を促した。
 「医療法人の事業承継税制」については、今村聡副会長が、現行の認定医療法人制度(平成29年10月~令和2年9月まで適用)を取り上げ、役員数、役員の親族要件、医療計画への記載等の要件が緩和され、贈与税の非課税対象が大幅に拡大したことを解説した。
 「持分なし」に移行して承継する場合は、①出資者間の合意の形成②放棄するか基金にするかの検討③認定医療法人制度を活用するかどうかの検討―が必要であるとし、「持分あり」のままの承継のあり方を今後の課題に挙げた。
 更に、中川副会長が「今後の更なる消費税率引き上げに向けて」として、消費税収と社会保障費について概説し、「社会保険診療が非課税であるが故に控除対象外消費税問題が継続しているが、課税転換は医療が"消費"であるとする考えに立つものであり、国民はもとより医療界としても受け入れがたいところがある」と指摘。課税転換すると医療費自体は2兆6000億円増えるが、保険料や患者負担の増加に理解を得るなど、実現には多くの課題があるとの見方を示した。
 その上で、同副会長は、①社会保険診療に消費税を課すことへの抵抗②国民の負担増③診療報酬に上乗せした補てん分の「引きはがし」④所得税の概算経費率、いわゆる四段階制への影響⑤消費税 免税事業者、簡易課税事業者への影響⑥事業税非課税への影響―の課題を考慮しつつ、今後もあらゆる可能性を排除せずに議論していくとした。
 質疑応答では、各都道府県医師会より、医療の課税に関する日医の見解や、電子カルテの標準化、オンライン資格確認の導入などの進捗状況などを巡り質問が出され、担当役員や厚労省が回答した。
 最後に中川副会長が、「消費税率10%への引き上げに対しては完璧な対応ではないが、医業経営及び医療提供体制に支障がないよう、しっかり取り組んでいく」と総括し、閉会した。

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