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令和2年(2020年)7月20日(月) / 日医ニュース

代議員会ブロック代表質問に対する紙面回答(要旨)

 6月28日に予定されていた第148回臨時代議員会が新型コロナウイルス感染症の影響により、中止となったことから、今号では、臨時代議員会で回答する予定であった、各ブロックから前執行部宛てに提出された代表質問への回答の要旨を掲載する。
 なお、回答の全文については、『日医雑誌8月号別冊』をご参照願いたい。

代表質問1 遅れているわが国の医療分野のIT化に対する日医の考えについて

 佐古和廣代議員(北海道)は、①マイナンバーが医療等IDとして使用される可能性②IT化に当たっての費用負担(財源)―に関して、日医の見解を求めた。
 石川広己前常任理事は①について、マイナンバーが医療現場で流通し、究極の個人情報である医療情報と直接結びつくことはあってはならないと強く主張してきたことを改めて説明。「現在は、マイナンバー自体ではなく、公的個人認証などマイナンバー制度のインフラを活用する方向で検討が進んでおり、今後も日医は、マイナンバー自体がIDとして使われることのないよう注視し、国への働き掛けを行っていく」と述べた。
 また、②に関しては、「国策として推進するシステムは国が責任をもって構築すべき」との考えを示した上で、今後、コスト負担のあり方に関しては「誰のために」という視点に立って考え、現場の医師がメリットを十分に享受できるよう、国に求めていくとした。

代表質問2 子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の積極的勧奨の再開に向けて日医は行動を

 日医に対して、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の積極的勧奨の再開に向けた活動を求める永井幸夫代議員(宮城県)の要望に対して、釜萢敏常任理事は、積極的勧奨の再開に向けたこれまでの日医の活動を説明した上で、9価ワクチンが承認される見込みとなったことなどを踏まえ、日医の「予防接種・感染症危機管理対策委員会」で改めて説明用の資料を検討し、適切なタイミングで公表する意向を示すとともに、「この問題の解決のためには、実施主体である自治体レベルで粘り強く住民に対して理解を醸成していく必要がある」と指摘。各自治体における対応の改善についても、国に働き掛けていくとした。
 その上で、「わが国において、子宮頸がんの発生が諸外国に比して著しく多いという事態は何としても避けなければならず、そのためにもHPVワクチンの積極的勧奨を可及的速やかに再開する必要がある」として、引き続きの支援と協力を求めた。

代表質問3 日本医師会「医の倫理綱領」改訂の必要性について

 神村裕子代議員(山形県)から、日医の「医の倫理綱領」について、早急に医療(もしくは医師)の使命に「緩和」の概念を取り入れ、時代の要請に見合った内容に改訂すべきとの指摘があったことに対して、羽鳥裕常任理事は賛意を示した上で、「超高齢多死社会を迎えたわが国においては、これまで以上に患者の意思を十分に尊重しながら、その尊厳ある生き方を実現していくことが必要であり、医師の使命に緩和の概念を取り入れる方向で改訂に向けた検討を進めていくことは大変有意義なことである」と強調。
 まずは、執行部内で改訂の是非について十分な議論を尽くした上で、必要に応じて会内の「会員の倫理・資質向上委員会」に改訂作業を諮問するとともに、同委員会にて改訂案を取りまとめ、代議員会に諮る意向を示した。

代表質問4 高齢者介護における新型コロナウイルス感染症の課題について

 西田伸一代議員(東京都)は、高齢者介護における新型コロナウイルス感染症の課題解決のため、①日医あるいは都道府県医師会から、介護業界に危機管理対策等に関する情報や指針を発信する②在宅医療・介護連携推進事業の枠組みを利用して、在宅介護サービス職種間での補完体制を組めるよう、医師会主導により、日頃から業種を超えた組織づくりを進める―ことを提案した。
 江澤和彦常任理事は①について、「介護現場での感染症対策に資する提案だ」とした上で、「医療従事者の配置が乏しい介護・福祉系施設では、日頃より保健所との相談、協力医療機関、近隣の医療機関、関係団体等の支援を求める必要がある」とし、都道府県・郡市区医師会に対して、情報発信だけでなく、地域の医療介護連携を主導していくことを求めた。
 また、②については、「大変重要な提言であり、在宅医療・介護連携推進事業の見直しに向けても、代議員の指摘を踏まえて、厚生労働省担当部局と協議していきたい」と回答。更に、今年度第2次補正予算において、介護分野における感染防止等取り組み支援事業として、介護事業所・職員からの相談窓口の設置や感染対策マニュアル・研修プログラムの作成が盛り込まれたことを説明し、日医としても協力していく考えを示した。

