令和2年(2020年)6月20日(土) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
第ⅩⅥ次生命倫理懇談会答申「終末期医療に関するガイドラインの見直しとアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及・啓発」まとまる
羽鳥裕常任理事
第ⅩⅥ次生命倫理懇談会がこのほど、会長諮問「終末期医療に関するガイドラインの見直しとアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及・啓発」に対する答申書を取りまとめ、5月22日に髙久史麿座長(地域医療振興協会長)の代理として、担当の羽鳥裕常任理事から横倉義武会長に提出した。
今回の「終末期医療に関するガイドライン」の見直しは、第Ⅹ次生命倫理懇談会が同ガイドラインを策定してから10余年が経過する中で、同懇談会が積み重ねてきた検討結果を踏まえて行われたものである。
改訂の主な観点は、「ACPの考え方を盛り込むこと」「在宅や介護施設の現場により配慮したガイドラインとなるようにすること」「家族等に対するグリーフ・ケアについて言及すること」であり、また、ACPの考え方は終末期だけに限られないこと等から、改訂ガイドラインの名称を「人生の最終段階における医療・ケアに関するガイドライン」に変更している。
本ガイドラインでは、「人生の最終段階における医療・ケアのあり方」として、「本人が自らの意思を明らかにできるときから、家族等及び医療・ケアチームと繰り返し話し合いを行い、その意思を共有する中で、本人の意思を尊重した医療・ケアを提供することが基本的な考え方であること」等の7項目を挙げた上で、「人生の最終段階における医療・ケアの方針決定の基本的手続き」を示している。
その中では、(1)本人の意思が確認できる場合は、担当医・かかりつけ医等の医療従事者による適切な情報提供と説明に基づく本人の意思を基本とし、それを尊重した上で医療・ケアチームによって決定すること。また、本人の意思は変化し得ることから、繰り返しの話し合いが必要であるとしている。
(2)本人の意思の確認が不可能な状況下において、本人の文書等による事前の意思表示がある場合は、それが本人の意思表示として、なお有効であることを家族等に確認してから、それを基本として医療・ケアチームが判断すること。また、本人の事前の意思表示はないが、本人の意思が推定できる場合(ACPが実践されている場合も含む)は、家族等の承諾を改めて得る中で、本人の意思表示や推定意思を尊重した措置を取るとされている他、本人の意思が推定できない場合は、家族等と十分話し合い、本人にとって最善の措置を講ずるとしている。
家族等が存在しない場合や連絡が取れない場合、意見がまとまらない場合等については、本人にとって最善の利益を確保する観点から、医療・ケアケームが判断するとした。
(3)医療・ケアチームで医療内容の決定が困難な場合や、妥当な医療内容についての合意が得られない場合等は、「可能であれば複数の専門家からなる委員会を設置し、または第三者である専門家の助言を得て合意の形成を進める」としている。
更に、もう一つの諮問事項である、ACPの普及・啓発については、同懇談会におけるヒアリングも踏まえて、①「ACPの普及・啓発」には、かかりつけ医の果たすべき役割が大きく、一定年齢以上の人は、全ての人がかかりつけ医をもっているという状況を実現すべきである②医師会は、行政と協力しつつ、それぞれの地域で、ACPの考え方の普及に努めるべきである③医師会は、ACPの内容や始め方、継続の仕方について、多職種と連携しながら、柔軟性を持った一定の標準的なモデル作成に努める―との三つの提言がなされている。