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令和元年(2019年)6月20日(木) / 日医ニュース

横倉会長 新たな時代の医療のあり方を国民と共につくり上げていく

横倉会長 新たな時代の医療のあり方を国民と共につくり上げていく

横倉会長 新たな時代の医療のあり方を国民と共につくり上げていく

 令和元年度第1回都道府県医師会長協議会が5月21日、日医会館大講堂で開催された。
 当日は、医療を取り巻くさまざまな問題に関する日医の見解などを問う都県医師会から提出された9つの質問・要望について担当役員から回答した他、日医から第8回「日本医師会 赤ひげ大賞」の候補者推薦等について協力依頼を行った。

 協議会は小玉弘之常任理事の司会で開会。
 冒頭あいさつに立った横倉義武会長は、まず、「第30回日本医学会総会2019中部」が盛会裏に終了したことへ感謝の意を示した。
 次いで、「地域医療構想の実現」「医師の働き方改革」「医師偏在対策」を進めていくためにも、「地域医療対策協議会」「地域医療構想調整会議」の果たす役割は大きく、都道府県医師会及び郡市区医師会等医師会がその議論をリードし、現場目線で地域住民に資する地域の医療・介護提供体制を構築していくことが極めて重要になると指摘。「日医としてもより良い仕組みづくりに寄与していく」とし、その一環として「都道府県医師会医師偏在対策・働き方改革担当理事連絡協議会」を6月12日に開催することを報告した。
 また、本庶佑京都大学高等研究院副院長/特別教授を委員長に迎え、今期改めて「医師の団体の在り方検討委員会」を立ち上げる意向を明らかにするとともに、「その議論を基に、医師会が患者、国民に必要な医療政策を提言・実行する団体であることを広く訴え、新たな時代の医療のあり方を国民と共につくり上げていく」と述べ、理解と協力を求めた。

協議

(1)外来医療計画の策定について

 三重県医師会からの外来医療計画の策定に関する質問には、釜萢敏常任理事が回答した。
 厚生労働省の『外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン』に対する日医の見解や、取りまとめに当たっての議論の内容が会員に十分に行き届いていないとの指摘に対し、「『日医ニュース』の活用など、今後改善に向けて努力していく」と述べるとともに、6月12日に開催する「都道府県医師会医師偏在対策・医師の働き方改革担当理事連絡協議会」の中でも詳しく説明する意向を示し、理解を求めた。
 また、日医が外来医療計画に関して、「地域に協議の場を設け、地域の医療需要を踏まえ、あくまで医師の自主性を尊重すべき」との方針に至った経緯を説明するとともに、「今後、このような重要案件についてはより慎重な議論を重ね、新たな方針決定に当たっては速やかに会員の先生方にお知らせできるよう、理事会や常任理事会の議事内容の報告を徹底していきたい」とした。

(2)厚労省主導の新たなシーリングについて

 厚労省の「診療科ごとの将来必要な医師数の見通し」に対する日医の見解を問う長崎県医師会からの質問には、羽鳥裕常任理事が医道審議会医師分科会医師専門研修部会で了承された、専門医機構による緩和策を含む専攻医募集に当たってのシーリングの考え方について概説した。
 策定に当たり、これまでにない要素を加味した点には意味があるとする一方、現場の実態等から乖離しているとの指摘については、「本指標の妥当性を今後検証していくことが不可欠」と述べるとともに、検証結果でシーリング方法が変わる際には、周知・理解に十分な期間設定が必要であると指摘していることを説明。また、この変更により、地域医療に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、地域医療対策協議会で議論し、その結果を厚労大臣へ提出するよう求めた。
 更に、将来必要医師数の公表のみでシーリングを設ける必要はないとの指摘に対しては、「外科、産婦人科の医師数が減少している実態を踏まえると、何らかの対応は取らざるを得ない」との見方を示すとともに、引き続き地域枠医師の選考に際しての診療科の提案、学部教育によるアプローチなど、実効性を伴う多角的な対応が取られるよう、協議していく考えを示した。

