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令和2年(2020年)8月20日(木) / 南から北から / 日医ニュース

支払はカードで。

 昨今、お店での支払い方法もさまざまなものが出てきており、「○○Pay」はポイント還元率が高いものが多く、今話題の中心である。しかしながら、私は題のとおり、「支払いはカードで」をいまだによく使っている。それでも、自分は流行の最先端とはいかないが、真ん中辺りにはいるのではと自負している。なぜなら、日本人は現金支払いしている人が多いからである。
 現金支払いが常である日本人は欧米では専(もっぱ)らスリの対象となっているということは有名であろう。そんな私もスリに遭遇したので是非紹介したい。
 私は同期6人で卒業旅行にフランスとイタリアに行った。そして、そこでのスリの被害総額は全員で13万円にもなった。幾度となくスリ被害にあったが、その中でも、パリの地下鉄のスリ集団の手口は尊敬に値するほど美しいものであった。
 それはヨーロッパ旅行1日目、パリでの観光中での出来事であった。エッフェル塔を見学した帰り、私たちは一度ホテルに戻るために地下鉄に乗車した。そして乗車した駅の次の駅で友達の財布が、"ぽとっ"と地面に落ちた。地下鉄乗車1駅間で友達の財布から日本円10万円がなくなっていた。
 彼らの手口はこうだ。彼らとはアラブ系の女性5人のグループである。スリのタイミングは2回。1回目は地下鉄乗車時である。乗車のタイミングで無理やり一緒に乗り込み、財布を盗むのである。
 そして、2回目がなかなか興味深いのだが、仲間の一人が閉じようとしている電車のドアに挟まったのである。優しい("易しい")私達6人はその挟まっている女性がスリの仲間とは知らず、その女性を助けようとドアを必死に開けようと努力した。そして、そのハプニングの間に残りの4人のスリに財布を取られていたというわけだ。
 無残にも、旅行初日から持参金の多くを奪われた私達であるが、何も対策を取っていなかったわけはない。きちんと"斜め掛けの前掛けのショルダーバッグ"に財布を入れていたのだ。「前掛けなら、スリにあったら絶対に分かる」と思っていたのだ。
 しかし、彼らのファスナーを開ける技術は我々の想像を上回るものであった。そもそも、斜め掛けのショルダーバッグは日本人がよく愛用するものらしく、それをスリの対象としているようだ。
 ただし、現金は盗まれるが、カードは決して盗まれることはなかった。むしろ、カードは名前が書いてあるため、置いていってくれるのだ。
 だから、私は声を大にして言いたい。「支払いはカードで」。

愛媛県 松山市医師会報 第330号より

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