第6回医学生・日医役員交流会が8月22日、日医会館で開催され、日医からは横倉義武会長、今村聡副会長、小玉弘之、釜萢敏、城守国斗各常任理事が参加した。
日医では、医学生向けの無料情報誌『DOCTOR―ASE(ドクタラーゼ)』を発行するなど、医学生を対象にさまざまな情報提供を行っている。その一環として、将来の医療を担う医学生と日医の役員が、日本の医療制度とその問題について共に考える機会をもち、医学生に医師会活動への理解を深めてもらうことを目的として本交流会を開催している。
6回目となる今回は、「医師の働き方改革について」をテーマに、活発な意見交換を行った。
小玉常任理事の総合司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉会長は、今回のテーマについて、「長時間労働が当たり前であった自分の若い頃と比べて、働き方や考え方が大きく異なっている」との認識を示した上で、「医師も仕事と、それ以外の生活のバランスを上手く取ることが必要であり、それがより良い仕事をするためにも重要になる」と述べた。
また、その一方で、日医は地域医療とのバランスも考えて改革を進めていかなければならない立場であることを説明し、さまざまな要因が複雑に関係している本テーマに対して、出席した医学生にも活発な議論を求めた。
第1部では、イントロダクションとして、今村副会長が「『働き方改革』における医師の働き方」、城守常任理事が「『医師の働き方改革に関する検討会』の議論および報告についての説明」をテーマにそれぞれ講演した後、参加者の自己紹介が行われた。
今村副会長は講演において、医師の本来的なあり方と労働基準法の下における労働者としての両面性がある中で、現在進められている働き方改革でどのような対応が求められているかを概説。城守常任理事は、同検討会で議論され、実際に適用されることとなる時間外労働の上限時間等の規制の内容及びそのような結論となった議論の背景を中心に解説した。
第2部では、参加者全員によるディスカッションが行われ、主に(1)地域医療と個人のワークライフバランス、(2)医学部入試における地域枠への考え方、(3)医師の偏在(地域、診療科)―等について意見交換が行われた。
(1)では、休暇の取りやすさ等について、多くの医学生から「地域間格差が大きい」「(受診について)患者さんの意識を変える必要があるのではないか」などの意見が出された他、役員からも休暇と給与等のバランスに対する意識について質問がなされ、出席した医学生の中でも多様な価値観があることが明らかとなった。
また、関連して、チーム医療やタスクシェア等について、看護師等が医師の指示なく働くことへの考え方を問う役員からの質問に対しては、医学生から免許やトレーニングのあり方、有害事象が起きた際の対応等についてさまざまな意見が出された。
(2)では、「仕組みをきちんと理解せず、地域枠で入学している学生もいる」という意見があった一方で、多くは18歳の時点で卒業後も地元の地域医療に従事するという選択を迫られることの難しさを指摘する声も上がった。
更に、今後の地域枠の位置付け次第では、「指定された地域で働くこと」自体に負のイメージができてしまうのではないかという懸念も示された。
(3)では、医局の派遣機能を強化することへの賛否、地方へ派遣された場合の各種インセンティブの必要性、育った地域による地域医療の捉え方の違い、実際に地域医療に触れることの重要性等について、役員と医学生双方から多くの発言があった他、受け入れる地域住民が、「地域の中で医師を育てる」という意識をもつことの重要性も指摘された。
最後に、今村副会長が総括を行い、「働き方改革における課題は、限りなく議論が続くような大きなものばかりであり、個々人でもしっかりと考えていくことが重要。人間の価値観はそれぞれ異なるため、日医としては、多様性を認める方向性を重視している」と述べるとともに、出席した医学生に対し、何か困った場合には医師会に相談して欲しいと呼び掛けた。