先日、東山トレイルの途中、銀閣寺市営駐車場のトイレに立ち寄った。トイレ内に貼り紙があり、外国人向けにトイレの使い方の注意書きが書いてあった。
注意点が二つあり、一つは、使用した紙は汚物入れに捨てず、トイレに流すという内容であった。韓国だったか、アジアのある国ではトイレに紙を流さずに、備え付けの汚物入れに入れると聞いたことがある。そしてもう一つは、和式トイレの座り方であり、便器の丸い部分(いわゆる金隠し)を前にして座るということであった。まあ時代は変わったものだと感心して、思わずポスターを見入ってしまった。
今では洋式が一般的であり、小学校でも洋式がほとんどで、和式を使用したことがない子どもがまれではないと聞く。
私が洋式トイレの実物を初めて使用したのは、1968年に家族で東京に旅行した時のことである。夢の超特急に乗るのも初めて、東京ではとバスに乗って、モノレールに乗って、本当に空を飛んでいる飛行機を見に行ったり、霞が関ビルの展望台に登ったりと驚きの連続であった。
ホテルではじゅうたんの上を土足で歩くのも驚きであり、朝食が食べ放題なのも感激であった。トイレは当然浴槽、洗面台と一緒にあった。誰かが入浴中にトイレに行きたくなったらどうするのだろうと悩んだり、そういう時のためにバスタブにカーテンがあるのかと変に感心したりした。
確か洋式トイレの使用法が壁に貼ってあって、男性が使用する時は便座を上に上げてとか、便器のふちに足を掛けてしゃがんではいけませんと書いてあったと記憶している。鎖を引っ張って水を流すのは、テレビや漫画でしか見たことがなく、何回も水を流して親に叱られた。
私が幼稚園に通っている時のことである。2人の友人との帰り道で、和式トイレの丸いところは何のためにあるのかという話題になった。小さい子どもは、ウンチやらおしっこやら汚い話が大好きである。
私の意見「おしっこが前に飛ばないようにガードするため」。友人の意見「穴に落ちないように手でつかむため」。当時はくみ取り式であり、子どもであれば十分穴に落ちる危険性はあった。真っ黒な穴の中はどれくらいの深さがあるのか皆目見当もつかず、落ちたら最後、地球の裏側辺りまで行くのではと大変な恐怖であった。
するともう一人が言った。「ちゃうで。あれはあの丸いところにお尻を入れるんや」。えーっ! するとこの子は前後逆にしゃがんでいるのか。密室のことだから分からないのだが、この世の中にはどこかで逆に座っている人がいるのだと衝撃を受けた。
半世紀以上前から今までずっとその真相が分からないままであったが、今、逆に座っている人が決してまれではないことがはっきり分かった。心のもやもやが晴れ、すっきりしたのと、変なことで時代の流れを実感したのである。