代表質問5 新型コロナウイルス感染症が拡大している状況でのACPの推進について

 新型コロナウイルス禍のアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の推進に対する日医の方針を問う土谷明男代議員(東京都)からの質問に対して、羽鳥常任理事は、新型コロナウイルス感染症では発症からわずか2週間余りで死に至る症例が報告されていることなどを踏まえ、「人工呼吸器の装着」や、「生命維持治療を施しても回復の見込みがないと判断された場合の延命措置」等、人生の最終段階における医療・ケアについて、あらかじめ本人と家族、医療・ケアチームが繰り返し話し合いを行うACPが、より一層重要になるとした。
 その上で、「新型コロナウイルス禍において、我々の生活様式が変化を余儀なくされる中、本人の尊厳ある生き方を実現していくためにも、この変化をACPについて考えていく一つの大きな機会と捉え、一層の普及・啓発に取り組んでいく」と述べた。

代表質問6 新型コロナウイルス感染症の第2波・第3波・冬季に向けた地域外来・検査センターの効果的な運用について

 地域外来・検査センターが地域の発熱者を診療する外来機能を有することについて、日医の考えを問う笹生正人代議員(神奈川県)の質問には、釜萢常任理事が有効な方策の一つであるとする一方、「その際には、発熱外来機能を有する施設に人が密集することによって、クラスターの発生場所にならないための体制整備が必要になる」と指摘。
 今冬の発熱患者に対する体制については、「地域における新型コロナウイルス感染症の流行状況によるが、まずは各地域で医療機関の感染防止対策整備の現状を把握し、地域に即した発熱患者への初期対応の体制を整えてもらう必要があり、あくまで行政との緊密な連携の下で、取り組みを進めてもらいたい」と述べた。
 また、今年度の第二次補正予算において、地域外来・検査センターに対する更なる財政的支援等が日医の要望により実現したことに触れ、今後の状況も注視しながら、政府に対して強く働き掛けていくとした。

代表質問7 COVID-19への取り組みの課題と今後の医療提供体制の在り方について

 池端幸彦代議員(福井県)は医療機関の現状を踏まえ、政府に資金の支援を求めるよう要望するとともに、これまでの医療費抑制策を見直す日医の決意並びに、今後の地域医療提供体制に対する日医のスタンスについて質した。
 松本吉郎常任理事は政府に対して、地域医療を支えるために、必要な財政上の措置を求めるとした上で、「今こそ、医療費抑制政策下での医療縮小ではなく、不足のない医療提供体制へと方針転換を図るべきであることを政府に対して強く訴えていく」とした。
 医療提供体制に関しては、特にオンライン診療について、「今回の措置は特例中の特例、例外中の例外であり、事態が収まり次第、速やかに通常診療である対面診療に戻し、安全で安心できる医療の本来の姿に戻すべきである」と強調。その他、セルフメディケーションの名を借りた規制改革の動きに対しては厳しく対応するとともに、国民自ら健康に気を付けるセルフケアを一層推進していく考えを示した。

代表質問8 特定健康診査・特定保健指導について

 特定健康診査・特定保健指導による健康増進効果並びに費用対効果に対する日医の見解を問う三輪佳行代議員(岐阜県)の質問には、城守国斗常任理事が、健康増進効果については一定の効果が見られるとする一方、複数回の指導を受けた群での効果やその持続性について疑問が生じる結果も出ていることを紹介。「今後は、特定保健指導の効果的な間隔について、保険者や健診実施機関、保健指導実施機関が活用できるエビデンスを示すことができるように、更なる取り組みが必要であり、引き続き検討会等の場で主張していく」とした。
 費用対効果については、「医療費に対する費用対効果は慎重かつ精緻(せいち)な分析が必要であり、安易な分析結果に基づいた取り組みの見直しは、本事業のあり方に重大な影響を与え、受検者や健診実施機関等へも大きな混乱をもたらす」として、その判断には慎重な検討が必要との考えを示した。
 その上で、今後については、「国民の健康課題の解決につながる制度となるよう、引き続き検討会の場などで日医の考えを主張していく」として、理解を求めた。

代表質問9 肺炎球菌結合型ワクチンの定期接種対象者の拡大について

 小西眞代議員(滋賀県)は肺炎球菌結合型ワクチンに関して、①定期接種の対象に生活習慣病を含む基礎疾患を有する患者を追加する②成人に対して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)を定期接種とする、あるいは、23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)のいずれかを選択可能とする―ことを要求。釜萢常任理事は①について、「ハイリスク者への接種の位置付けは、制度論も含め、全体の枠組みの議論が必要である」とし、今後は予防接種基本方針部会において、積極的に意見を述べるとともに、予防接種施策の充実に向けて厚労省に働き掛けていくとした。
 ②に関しては、PCV13-PPSV23連続接種を定期接種に位置付けるためには、有効性についてのより強いエビデンスが必要になると指摘。PCV13、PPSV23を選択可能にすることに関しても適切なエビデンスを基に、厚労省と議論を行っていくとした。
 その上で、予防接種施策については、「公衆衛生上の視点や科学的根拠はもちろんのこと、ワクチンの供給量や予算確保などの観点も踏まえ、厚労省の会議等において、引き続き予防接種行政の総合的な検討をしていきたい」として、引き続きの支援と協力を求めた。

