横倉義武会長は3月25日の定例記者会見で、日医として本年4月を「新型コロナウイルス感染拡大防止"推進"月間」(3月は"強化"月間)と位置付けるとともに、先週から今週にかけての状況に鑑み、6点[(1)診療に従事する医師をはじめとする医療従事者に対する国民からの理解、(2)今春の医療従事見込み者へのお願い、(3)都道府県を中心とした地域における医療提供体制の構築、(4)国民がアクセスするための外来、(5)入院、(6)患者の集団発生や流行状況に応じた地域の緊急事態宣言に向けて]について説明及び要望を行った。
横倉会長はまず、日医が「新型コロナウイルス感染拡大防止"強化"月間」と位置付けた3月の国内感染者数について、「徐々に増加したものの、爆発的感染は起きなかった」と述べる一方で、先週末の3連休は、「国民の気が緩んでしまったような印象を受ける」と危惧。もう一度気を引き締め、国民と一体となって拡大防止に努めていくため、4月を「新型コロナウイルス感染拡大防止"推進"月間」と位置付けることを表明した。
次に、(1)について、新型コロナウイルスに誰が感染してもおかしくない状況の中、医師が感染リスクを負いながら懸命に診療を行っていることを説明。「万一医師が感染しても非難されることがないよう、国民の皆様にご理解頂くとともに、今こそ医師と医療関係者が一致団結して立ち向かわなくてはならない」と強調した。
(2)では、今春に医療機関などに就職予定の方に対し、「留学や卒業旅行等で海外へ渡航した方もいると思われる。医療機関や介護施設内での感染を防ぐためにも、働き始める際に、海外渡航歴などを隠さず申告して頂くようお願いしたい」と求めるとともに、医療機関等にも日医、日歯、日薬、日看協の四会長の連名で注意喚起を行ったことを紹介した。
(3)では、今後は地域の流行状況に応じた医療提供体制の整備が必要になると指摘した上で、「地域で医療機関の役割は異なるため、その連携を地域においてしっかりと行わなくてはならない」と強調。行政による状況把握の方法については、「医療機関からの報告を待つのではなく、行政側のリソースで医療機関の状況把握を行う必要がある。また、現在PCR検査は保険適用による検査と行政検査とに分かれているが、両者のリアルタイムでの把握も必要になる」との認識を示した。
更に、今後、広域ブロック内や広域ブロックを超えた患者の受け入れを調整するために設置される見込みの「広域調整本部」についても触れ、都道府県医師会の積極的な関与が必要とした。
(4)では、「帰国者・接触者外来」について、今般、感染経路が明らかでない事例が増えてきたことを受け、「●●<地域名>新型コロナ相談外来」(仮称)を地域において設置することを提案。具体的な業務として、地域の医療機関等からの紹介により、感染疑い患者と直接面談し、PCR検査の適応と判断した場合には、可能であれば検体を採取すること等を挙げるとともに、そのために必要となるN95マスクやフェイスガード、防護具、消毒薬などが不足している現状を訴えた。
(5)では、3月19日に厚生労働省から発出され、ピーク時の医療需要に備えた入院医療提供体制等の整備の考え方や施策についての事務連絡を踏まえ、ピーク時の入院医療提供体制の対策移行が行われた後に、入院治療が必要な患者への入院医療提供体制等の整備のため、今から実施すべき準備・対策がまとめられたことを説明した。
(6)では、緊急事態宣言の発令に言及。「決められた手順に基づき、国や地域の実情を勘案した上で、全国一律ではなく、地域ごとに発令させる準備を早急に進めていかなくてはならない」と述べ、特に感染経路が明らかでない事例が発生している地域での準備を求めた。
更に、新型インフルエンザと違いワクチンも有効な治療薬もない現状においては、現在の行動計画に加え、医療用マスクや防護具等を国と都道府県がしっかりと医療機関に配備することの必要性を改めて強調した。
横倉会長は最後に、爆発的な感染が広がっているヨーロッパ諸国に比べ、わが国が世界で最も高齢化率が高いにもかかわらず死亡者数が抑えられている要因の一つに、新型コロナウイルス感染症の診断にCTが重要な役割を果たしていることがあると指摘。「わが国のCTの台数を問題視する財務省に、規制をかけるべきではないと主張してきたこれまでの日医の活動が、重症化の早期発見につながり、現在のような状況でも結果として国民の生命と健康を守ることにつながっている」とした。
【問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)】
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釜萢敏常任理事は、3月25日の定例記者会見で日医の対応を説明した。
同常任理事はまず、横倉会長と同様に先週末の3連休の国民の動きについて、「感染の拡大が危惧される」と述べるとともに、吉村洋文大阪府知事と小池百合子東京都知事からも強い危機意識が示されたことを紹介。「一度爆発的な感染拡大が起こってしまうと医療崩壊を引き起こしてしまう」と述べるとともに、医療資源に限りがある中、感染が拡大してしまった場合、それに応じられるような医療提供体制の維持は不可能との見方を示した。
また、日医、日歯、日薬、日看協の四会長連名で医療提供施設及び介護・障害者施設・事業所の長宛てに送付した文書「医療提供施設及び介護・障害者施設・事業所の職員の施設外からの感染対策について」の概要を解説。「本文書は、医療・介護福祉従事者が、医療・介護・障害者福祉・事業所の現場で感染を拡大することがあってはいけないとの認識の下、送付したものである」とその主旨を説明した。
その他、同常任理事は、濃厚接触による自主的な就業制限、施設の使用制限に関する日医の考え方について説明。3月11日付の厚生労働省発出文書「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の留意点について」を準用し、「マスク(サージカルマスク)の着用及び手指衛生」という標準予防策等を徹底している場合、後に患者が新型コロナウイルスに感染していると判明したとしても、濃厚接触者には当たらないという整理になっているとした。
【問い合わせ先:健康医療第二課、地域医療課 TEL:03-3946-2121(代)】
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