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令和元年(2019年)12月20日(金) / 日医ニュース

持続可能な社会保障制度の確立に向け適切な財源確保を求める決議を採択

持続可能な社会保障制度の確立に向け適切な財源確保を求める決議を採択

持続可能な社会保障制度の確立に向け適切な財源確保を求める決議を採択

 国民医療を守るための総決起大会(主催:国民医療推進協議会、協力:東京都医師会)が12月6日、都内で開催された。
 大会には、約1,000名の参加者(国会議員152名、代理101名、計253名含む)が集い、参加者全員の総意として、持続可能な社会保障制度の確立に向けて、適切な財源を確保することを強く要望する決議が全会一致で採択された。

国の医政を正し、医療に対する国民の信頼に応えていく―横倉会長

 大会は、小玉弘之日医常任理事の司会により開会。冒頭、国民医療推進協議会長としてあいさつした横倉義武日医会長は、「患者負担を増やすだけでなく、時代に対応できる給付と負担のあり方という大きな視点に立った議論を尽くすことで、国民不安の解消につなげていくことが大変重要になる」とした上で、内閣府が本年6月に実施した「国民生活に関する世論調査」の結果を紹介。「日常生活での悩みや不安として挙げた上位3位を、『老後の生活設計』『自分の健康』『家族の健康』が占めているが、この結果は正に、国民の幸福の原点が『健康』にあることを示している」とするとともに、「その願いの根底を支える国民皆保険の理念に反する政策を許してしまえば、国民の悩みや不安をますます増加させ、幸福な国民生活からは遠ざかる一方になってしまう」として、国民皆保険を守ることの意義を訴えた。
 また、過不足のない医療・介護を将来にわたり国民に提供し続けていくためには、「その担い手である医療者や医療機関の十分な確保」「医業経営の唯一、実質的な原資となる診療報酬上での厚い手当て」が欠かせないと強調。「地域医療を担う医療機関が閉院した場合に一番困るのはその地域に住む住民の方々である。ましてや、医療のないところに人は住むことはできず、地域医療の崩壊はそのまま地域の崩壊へとつながってしまう。そうした事態に陥らないためにも、医療を担う我々がこの国の医政を正し、本日出席の国会議員の先生方と共に、医療に対する国民の信頼に応えていくことが必要になる」として、要望実現に向けた理解と協力を求めた。
 続いて、あいさつに立った協力団体である東京都医師会の尾﨑治夫会長は、「今後、高齢化が進むことを考えると、東京は医療機関の数も、人員も十分とは言えず、物価等も高いことから、医療機関は大変苦戦している」とその現状を危惧。医療機関の健全な運営が国民の安心にもつながるとして、診療報酬でのしっかりとした手当てを求めた。
 来賓あいさつでは、まず、鈴木俊一自由民主党総務会長が「国民が安心して暮らしていくことができる医療提供体制をつくっていくことが急務であり、診療報酬でどのように対応していくことができるかが大事になる」とした上で、「自民党として、皆さんの意見をしっかりと受け止め、期待に応えられるように努めていく」と述べた。
 石田祝稔公明党政務調査会長は、国民皆保険を堅持すること、社会保障を安定したものにすることが政治家の使命だと強調。診療報酬は医療従事者の働きへの評価でもあり、しっかり対応していきたいとした。
 その後は、赤松広隆衆議院副議長、田中和德復興大臣、衛藤晟一内閣府特命担当大臣らが次々とあいさつし、参加者に対して「共に頑張っていこう」と呼び掛けた。

国民皆保険という貴重な財産を守り抜く―今村副会長

 引き続き、本大会の趣旨を説明した今村聡日医副会長は、「今回の趣旨は国民医療を守ることに尽きる」とした上で、現在、「全世代型社会保障検討会議」で議論が進められている主な三つの論点(①後期高齢者の自己負担割合のあり方②外来受診時の定額負担のあり方③市販品類似薬の保険上の取扱い)について、その問題点を概説した。
 ①については、「さまざまな角度からデータに基づいて、国民生活への影響を慎重に見極めていく必要がある」とするとともに、社会保障の持続可能性と財政健全化の両立を図るためには、低所得者にも十分配慮しつつ、国民が納得できるよう、十分な議論を尽くすべきと主張。②に関しては、「財政的に支えられないからといって、ルールを変えて患者に負担を求めることは、社会保障としての国民皆保険の理念に反し、断じて容認できない」とした。
 また、③については、「医療上必要な医薬品は保険でも対象とされるべき」とした他、「重篤な疾患だけを保険給付の対象とすれば、社会保険の恩恵が薄れ、経済的弱者が軽微な症状での受診を控えることにより、重症化する恐れがある」と指摘した。
 令和2年度の予算編成に向けては、まず、日医の考え方として四つの点(別記事参照)を説明した上で、健康寿命を延伸し、生涯現役社会を実現することのメリットとして、①雇用が延長され、いわゆる社会貢献ができる②健康な高齢者の増加によって、医療費や介護費の伸びを軽減でき、持続可能な社会保障につながる③若年世代からの予防・健康づくりによって、新たな雇用が創出されたり、健康づくりとICTの融合による新たな産業の創出も期待できる④その結果、税収増にもつながること―などを挙げ、その意義を強調。
 その上で、同副会長は、「世界的に見ても少ない負担で満足度の高い、非常に優れた『国民皆保険』という貴重な財産を守り抜き、次世代の人々、更には医療従事者も誇りをもって仕事をすることができるよう、ご参加の皆様と手を携えて力強く頑張っていこう」と訴え、参加者に大会の趣旨への理解を求めた。
 続いて、参加団体の代表として、国民医療推進協議会の副会長でもある堀憲郎日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長、日本看護協会長の代理として秋山智弥副会長が決意を表明。その後、加納繁照日本医療法人協会長が、本大会の決議案を朗読し、同決議案は満場の拍手をもって採択された。
 最後に、中川俊男日医副会長の掛け声の下、参加者全員が起立して「頑張ろうコール」(写真)を行い、会は終了となった。

決議
 人生100年時代を迎えるなか、幸福な国民生活を将来にわたりおくるためには、必要な医療・介護を安心して受けられるようにしなければならない。
 よって、持続可能な社会保障制度の確立に向けて、適切な財源を確保するよう、本大会参加者全員の総意として、強く要望する。
以上、決議する。
 令和元年12月6日
国民医療を守るための総決起大会

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