横倉義武会長は5月13日の定例記者会見で、緊急事態宣言の延長から一週間が経過し、14日に開催予定の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議において、緊急事態宣言の一部解除及び再指定に当たっての指標が示される見込みであることを踏まえ、直近の日医の対応について説明した。
横倉会長はまず、新型コロナウイルス感染症が国の内外で未曾有の危機となりつつある中、最も注力すべきは国民の生命と健康を守ることであり、医療現場への支援が最優先課題であると指摘。国を挙げて、あらゆる資源を集中投入し、国民の安心を取り戻すべきであるとした。
その上で、「各医療機関は新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ、並びに拡大防止に向けて最大限の対応を行っているが、同時に新型コロナウイルス感染症患者以外の診療も継続して行わなければならず、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制を、車の両輪として国民の生命と健康を守っていかなければならない」との考えを示した。
更に横倉会長は、福岡県医師会の調査結果を基に4月以降、外来・入院とも大幅に患者数が減少しており、診療所の総点数は最大で約3割減少していることを説明。また、全国医学部長病院長会議の調査によると、2020年度末の各大学病院の損失は約5,000億円にのぼると推計される他、新型コロナウイルス感染症患者の受入病院では、受け入れ1人当たり200万円から400 万円の補助が必要であるとの試算も紹介し、「この状況が続けば、6月以降の医療機関経営に重大で深刻な影響が出る」と危機感を示すとともに5月1日には四病院団体協議会と共に、「新型コロナウイルス感染症における診療体制に関する要望書」を加藤勝信厚生労働大臣に手交したことを報告。(1) 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関の支援、(2)新型コロナウイルス感染症患者以外を診療する地域の通常の医療の確保への支援、(3)病床やホテルなどの確保、(4)PCR検査センターの拡充-等を求めているとした。
また、5月12日に日医は全国知事会と意見交換を行い、国民の気の緩みが起きることを懸念する声があった他、都道府県間の移動に関しては緊急事態宣言における特定警戒地域が残っている限り、なるべく控えるべきとの主張が多く見受けられたことを説明。議論の中では、4月30日に成立した補正予算で設けられた「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の弾力的な運用に加え、1.5兆円の予備費を活用していくことを求めていく意向が示され、また、医療機関の空床補償や危険手当などについても、第2次補正予算で更に手当てするとともに、医療機関については中長期的な支援が必要との認識で一致したことを明らかとした。
その他、当日は、精神疾患患者や介護施設での新型コロナウイルス対策や、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方のご遺体の搬送・葬儀・火葬の実施マニュアルについても意見交換を行ったことを紹介した。
最後に、横倉会長は、同日保険適用された抗原検査についても言及。陽性と判断されれば確定診断されるが、陰性の場合で医師が必要と判断した場合には、改めてPCR検査を行うことになると説明した上で、抗原検査の精度はPCR検査に劣るが、迅速な診断によって、検査体制の充実につながるとして、その活用に期待感を示した。
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