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令和2年(2020年)8月5日(水) / 南から北から / 日医ニュース

オペラと私

 皆様はオペラがお好きでしょうか?
 私がオペラと出会ったのは15年くらい前でした。MRさんがオペラ歌手の中丸三千繪さんのアリアのCDを持ってきて下さり、それを聞いた時、深い声の響きとあくまで高く澄んだ高音の美しさに圧倒されました。
 私の母も歌うのが好きで、家事をしながらよく歌っていました。私はオペラのアリアを歌いながら家事ができたら格好いいな~なんて、恥知らずにも不埒(ふらち)なことを思い、声楽の勉強を始めました。
 広いホールにマイク無しで声が通るにはどうすれば良いのか、まず発声練習から始まりました。そしてコンコーネ(音階練習)、日本歌曲、イタリア歌曲、そしてやっと念願のオペラのアリアにたどり着きました。
 私のお気に入りのオペラの一つに、ヴェルディ作曲の「リゴレット」があります。道化師のリゴレットにはジルダという美しい娘がいます。リゴレットは娘を大事に思うあまりに、町にも行かせず屋敷の中で箱入り娘のように育てていました。しかし教会だけは行っており、そこでジルダは、好色なマントヴァ公爵に見初められてしまいます。
 公爵はリゴレットの屋敷に入り込み、自分は貧しい学生だと偽りジルダに言い寄ります。世間知らずのジルダは、すっかり公爵のとりことなってしまい、歌うのが有名なアリア「慕わしい人の名は」です。初めて心をときめかした人を思う純情な乙女心にあふれた歌です。
 物語の結末は、ジルダが公爵の身代わりとなって、父親のリゴレットに殺されるという悲惨なものです。
 ヴェルディはイタリアを代表する作曲家で、「椿姫」や「ナブッコ」「ドン・カルロ」等多くのオペラを作曲しています。重厚な音の連続に圧倒されます。
 もう一つ、ビゼー作曲の「カルメン」はご存知の方が多い人気のオペラです。この中に出てくる女性は二人です。一人はミカエラという田舎に住む、いいなずけの純真な娘、もう一人が、自由奔放で男を誘惑する魅力あふれた女性、カルメンです。
 男性はどうしてもカルメンに心奪われるようですね。オペラの主人公のまじめな青年、ドン・ホセも、カルメンに参ってしまい、破滅への道を突き進んでしまいます。
 このオペラには「闘牛士の歌」や「ハバネラ」など有名な曲がたくさん出てきます。リズミカルで情熱的な音楽は誰をも魅了すると思います。
 声を出すことは肺活量を増やし、肺の健康のためにも良いのではないかと思います。また、曲を暗譜することは年々減り続けているわが脳細胞を叱咤激励(しったげきれい)しての作業であるので、認知症の予防にもなるとひそかに思っています。
 オペラのアリアを一曲歌うと、100メートルを全力疾走したような感じがします。華やかな舞台を支えるのは、アスリートのようなストイックな訓練の積み重ねと思います。私も筋トレをしながら、息を出すという作業を地道に続けて、またその曲がオペラの中でどのような場面で、どのような感情で歌われるのか、少しずつ勉強をしていきたいと思っています。

(一部省略)

長野県 長野医報 第693号より

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