(3)へき地医療における医師の確保について

 へき地等、地域の医師確保対策に関して、今後どのような施策を講じるべきか日医の考えを問う秋田県医師会からの質問には松本吉郎常任理事が回答した。
 同常任理事は、「代替医師の緊急派遣など、医師が一人しかいない地域で診療不能となった場合の体制づくり」「地域枠出身医師の活用」等が必要との考えを説明。
 具体的な解決策として、先の概算要求の各要望事項の説明とともに、①長年、地域医療に尽くしてきた会員で跡継ぎがいない場合に、開業を考えている先生に事業承継を行ってもらうことを適切に推進できる仕組みを検討中である②秋田県医師会の協力の下で、診療所の第三者承継のマッチングをトライアルで実施する予定である―ことなどを示して、理解を求めた。

(4)行政提出文書のIT化について

 行政提出文書のIT化実現を求める滋賀県医師会の要望には、長島公之常任理事が今国会に提出されているいわゆる「デジタル手続法案」の内容などにも触れながら、「行政文書のIT化は重要なテーマであり、国にその実現を強く働き掛けていく」と説明。
 更にIT化を進めるに当たっては、「IT化は希望する医療機関のみとする」「医療機関側の操作はできるだけ簡単にする」「国によるセキュリティを十分に確保した申請システムの整備」「医師資格証の更なる普及」―などが必要だと指摘。日医としては、医療機関にデメリットが生じないよう十分に配慮しながら国に働き掛けていくとした。

(5)医療介護人材確保のために有料職業紹介業者へ支払う紹介手数料について

 神奈川県医師会は、医療介護人材確保のために有料職業紹介業者へ支払う紹介手数料について日医の対応を求めた。
 江澤和彦常任理事は、「紹介業者に支払う手数料の源は公費と保険料であり、現状は由々しき事態だ」とした上で、日医としても改善を強く求めてきた結果、平成29年には職業安定法施行規則の一部改正が行われるとともに、今年度には厚労省職業安定局で大々的な調査が実施されることになったことを説明。「調査依頼が届いた場合には、ぜひ現場の声を強く示して欲しい」とした。
 更に、同常任理事は人材紹介業者が行っているサービスについても言及。求職者への金品等の提供禁止や返戻金制度における返戻金対象期間の延長を検討すべきであるとした他、そもそも現状の紹介手数料の設定が妥当であるか否かについても議論の必要があるとし、その実現に向けて関係省庁に理解を求めていく考えを示した。

(6)ACPにおけるかかりつけ医の役割について

 岡山県医師会は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)におけるかかりつけ医の役割と外来医療の機能分化及びかかりつけ医機能を一層推進するため、診療報酬上の評価として、ACP連携加算の新設を提案した。
 松本常任理事は、前回の同時改定において既にACPの連携に対する評価が行われ、中医協の検証調査結果により少しずつ理解が深まっていることを報告。次回改定に向けては、現行のターミナル加算の中で更なる評価を充実させるか、あるいはACPのみ外出しにして新たな加算を創設するかなど、ACPの更なる普及に向けて、どのような対応ができるか協議していく考えを示した。
 また、ACP推進に向けた日医の取り組みとして、①リーフレットを作成し、『日医雑誌』に同梱②日医かかりつけ医機能研修制度応用研修の講義項目に「終末期医療」を新設③今期の生命倫理懇談会で「終末期医療に関するガイドラインの見直しとACPの普及・啓発」に関する検討の開始―などを行ったことを説明。引き続きの理解と支援を求めた。

(7)これからのわが国におけるたばこ対策について

 東京都医師会からは、都道府県医師会のたばこ対策の現状把握とわが国におけるたばこ対策への展望を示すことを求める要望が出された。
 羽鳥常任理事は、まず、日医の取り組みとして、①受動喫煙の推進を目指した動画の制作や小冊子『禁煙は愛』の改訂を行った②日医会員の喫煙状況調査を実施し、回を追うごとに着実に喫煙率は減少している―ことなどを報告。都医が求める都道府県医師会を対象とした各医師会館の禁煙状況、役職員の喫煙率等に関する調査については、実施していく考えを示し、その際の協力を求めた。
 また、今後については、①医療機関における禁煙治療・禁煙支援体制の整備②学校現場における児童、生徒等に対するたばこの有害性の教育や受動喫煙防止対策の取り組み③未成年者の喫煙防止対策として、たばこ価格やたばこ税の引き上げ―等を国に対して、引き続き求めていくとした。

