日医は7月10日、経済財政諮問会議(7月8日開催)で示された「経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)(いわゆる「骨太の方針2020」)」(原案)について、日医として懸念のある「薬価調査・薬価改定」「医療機関経営」「オンライン診療」の主に3点に関する見解を取りまとめ、公表した。
下記はその全文である。
「経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)」(原案)について
2020年7月10日
公益社団法人 日本医師会 2020年7月8日、経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)」(いわゆる「骨太の方針2020」)の原案が示されました。 「骨太の方針2020」の原案では、「『経済財政運営と改革の基本方針2019』のうち、本基本方針に記載がない項目についても、引き続き着実に実施する」とあり、過去の「骨太の方針」を踏襲することが明記されていますが、それぞれの課題を検証せずに踏襲することは問題であると考えます。 日本医師会としては、「薬価調査・薬価改定」、「医療機関経営」、「オンライン診療」の主に3点で懸念があり、それぞれについて日本医師会の考え方をご説明いたします。 第1に、薬価調査・薬価改定についてです。 「骨太の方針2019」においても、「『薬価制度の抜本改革に向けた基本方針』に基づき、国民負担の軽減と医療の質の向上に取り組む」と記載されていますが、「骨太の方針2020」の原案では薬価調査の記載はありません。 現在、医薬品の販売側である医薬品メーカーと医薬品卸業者、ならびに、購入側である医療機関と薬局においては、新型コロナウイルス感染症への対応を最優先に総力戦で対応しているところであります。 医薬品卸業者においては、感染防止のため通常とは異なる配送体制を組んでおり、例年と同様の医薬品流通の状態にはありません。そのため、医療機関および薬局においては、医薬品購入に係る価格交渉ができていない状況であり、今後も当面の間、続くものと予想されます。 このように、販売側・購入側ともに薬価調査を実施できる環境にあるとはいえず、仮に調査を実施しても、薬価改定に必要な適切な市場実勢価格を把握することは極めて困難です。また、新型コロナウイルス感染症への対応並びに感染拡大防止に医療現場全体で最大限取り組んでいるこの時期に、医薬品卸や医療機関・薬局に対し、調査に伴う事務作業負担を強いるべきではありません。 中医協においても、薬価調査は新型コロナウイルス感染症下で行うことができないというのが現場の一致した意見となっており、技術的に不可能です。そのような状況での調査結果を公的なデータとして活用すれば、現場との齟齬が生じる懸念があります。 第2に、医療機関経営についてです。 「骨太の方針2020」の原案には「患者が安心して医療を受けられるよう、引き続き、医療機関の経営状況等も把握し、必要な対応を検討し、実施する」と記載されていますが、新型コロナウイルス感染症による医療機関経営への影響は深刻です。来年度の予算編成を待てる状況ではありません。日本医師会も経営実態を把握するためにさまざまな調査を行っています。国としても、速やかに実態把握につとめ、至急追加支援をお願いいたします。 すべての医療機関が地域を面で支えており、新型コロナウイルス感染症に対応していると言っても過言ではありません。一般の患者さんの受け皿があってこそ、医療機関は新型コロナウイルス感染症患者に集中できます。新型コロナウイルス感染症重点医療機関等を支えるためにも、地域を面で支える医療機関への支援も不可欠です。 今後も、受診控え、健診控えは容易に回復しないと見込まれます。地域医療の維持が危うくなっています。このままでは患者さんが安心して医療を受けられるところが失われます。国に対して、すみやかに十分な対応を実施するよう求めます。 第3に、オンライン診療についてです。 「骨太の方針」には今後検証を進め、診察から薬剤の受取までオンラインで完結する仕組みを構築すると記載されています。 今回の新型コロナウイルス感染症拡大下でオンライン診療が時限的・特例的に緩和され、収束までの間、オンライン診療・服薬指導について都道府県単位の協議会が実績評価を行うことになっています。都道府県は医療機関から個別事例を収集することになり、様々な患者の声も上がってくるものと思います。そこで注意したいのは、この間の実績は貴重なエビデンスではあるものの、足下の利用状況や患者満足度は感染リスクと比較してのものであるということです。ただちに平時の対面診療と比較できるわけではありません。患者さんの安全を守るためにも、幅広く実態を調査し、一気に「仕組みを構築」することを目指すのではなく、丁寧な合意形成を図るよう要望します。 今後は「骨太の方針2020」とあわせて、「規制改革実施計画」や「成長戦略実行計画」も閣議決定される予定ですが、日本医師会は政府に対して是々非々の対応で対峙してまいります。 |
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