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令和2年(2020年)7月20日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

公衆衛生委員会答申「健康格差の縮小に向けた保健事業のあり方」を提言

 羽鳥裕常任理事は、公衆衛生委員会が会長諮問「健康格差の縮小に向けた保健事業のあり方」に対する答申を取りまとめたことを報告した。
 会見には角田徹委員長(東京都医師会副会長)と長谷川敏彦委員(一般社団法人 未来医療研究機構代表理事)も同席し、本答申の内容やポイントを解説した。
 答申は、(1)序 課題の背景、(2)健康格差とは何か、(3)保健事業のあり方について、(4)まとめ―からなっており、巻末には資料として、「平成30年度国民健康・栄養調査結果の概要」等が添付されている。
 (1)では、健康の概念について、前期委員会の答申において、「何らかの疾病を有していても、住み慣れた地域で自立して暮らせること」と定義していることを紹介。
 (2)では、医師会が考える健康格差について、「一定の集団内での不平等で改善可能な健康状態の差」を意味するとし、その最大の要因が経済格差(貧困)であることを指摘。また、教育過程や生活習慣、地域・職場環境、年代も関わるとしている。
 (3)では、保健事業のあり方について、ライフステージ(胎児期、幼少児期、青年・成人期、老年期)に応じた事業を展開する必要性を強調し、学校保健や特定健診の健診データ、介護保険のデータなど、個人をつなぐデータシステムの構築の重要性にも触れている。
 その上で、わが国の現状での進めるべき具体的な保健事業として、子宮頸がんや肝がん等撲滅可能ながんへの対策、喫煙・受動喫煙対策、特定健診・保健指導などへの取り組み方を提案している。
 羽鳥常任理事は、答申には、委員会の議論を踏まえ、「国」「国民」「都道府県・市区町村」「教育現場」「企業」「都道府県・地区医師会」「医師会員」それぞれに意識改革を求める提言を盛り込んだことを説明。国に対しては、経済格差が広がる現代において、富の再分配を実現する社会的な仕組みである国民皆保険制度を堅持するよう求めているとした。
 角田委員長は、子宮頸がんは世界的に罹患率が下がっている一方、日本では上昇しているとして、「HPVワクチンの積極的勧奨の早期再開を求める」とした他、医師会やかかりつけ医には全世代への介入が求められるとし、各地の有効な保健事業を情報共有する重要性について述べた。
 長谷川委員は、健康の概念をまとめた前期の答申と、健康格差の問題についてまとめた今期の答申を一体として捉え、超高齢社会における医学、予防、公衆衛生学のあり方を示したとし、「今、日本は長い医学の歴史の中で大転換期にあり、これから地域医療が非常に重要な時代になる」と強調した。

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