世界医師会(WMA)トビリシ総会が、ジョージアのトビリシにおいて、10月23日から26日にかけて開催され、約40医師会及び欧州医師常設委員会等、約220名が参加した。
日本からは、横倉義武会長(WMA前会長)、WMA理事として松原謙二副会長、道永麻里常任理事(WMA理事会副議長)、星北斗参与の他、澤倫太郎会長特別補佐・日医総研研究部長(WMA医の倫理委員会アドバイザー)、都道府県医師会、日医ジュニアドクターズ・ネットワークより総勢18名が参加した。
総会に先立ち、22日、道永常任理事は、役員会議の他、「遺伝学と医療に関する作業部会」、「医の国際倫理綱領に関する作業部会」に出席した。
25日、総会式典においてレオニード・エイデルマン第69代WMA会長が退任し、ブラジル医師会ミゲル・ジョルジュ理事が第70代WMA会長に就任した。横倉会長は、WMA元会長としてWMA総会への永久参加資格が付与されるとともに「WMA元会長、元議長ネットワーク」のメンバーとなり、星参与に代わりWMA理事に就いた。
式典では、ジョージア医師会ギア・ロブジャニゼ会長、ジョージア議会イリア・ナカシゼ副議長による歓迎のあいさつが行われた。
26日、総会においてWMA次期会長(2020―2021年)にアメリカ医師会デビット・バーブ元会長が選出された。
横倉会長はWMAのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する活動報告を行った(写真上)。
報告では、3年間のWMA会長職における活動に対する各国医師会の支援に謝辞を述べ、WMA会長として、UHCフォーラム2017(2017年12月)への参加、昨年4月のWHOテドロス事務局長との間における「UHCの推進と緊急災害対応の強化」をテーマとした覚書の締結、覚書の実践の場としての「Health Professional Meeting(H20)」の開催と成果物「UHCと医療専門職に関する東京宣言」を採択したことを概説。また、「国連総会UHCに関するハイレベル会合」へのWMA代表としての出席、同総会のサイドイベントにおける講演、「G20岡山保健大臣会合」におけるWMA前会長としての講演を行ったことを報告した。
議事では、「安楽死と医師の支援を受けてなされる自殺に関するWMA宣言」が採択され、これまでの「安楽死に関するWMA宣言」、「医師の支援を受けてなされる自殺に関するWMA声明」はアーカイブされた。
また、トビリシ滞在中に、上原忠春駐ジョージア日本国特命全権大使による夕食会に招待され、懇談を行った。
総会における主な議事内容は以下の通りである。
(1)医の倫理関係
採択文書
「性別選択的中絶及び女児堕胎に関するWMA声明修正」
「WMAレイキャビク宣言:医療における遺伝学の利用に関する倫理的考察修正」
「安楽死と医師の支援を受けてなされる自殺に関するWMA宣言」
「独房監禁に関するWMA声明修正」
(2)社会医学関係
採択文書
「医師主導の職業規範に関するWMAマドリード宣言修正」
「女性と子どものヘルスケアへのアクセスに関するWMA声明修正」
「抗微生物薬の耐性に関するWMA声明修正」
「食事からのナトリウム摂取量の削減に関するWMA声明修正」
「医療における拡張知能に関するWMA声明」
「保護者のいない未成年の庇護希望者の医学的年齢評価に関するWMA声明」
「遊離糖類の消費および加糖飲料に関するWMA声明」
「全ての人のための医療情報に関するWMA声明」
「暴力と健康に関するWMA声明修正」
「ニカラグアにおける中絶禁止法に関するWMA緊急決議修正」
「気候非常事態に関するWMA決議」
「オピオイド使用に関するWHOガイドラインの取り消しに関するWMA決議」
WMA災害医療に関するネットワーク
星参与が、アジア大洋州医師会連合(CMAAO)域内における災害医療ネットワーク構想の進捗状況、台風19号による国内の被災状況及びJMATの活動を報告した。
(3)財務企画関係
①今後の会議開催日程
2020年:4月ポルト理事会(ポルトガル)、10月コルドバ総会(スペイン)
2021年:4月ソウル理事会(韓国)、10月ロンドン総会(イギリス)
2022年:4月パリ理事会(フランス)、10月ベルリン総会(ドイツ)
2023年:4月ナイロビ理事会(ケニア)、10月キガリ総会(ルワンダ)
②加盟医師会
セイシェル医師会の加盟が承認され、加盟医師会数は113となった。
(4)学術集会
24日には、「緩和ケアの国際基準の実施に向けて」と題して、学術集会が開催された。
冒頭、ザザ・バクア ジョージア労働保健社会相、占領地からの国内避難民省副大臣による歓迎あいさつがあった後、緩和ケアの実施のあり方、子どものための緩和ケア、緩和ケアの正しい計画と実施のための教育プログラム、緩和ケアにおける心理的問題などに関する講演が行われた。