閉じる

令和2年(2020年)6月11日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

国際保健検討委員会答申「日本の医療の国際貢献」について

 道永麻里常任理事は6月10日の定例記者会見で、国際保健検討委員会の答申について説明した。本答申は、会長諮問「日本の医療の国際貢献」を受けて取りまとめ、6月2日に神馬征峰委員長(東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室教授)より横倉会長に提出されたものである。

 内容は、(1)はじめに、(2)社会的共通資本としての医療、(3)「日本の医療の国際的な貢献」:新型コロナウイルス感染症、(4)日本の医療の国際的な貢献、(5)日本医師会の国際活動、(6)最後に―で構成されており、新型コロナウイルス感染症については、本来検討項目になかったものの、世界的な情勢を踏まえて急きょ盛り込まれた。

 (2)では、世界的な経済学者である宇沢弘文氏によって構築された、「社会的共通資本(自然資本・社会的インフラストラクチャー・制度資本)」の理論に基づき、医療が社会的共通資本(制度資本)であることを解説。社会的共通資本は社会として守るべきものであり、市場原理に委ねて利益を貪る対象としてはならないとし、その基盤を守ってこそ、豊かな社会を安定的に維持できることを強調している。

 (3)では、新型コロナウイルス感染症の危機によって、マスクや人工呼吸器など医療プロダクトの海外依存率の高さや、インフラの立ち遅れなど、日本の医療基盤の脆弱性が露呈したとする一方、地域に密着したかかりつけ医の果たす役割が大きかったことを記している。

 また、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が国民に訴えた「行動変容」の難しさも取り上げ、強制力を持たない中で、人々は「変わるのが嫌なのではない、変わるようにと強いられるのが嫌なのである」と指摘。監視的な要素を取り入れつつも、いやな思いをせずに手洗いや消毒をしてもらうなど、健康に良い行動を広げるための、ヘルスプロモーションの工夫が必要であるとしている。

 (4)では、人口構成や疾病構造の大転換の先頭を歩んでいる日本の経験や医療プロダクトが、世界にとっても有意義であるとし、「国民皆保険」「介護保険制度」「特定健診・特定保健指導」「医師の偏在対策」「母子保健」「災害・救急医療」などの経緯や評価をまとめている。

 同常任理事は、「多方面にわたる議論がなされ、日本の医療には世界と共有できるコンテンツが極めて多いことが確認されたが、そのまま世界で共有されるわけではない。世界各地で異なる文化によって改変され、応用されて初めて成果が期待できる」とした上で、その運用によって得られた知見が日本にフィードバックされ、日本や世界の医療が一層発展していくよう期待を寄せた。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる