今年度第1回目となる「子育て支援フォーラムin千葉」が9月21日、日医、SBI子ども希望財団、千葉県医師会の共催により、千葉市内で開催された。
フォーラムは、西牟田敏之千葉県医理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長(平川俊夫常任理事代読)は、まず、台風15号により被害に遭われた方々に対してお見舞いの意を表した。
次に昨年12月、日医が提唱してきた成育基本法が成立したことに触れた上で、「虐待の根底にある社会的な要因に目を向け、社会全体で強い危機感を持ち、できるだけ早期に把握し、適切な対応を行うことが必要」と述べた。
続いて、入江康文千葉県医会長があいさつに立ち、「虐待事件の報道を、被害にあった子どもと同年代若しくは似たような環境にある子ども達が、どのような気持ちで見ているのか心配になる。ぜひ、皆様にもお考え頂きたい」と述べ、報道のあり方について一石を投じた。
引き続き行われた基調講演(座長:堀部和夫千葉県医副会長)では、横山浩之福島県立医科大学ふくしま子ども・女性医療支援センター教授が、「子育て支援から子どもの行動異常を予防しよう」と題して講演。親とのコミュニケーション不足によって、子どもの心理発達の遅れが生じる可能性があり、また、母性や父性の形成は本能ではなく、子どもとの相互作用で育まれることを説明した上で、「行政は、子育て支援として親子に保育所や延長保育を提供しているが、子どもの心理発達は考慮されているのか。子どもの心理発達への配慮は、母性・父性の発達を促し、子育てを楽しむことにつながる」と指摘した。
その後のシンポジウム(座長:水谷敏郎千葉県産科婦人科医学会長、佐藤好範千葉県小児科医会長)では、まず、「今日の子ども家庭と新たな社会的養育の現状・課題」と題して、加賀美尤祥社会福祉法人山梨立正光生園理事長が講演した。
加賀美氏は、2017年に児童福祉法が改正され、条文の主語が"すべて国民は"から"全て児童は"へ改められ、更に、"国及び地方公共団体は児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならない"と明文化されたことに言及。これらは、全ての子どもを視野に入れた社会的養育を進めていく意思を示したものだとした他、国の動きとして、2022年までに「地域子ども家庭総合支援拠点」を、全ての市区町村に配置する意向であることなどを紹介した。
「虐待予防と愛着形成に向けた日本産婦人科医会のとり組み」と題して講演した相良洋子日本産婦人科医会常務理事は、同会が取り組んでいる"妊産婦メンタルヘルスケア事業"として、①妊産婦のメンタルヘルスケアのための指針の策定②母と子のメンタルヘルスケア研修会の開催③地域での多職種連携の促進④子どもの脳とこころの発達を考慮した育児支援―を紹介し、「妊産婦が安心して妊娠・出産・子育てができ、子ども達が健康に育っていける社会を目指していきたい」と意欲を示した。
奥山眞紀子日本子ども虐待防止学会理事長/小児精神科医は、「配偶者からの暴力と子どもへの影響について」をテーマに講演し、「配偶者からのDVは被害者を避難させればおしまいではなく、そのことは始まりに過ぎない」と強調。重要なのは、自立支援のためのソーシャルワークや子ども及び親子関係に焦点を当てた支援の他、暴力とトラウマの連鎖から親子を救うことであると指摘した。
その後の総合討論では、参加者とシンポジストとの間で活発な質疑応答が行われ、フォーラムは終了となった。
なお、日医では今年度12月に2回(宮崎県、三重県)、同フォーラムを開催することになっている。