代表質問10 混迷を深める新専門医制度の抜本的見直しの必要性について

 小野晋司代議員(京都府)は、「かかりつけ医」という選択も含め、将来の選択を希望と誇りを持って行うことができるよう、専門医制度や日本専門医機構のあり方を抜本的に見直す時期に来ているのではないかと指摘したことに関して、羽鳥常任理事は、「新たな制度が定着するには、一定の期間を要することは避けられず、走りながら眼前の課題を解決し、より良い制度に成熟させていくことが現実的な対応である」として理解を求めるとともに、日医としても、引き続き、日本専門医機構が真にオートノミーを発揮し、制度の適切な運用に資するよう、最大限の努力を傾注していくとした。
 また、「かかりつけ医」の重要性に関しては、代議員と同意見であるとし、地域医療を支える機能の向上を目指し、「日医かかりつけ医研修制度」の研修カリキュラム等の充実に更に努めていく考えを示した。
 その上で、専門研修に関しても、各都道府県の地域医療対策協議会の議論が鍵を握っているとして、各都道府県医師会に主導的立場で議論を牽引していくことを求めた。

代表質問11 「オンライン診療」時限的・特例的措置の恒久化への対応について

 沖中芳彦代議員(山口県)の「オンライン診療」に関する今後の日医の対応を問う質問には、松本常任理事が新型コロナウイルス感染症のために認められた情報通信機器を使用した診療について、厚労省医政局により調査・検証が行われることを説明。都道府県医師会に対しては、「この検証は『新型コロナウイルス感染症に係る対策協議会』等で活用されることとなっており、ぜひこの会議で厳密な検証をお願いしたい」と述べた。
 更に、国家戦略特区諮問会議(5月19日に開催)が、この時限的・特例的措置は、感染拡大収束後も効力を有することを確認すると提言したことにも言及。「オンライン診療について、一般的な提言を行う権能がない会議等により、医療の根幹に関わることを決められてしまうのは非常に問題だ」として遺憾の意を示すとともに、その検討に当たっては、「中医協や国のしかるべき検討会において、十分な調査や分析に基づいて行われる必要があり、本来検討を行う場をないがしろにしないことも、改めて国に提言していく」と述べた。

代表質問12 オンライン診療の制限なき拡大と営利を目的とする異業種の参入に反対する

 オンライン診療の制限なき拡大と営利を目的とする異業種の参入に関する釣船崇仁代議員(長崎県)からの質問に対して、松本常任理事は「真に必要とされる場所・場面においてオンライン診療は適切に普及されるべきであり、制限無しに適応範囲を拡大するような政策にはこれからも断固反対していく」と強調。
 異業種の参入に関しては、オンライン診療の制限無き拡大と事業者が主導して診療形態を決めていくかのような勧誘は、医療制度を利己的に利用するものであり、国民の生命と健康を守ることには寄与しないことを国に提言していくとした。
 更に、国家戦略特区諮問会議(5月19日に開催)で、この時限的・特例的措置が、感染拡大収束後も効力を有することを確認すると提言されたことについては、沖中代議員へも答弁したが、オンライン診療について一般的な提言を行う権能はない会議等により、提言が出されたことを問題視し、中医協や国のしかるべき検討会で適切な検討を行うよう、引き続き強く主張していくとした。

代表質問13 新型コロナウイルス感染症にかかる諸問題への対応について

 宮里達也代議員(沖縄県)は、①医師会立看護師養成所へのオンライン構築助成金の創設②各都道府県医師会並びに各郡市、地区医師会へのオンライン構築助成金等の支援③医師会員施設への助成金等、経営支援―を求めた。
 松本常任理事は①について、文部科学大臣及び厚労大臣に「専修学校における遠隔教育環境整備事業」の社団法人・医療機関立学校養成所への拡大を求めたことを報告。現時点での対応としては、内閣府の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の活用が考えられるとして、行政との協議を求めた。
 ②に関しては、新型コロナ時代の新たな日常において、各地域医師会が地域医療に果たす役割を十分に発揮できるよう、検討を進めていくとした。
 また、③については政府に対して、繰り返し、必要な医療機関への支援措置を要望し、6月12日に成立した第二次補正予算にはさまざまな支援策が盛り込まれたことを説明。都道府県医師会に対しては、今後の第2波、第3波に備え、新型コロナウイルス感染症における医療提供体制の構築に向けて、都道府県と十分な協議を行うとともに、主導的な役割を担うことを求めた。

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