(8)日本医師会会員情報システムについて

 愛知県医師会からの、日医会員情報システムの再構築の進捗状況や今後の展望に関する質問には、小玉常任理事が回答した。
 同常任理事は、日医は平成28年2月に会員情報システムのクラウド化による再構築を行ったが、都道府県医師会より、日医の会員情報システムと各医師会の会員情報システムに二重の入力が必要になるとの指摘があったことから、新たに都道府県医師会からのデータを受け取る医師データベースを構築し、そこを経由する形のシステムに変更したことを報告。しかし、既存の会員情報システムを外部システムと連携させるためにはデータの整理が必要であり、現在、データの整理と反映の方法について検討を行っているとした。
 今後の展望については、「まず日医の会員情報システムに格納されているデータの整理を進めるとともに、都道府県医師会から会員情報を送信してもらった上で、都道府県医師会との情報連携を開始したい」と説明。都道府県医師会が医師データベースを参照することで、最新の情報を取得・活用できるようにしていく他、入退会手続きの電子化についても検討を進めていく意向を示した。

(9)地域枠・新専門医制度・働き方改革等、制度の渦中にある後期研修医へのサポートについて

 徳島県医師会からの、地域枠・新専門医制度・働き方改革等、制度の渦中にある後期研修医へのサポート体制に関する質問には、羽鳥常任理事が回答した。
 地域枠の医師は地域への定着率が高く、地域医療への貢献が強く期待されることから、日医としても必要性を主張し、厚労省「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」の「第4次中間取りまとめ」においても、医学部の「恒久定員」内に一定割合の地域枠を設けることを認める方針が示されたことを説明。各地域の実情に応じて引き続き地域枠を活用することを求めた。
 新専門医制度に基づく専門研修については、専攻医の意見を組み入れる対応や丁寧な情報発信等が十分ではなかった点を内省した上で、広報や若い世代の医師の意見が適切に反映される制度運営に努めていくことを強調。専攻医等の不安を払拭するため、さまざまな制度改正等については、医学部学生向けの情報誌「DOCTOR-ASE(ドクタラーゼ)」や、各都道府県医師会における臨床研修医等、若手医師との意見交換の場を積極的に活用して丁寧な情報提供を行っていくとした。

(10)第8回「日本医師会 赤ひげ大賞」推薦依頼について

 城守国斗常任理事は、赤ひげ大賞の候補者推薦に関する協力に謝意を示した上で、まもなく第8回の推薦依頼文書を発出する予定であることから、推薦要領の変更点について説明した。
 今回からの変更点として、(1)推薦要領の「地域の医療現場で長年にわたり」という文言中の「長年にわたり」を削除、(2)推薦された全ての候補者に「赤ひげ功労賞」を授与するとともに、表彰式・レセプションにも参加頂く、(3)推薦人数は「1名以上2名以内」から「1名」とする―ことの3点を挙げた。
 同常任理事は、「長年にわたり」との文言によって、長期間の従事が要件であるとの誤解が生じていた他、「受賞者数が少なく、推薦しにくい」といった声も寄せられていたことから、改善を行ったと報告。「赤ひげ大賞」の受賞者5名を選出する枠組みに変更がないことを強調した上で、「本賞は、都道府県医師会からご推薦を頂かなければ成り立たない。今回の変更点も踏まえ、ぜひ、老若男女問わず、地域で活躍されている医師の方々をご推薦頂きたい」と更なる協力を求めた。
 その他、小玉常任理事からは非会員の女性医師に対する大学同窓会等を経由した日本医師会女性医師バンク事業周知への協力依頼が行われた。

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