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令和元年(2019年)9月20日(金) / 日医ニュース

かかりつけ医機能の更なる充実を目指して

かかりつけ医機能の更なる充実を目指して

かかりつけ医機能の更なる充実を目指して

 「2019年度地域包括診療加算・地域包括診療料に係る かかりつけ医研修会」が8月25日、日医会館大講堂で開催された。
 本研修会は、地域包括診療加算・地域包括診療料の診療報酬上の施設基準にある「慢性疾患の指導に係る適切な研修」の必須要件を網羅した内容となっており、施設基準の届出に特化した研修会となっている。
 当日は、日医会館で230名が受講した他、テレビ会議システムにより44都府県医師会で約6000名の事前申し込みがあった。
 松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長は、「新しい『令和』の時代における医療の大命題は、人生100年時代を迎える中で、いかに明るい健康社会をつくり上げていくかにある」とした上で、「医師と患者という縁から信頼関係を結び、患者の生命・健康を最も身近で守り続ける存在こそがかかりつけ医であり、地域包括ケアシステムの確立もアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及も、国民から選ばれるかかりつけ医の存在があってこそ実現できるもの」とかかりつけ医の重要性を改めて強調。「本日の研修会が、かかりつけ医機能の充実に資するものとなり、先生方がそれぞれの地域における『まちづくり』のリーダーとして、地域包括ケアシステムの構築に取り組まれる際の参考になれば幸いである」として、本研修会の成果に期待を寄せた。
 午前の部は、松本常任理事が座長となり、(1)糖尿病、(2)認知症―について、午後の部は江澤和彦常任理事が座長となり、(3)脂質異常症、(4)高血圧症、(5)服薬管理―について、城守国斗常任理事が座長となり、(6)禁煙指導、(7)健康相談、(8)介護保険、(9)在宅医療―について、計9題の講義が行われた。
 (1)糖尿病では、菅原正弘医療法人社団弘健会菅原医院長が、超高齢社会における糖尿病治療には、フレイル予防等も考慮した包括的なテーラーメイド治療と共に、コメディカルを含めたチーム医療の実践、専門医や他科との連携が重要だとした上で、より効果的な重症化予防に向けて、「日本医師会かかりつけ医糖尿病データベース 研究事業(J―DOME)」への参画を求めた。
 (2)認知症では、瀬戸裕司医療法人ゆう心と体のクリニック院長が、最近の診断基準や考え方、新たに決定された「認知症施策推進大綱」について解説した他、診断書の書式が改定された「成年後見制度」についても、その概要やかかりつけ医の役割について概説した。
 (3)脂質異常症では、江草玄士江草玄士クリニック院長が、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』を基に、診断基準の注意点等の他、女性や高齢者への対応の留意点、後期高齢者の一次予防に関する薬剤治療の有効性について説明した。
 (4)高血圧症では、有田幹雄社会医療法人スミヤ角谷リハビリテーション病院長が、5年ぶりに改訂された『高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)』の変更点を解説。患者それぞれの病態を考慮した治療が重要だとするとともに、健康寿命の延伸に向けて若年期からのライフコース的アプローチが必要だとした。
 (5)服薬管理では、秋下雅弘東大医学部附属病院老年病科教授が、高齢者のポリファーマシー対策は喫緊の課題だとして、高齢者を中心とした薬物療法の基本、ポリファーマシーへの対応、服薬支援、患者指導など、服薬管理のポイントを解説。服薬管理には医師、看護師、薬剤師、栄養士など多職種連携が不可欠であるとした。
 (6)禁煙指導では、正林督章環境省大臣官房審議官が、喫煙の現状とともに来年4月全面施行される健康増進法について概説。受動喫煙防止対策推進と併せて禁煙支援対策も前進させる必要性を指摘し、そのためには、現場で禁煙指導に当たるかかりつけ医の役割が重要になるとして積極的な取り組みを求めた。
 (7)健康相談では、岡田唯男医療法人鉄蕉会亀田ファミリークリニック館山院長が、貧困や孤立など社会的要因を含む環境因子が健康に及ぼす影響の大きさを問題視し、行政や関係機関が連携した環境づくりが重要になると指摘。その人にとっての健康とはどのような状態で、そのために必要な支援は何か、一人ひとりきちんと対話をすることが求められるとした。
 (8)介護保険では、鈴木邦彦医療法人博仁会志村大宮病院理事長/院長が、介護保険制度の現状と課題について概説した上で、「かかりつけ医には地域包括ケアシステムのリーダーとして、患者・利用者を総合的に見守る役割を担うことが求められる」として、介護保険に対する知識と理解を求めるとともに、地域支援事業などへの理解も深まることに期待を寄せた。
 (9)在宅医療では、新田國夫医療法人社団つくし会理事長が、人生100年時代に向けた在宅医療のあり方等を説明するとともに、地域医療計画における在宅医療の具体的な取り組みや課題について、国立市の例を紹介。地域医療計画の策定に向けて、かかりつけ医を始め、専門職と市町村、地域住民が地域医療について一緒に考え、育てていくことが望ましいとの考えを示した。
 閉会のあいさつに立った今村聡副会長は、「日医としても、かかりつけ医の更なる普及と機能向上に尽くすため、研修制度の充実・強化、拡大に向けて議論を継続していきたい」とした。
 なお、同研修会の内容は、後日、日医ホームページにて映像を配信する予定となっている。

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