都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会が、本年4月からの診療報酬の改定概要の説明と、その内容を伝達することを目的として、3月5日に日医会館小講堂で開催された。 今回の協議会は、新型コロナウイルス感染症の影響からTV会議システムによる中継形式がとられ、松本吉郎常任理事から、資料を基に改定内容のポイント等について詳細な説明が行われた。 |
---|
冒頭あいさつした横倉義武会長は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた各都道府県医師会の対応に謝意を述べた上で、(1)働き方改革への対応という大きなミッションのため、診療報酬改定率プラス0・55%のうち0・08%(公費約126億円)に加えて、地域医療介護総合確保基金として公費約143億円が、特例的な対応として財源措置された、(2)団塊の世代が全て75歳以上の高齢者になる2025年に向けた道筋を示す実質的に最後の介護報酬との同時改定であったことから、大きな見直しが行われた平成30年度改定を踏まえた改定となった―ことなどに言及。
今回、新型コロナウイルス感染症の影響で、厚生労働省の説明会や各厚生局が行う集団指導が中止となっていることについては、「届出や審査支払等について、最大限の柔軟な対応を関係各所に申し入れている」として、理解を求めた。
かかりつけ医機能の推進等の改定内容の概要を説明
続いて、医療保険担当の松本常任理事から、日医の動きも交えながら、新規項目や算定要件が見直された項目を中心に改定内容に関する説明が行われた。
同常任理事は、今回の改定は、「健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた『全世代型社会保障』の実現」「患者・国民に身近な医療の実現」「どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進」「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」という基本認識の下、別掲の基本的視点に基づいて行われたものであり、昨年度、都道府県で策定された地域医療構想が実行に移され、2025年に向けた新しい医療提供体制に踏み出したことに加え、今回、重点課題と位置付けられた「働き方改革の推進」への対応がなされたと説明した。
また、改定に当たっては、「前回改定後、妊婦加算の凍結問題や、新たな評価を創設しても想定どおり算定されない項目もあったことから、今回はどっしりと腰を据え、現場の声を聴き、既存項目がより活用されるよう、見直しを行うことに徹した」と強調した。
改定内容については、かかりつけ医機能の推進として、「地域包括診療加算」の施設基準のうち、時間外の対応に係る要件について、複数の医療機関による連携により対応することが可能となるよう、算定要件の見直しが行われたことなどを説明。また、「機能強化加算」については、患者に個別に説明することを算定要件とするよう求める支払側委員との激しい議論の結果、患者への説明や同意の取得等は要件とせず、かかりつけ医としての取り組みを院内掲示すればよいとの結論に至ったことを報告した。
「かかりつけ医と他の医療機関との連携強化」に関しては、紹介先の医療機関から紹介元のかかりつけ医機能を有する医療機関への情報提供を行った場合の新たな評価として、「診療情報提供料(Ⅲ)」が創設されたことや有床診療所入院基本料の引き上げ、婦人科特定疾患治療管理料の創設等を説明。
また、「調剤」に関しては、医療機関における外来患者に対する調剤料が見直され、内服薬、浸煎(しんせん)薬及び屯服(とんぷく)薬(1回の処方に係る調剤につき)では9点から11点に、外用薬(1回の処方に係る調剤につき)では6点から8点に引き上げられた他、処方箋料の一般名処方加算が1点引き上げられたこと等を報告した。
「医師の基礎的な技術の再評価」については、トレッドミルによる負荷心肺機能検査、筋電図検査、血液採取(静脈)、気管内洗浄、胃洗浄、鼻処置、関節脱臼非観血的整復術などが引き上げられたこと等を説明。
「大病院の外来機能分化の推進」に関しては、「紹介状なしで一定規模以上の病院を受診した際の定額負担」並びに「紹介率等の低い病院に対する初診料等減算」の対象範囲を拡大する観点からの見直しが行われたとし、「これらの見直しにより、かかりつけ医と大病院の機能分化が更に進むことを期待している」と述べる一方、全世代型社会保障検討会議で検討されている対象病院の更なる拡大には慎重な姿勢を示した。
今回改定の大きな柱である「医療従事者の負担軽減・働き方改革の推進」に関しては、「地域の救急医療が維持できるよう診療報酬及び地域医療介護総合確保基金で措置」「常勤配置、専従要件の緩和や業務分担、チーム医療の推進による勤務環境改善の取り組みの評価」などが行われたと説明。同基金の運用については、「地域の実情に応じて民間医療機関も含めて適切に使われるよう求めていく。都道府県でも積極的な対応をお願いしたい」と要請した。
「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」では、「急性期一般入院基本料1」の算定要件である「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合の見直しの議論において、支払側委員と合意に至らず、結果的に公益裁定により、31%となった経緯を説明し、改定後の影響を注視していく考えを示した。
「小児医療、周産期医療、救急医療の充実」に関しては、「救急医療管理加算」について、「今回、点数や対象が拡大し、また、重症度・医療、看護必要度(Ⅱ)としても評価することになったことは大変意義がある」とした上で、「次回改定に向け、必ず調査対象となるため、調査の際にはしっかりとしたエビデンスを記載して頂きたい」と留意を求めた。
「届出」に関しては、日医として新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した対応を求めた結果、例年であれば4月15日前後であった期限を、今回は4月20日(月)までに各厚生局に提出し、同月末日までに受理されれば、4月1日に遡って算定できることになったと説明した。
最後に、総括を行った今村聡副会長は、「診療報酬改定は年末に来年度予算が決まり、2月に中医協で答申され、3月初旬に告示という変わらない流れがある。そのため、4月の施行まで1カ月を切ったところから周知が始まるということもなかなか改善が難しい状況にある中で、今回は更に、新型コロナウイルス感染症への対応など厳しい状況ではあるが、都道府県医師会におかれては、会員の先生方への周知をよろしくお願いしたい」と述べ、協議会は終了となった。
なお、当日の映像・資料は、日医ホームページのメンバーズルームに掲載しているので、ご参照願いたい。
令和2年度診療報酬改定に関する基本的な視点
|
---|