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令和元年(2019年)10月20日(日) / 日医ニュース

「医療的ケア児支援のための協議の場」に積極的参画を

「医療的ケア児支援のための協議の場」に積極的参画を

「医療的ケア児支援のための協議の場」に積極的参画を

 令和元年度都道府県医師会小児在宅ケア担当理事連絡協議会が9月25日、日医会館小講堂で開催され、医療的ケア児の支援に先進的に携わってきた医師や行政から説明が行われるとともに、群馬県・福井県・三重県・大阪府の各医師会より取り組みなどが報告された。
 松本吉郎常任理事の司会で開会。
 冒頭のあいさつで横倉義武会長(中川俊男副会長代読)は、「平成28年6月の児童福祉法等の改正により、医療的ケアが必要な子どもへの支援が自治体の努力義務とされたことを契機に、『医療的ケア児』という言葉も徐々に社会的に認知されるようになってきた。しかしながら、医療的ケア児とその家族の置かれた環境は依然として厳しく、支援の充実に向けて更なる取り組みが求められている」と強調。成人の在宅医療に比べ、小児在宅医療の取り組みは遅れているとして、都道府県や圏域ごとに設置される「医療的ケア児支援のための協議の場」に地域医師会が積極的に参画し、受け入れ体制の充実を図っていくことを求めた。

小児在宅ケアをめぐる現状と課題

 田村正徳埼玉医科大学総合医療センター小児科特任教授は、NICUの満床問題を受けて長期入院児を減らす流れの中で、退院した子どもの約3分の2が人工呼吸器を着けたまま在宅に移行していることを説明。小児の在宅医療を進めるためには、在宅療養支援診療所と小児科診療所との連携が重要であるとし、各地域での連携システムの構築を求めた。
 また、災害によるブラックアウト発生時にも在宅患者の安全を確保するため、「自助(家庭)、共助(地域)、公助(病院・行政)」の取り組みが必要であるとし、各都道府県医師会における医療的ケア児への対応について検討を要請した。
 前田浩利医療法人財団はるたか会理事長は、「在宅医の立場から」として、寝たきりの医療的ケア児だけでなく、動ける・知的障害がない医療的ケア児が医療技術の進歩により急速に増えているが、現在の障害児支援では後者へのカバーがなされていないと指摘。
 医療機器など医療的ケアが必要な子ども達が医療機関ではなく、自宅にいることを前提に、地域で成長し、学び、働き、老い、最期を迎えられるような地域ケアネットワークを構築することが重要であるとした。

医療的ケア児に関する施策について(行政の立場から)

 本後健厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害児・発達障害者支援室長は、「医療的ケア児に関する施策について」と題して、9月11日時点の中間報告では、医療的ケア児支援のための関係機関の協議の場が、都道府県には52設置され、医師会が構成員となっている割合は71%である一方、圏域には32設置され、医師会が構成員となっている割合は16%であることなどを報告。
 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定における医療的ケア児への対応として、(1)看護職員の配置を評価する加算の新設、(2)障害児の通所サービスについて利用者の状態や事業所のサービス提供時間に応じた評価、(3)障害児の居宅を訪問して発達支援を行う新サービス「居宅訪問型児童発達支援」の報酬設定―を行ったことを説明した。
 佐々木邦彦文部科学省初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育企画官は、「学校における医療的ケアの実施について」と題し、学校において医療的ケアを実施することにより、医療的ケア児の教育機会の確保や充実を図ることができるだけでなく、子ども自身が吸引や姿勢変換の必要性など、自分の意思や希望を伝える力を形成し、自己肯定感や自尊感情を向上させることができると強調。そのためにも、学校医や医療的ケア指導医の専門的知見が重要であるとして、地域医師会に対して、学校における医療的ケアの実施体制の構築に向け、「医療的ケア運営協議会」への参画などを求めた。

医師会の取り組み

 川島崇群馬県医副会長は、平成25~26年度に国のモデル事業である「小児等在宅医療連携拠点事業」を受託したことを契機として、医療・福祉・教育・行政の関係者による「群馬県小児等在宅医療連携協議会」を設け、人材養成や多職種連携を進めてきたことを説明した。
 池端幸彦福井県医会長は、「平成30年度医療的ケア児の実態調査」によって医療的ケア児に対応できる機関が少なく、人材も不足していることが明らかになったとし、今後は人材育成に取り組む他、(1)レスパイトケアの充実、(2)移動支援、入浴サービスの充実、(3)18歳以上の受け入れ―についても検討していくとした。
 野村豊樹三重県医理事は、三重県行政、三重県小児科医会とも連携して体制整備を図ってきたことを概説。医療的ケア児のための『災害時対応ノート』と『小児在宅医療的ケア児災害時対応マニュアル』を作成・配布したことを紹介した他、「各郡市医師会が小児科医と成人診療科医等のペアを組み、在宅医療支援の調整をしている」と述べた。
 中尾正俊大阪府医副会長は、小児在宅医療の研修会や同行訪問研修を行うなど、内科医にも小児在宅医療に携わってもらうための土壌づくりをしていることを説明。医療的ケア児を地域で支援するための協議の場は、平成30年度までに設置済が24市町、今年度設置予定が13市町であり、全市町村での設置を目指して働き掛けていくとした。
 協議では、事前に寄せられた質問・要望や関連質問に対し、厚労省の担当者や日医から回答した他、小児在宅医療の人材育成のあり方やワンストップ窓口の創設などについてフロアを交えて質疑応答を行った。
 最後に、総括した中川副会長は、「医療的ケア児に関する課題は、医療・福祉・保育・教育と多岐にわたる。医師会としては、まずは在宅医療提供体制の確保が第一義的役割だが、それにとどまらず、福祉分野への理解を深めるとともに保育・教育の現場での受け入れに当たっても役割が求められている」と述べるとともに、喫緊の課題として、在宅でさまざまな医療機器を使用する医療的ケア児の災害対策を挙げた。参加者は163名。

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