日医定例記者会見 令和元年12月11・18日
政府が令和2年度診療報酬改定率について、診療報酬をプラス0・55%(うち働き方改革への対応分プラス0・08%)と決定したことを受けて、横倉義武会長は尽力・協力頂いた関係者に対し感謝の意を示した上で、「満足するものではないが、厳しい国家財政の中、最終的に診療報酬が微増となったことに一定の評価をしたい」と述べた。
改定率に一定の評価
同会長は、今回の改定交渉において、厚生労働省が概算要求要望で高齢化に伴う自然増を5300億円としたのに対して、財務省の財政制度等審議会(財政審)は社会保障関係費の伸びを抑えるとともに、診療報酬についてはマイナス2%半ば以上のマイナス改定を求めてきたことに言及。
厳しい状況下において日医は、①医療経済実態調査やTKC医業経営指標に基づく経営動態分析の結果により、医療機関が大変厳しい経営状況に置かれている②政府が賃上げの継続を産業界に改めて要請する中で、医療分野は他の産業に比べて賃金の伸びが少なく、全就業者の1割を超える医療従事者に適切な手当てを行う③医師の働き方改革に別財源を充てる―こと等を繰り返し主張してきたとした。
最終的に診療報酬が微増となったことについては、「満足するものではないが、厳しい国家財政の中、一定の評価をしたい」と述べるとともに、今回の働き方改革への対応分を除く0・47%は、医療従事者の人件費を1%引き上げるのに必要な財源と同額となっており、前回改定に引き続き、日医が主張してきた"モノから人へ"の評価がなされたとの見方を示した。
一方、第22回医療経済実態調査では、医療法人の一般病院1施設当たりの設備投資額は減少傾向にあり、一般病院の減価償却費と設備関係費の比率はいずれの開設者でも低下するなど、設備関係コストが抑制されていることを挙げ、「今回の改定率では、人件費の引き上げへの対応のみで、医療機関の設備投資の財源への手当ては十分ではない」と指摘した。
今回の改定でも、薬価改定財源が自然増の伸びの抑制等に充てられ、診療報酬に全額充当されなかったことに対しては、「極めて残念」と吐露。今後も、薬価改定財源は診療報酬財源に充当すべきことを主張するとした他、薬価改定を含めると、診療報酬は全体としてはマイナス改定であり、国民の負担は増えることはないことを補足した。
また、財政審が「病院と診療所との間で改定率に差を設けるなど配分に当たっての大枠を示すべきである」と主張していたが、今回別枠となった救急病院における勤務医の働き方改革への対応としてのプラス0・08%は、あくまでも特例的なものであり、病院と診療所との間で改定率に差を設けたものではないと強調した。
都道府県分の消費税増収財源も社会保障の充実に
地域医療介護総合確保基金については、今後閣議決定される政府予算案に反映されるよう期待を寄せるとともに、「消費税増収財源は地方分も含めて社会保障の充実のために使われることが国民との約束である。消費税増収財源の地方分が都道府県で活用されず、執行残となってしまうことは、国民との約束に反するもので、都道府県分の消費税増収財源もしっかりと社会保障の充実のために使われるべきである」との考えを述べた。
更に、2019年度に創設された医療情報化支援基金が約768億円増額されたことについても触れ、「日医は、医療分野におけるICT化を推進するための予算の増額等を求めてきたが、これにより、結果として、医師や医療従事者の働き方改革も推進される」とした。
最後に横倉会長は、今後、中医協で行われる具体的な点数配分の議論について、「令和2年度診療報酬改定の基本方針」で示された、(1)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進、(2)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現、(3)医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進、(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上―の実効性を担保されるよう、議論が進むことに期待感を示した。
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