「防災推進国民大会2020」の日本医師会セッション「豪雨災害と医療連携」の収録が9月16日、広島、熊本、岩手各県医師会の協力の下、テレビ会議システムを利用して日本医師会館において開催された。
防災推進国民大会(主催:防災推進国民会議、防災推進協議会、内閣府)は、国民の防災に関する意識向上を目的として、さまざまな省庁、地方自治体、民間企業、団体などが出展、セッションを行い、今回で5回目の開催を迎える。
日本医師会では毎年、本イベントに出展しているが、今年度は当日のセッションを動画収録し、10月3日にWEB開催された防災推進国民大会2020において、シンポジウムセッションとして配信した。
セッションは、長島公之常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで中川俊男会長は、「新型コロナウイルス感染症のような感染症が流行する中で災害が発生した場合には、災害と感染症を表裏一体なものとして、その対応を考えていかねばならない」と指摘。日本医師会としても、都道府県が策定する医療計画の5疾病5事業に「新興・再興感染症対策」を加え、個人用防護具(PPE)の備蓄や病床確保などの体制づくりを引き続き提言していくとした。
また、今回のセッションに関しては、「近年、毎年のように豪雨・台風災害が発生していることを踏まえ、過去に災害対応に尽力された地域の先生方と数々の災害対応に従事された専門家を講師としてお招きした」と説明。本セッションの成果が実り多きものとなることに期待感を示した。
過去の経験を踏まえた課題等を指摘
続いて講演を行った西野繁樹広島県医師会常任理事は、広島県医師会のJMATの仕組みとその役割を紹介するとともに、平成30年7月西日本豪雨災害における活動を報告。その中での気付きとして、JMAT活動を終了するための引き継ぎスキームの必要性や交通手段の確保、医療支援活動用の携行医薬品等の備蓄の問題、大規模な災害に備えた県外からのJMAT受け入れ・活動調整体制の整備など、今後の課題を挙げた。
髙杉啓一郎広島県呉市医師会理事は、平成30年7月西日本豪雨災害における呉市医師会の医療救護活動として、初動期・復旧期・復興期の対応をそれぞれ報告。携帯電話緊急連絡システム、FAXを用いた調査による会員の被災状況確認、給水情報・災害対策本部設置等の会員への迅速な情報提供を行ったことや、総合防災訓練などを通じた呉市関係者の「顔の見える関係」の構築が重要な役割を果たしたことを紹介した。
山田和彦熊本県人吉市医師会副会長/熊本県老人保健施設協会長は、令和2年7月の豪雨による球磨川氾濫等の被災状況を、自身の病院の浸水状況や院内の被災写真と共に紹介。「くまもとメディカルネットワーク」を用いた、人吉市医師会の災害医療活動における主な動向や、診療・調剤・介護に必要な情報の共有化を図ったことなどを報告した他、災害の経験から得た医師会と医療機関の開設者としての立場から、今後の課題をそれぞれ示した。
丹羽浩之広島市役所危機管理室専門監は、、災害時に「生活等」「物資・サービス提供」「情報収集・発信」の三つの拠点となる避難所の役割、災害発生初動期以降の保健医療の留意点を説明した他、避難所の滞在・宿泊者や応急仮設住宅提供・住宅応急修理提供等の対応についても言及した。
櫻井滋日本環境感染学会「災害時感染制御検討委員会」委員長/岩手医科大学附属病院感染制御部長は、医療チームや避難所に求められる感染制御策として、災害時における感染リスクや、避難所における新型コロナウイルス感染症の感染を防ぐための水際作戦と臨床パターンの他、避難所感染症制御の条件を概説。その上で、都道府県医師会等がJMATを派遣する際に求められる感染対策や、感染対策の観点から平時より留意すべき事項について指摘した。
その後のディスカッションでは、「豪雨災害ならではの留意点や医療連携のアドバイス」「医師会に求められる具体的な感染防止策」などについて、活発な意見交換が行われた。
総括を行った猪口雄二副会長は、「今回のセッションで、平時から『知ること』『備えること』『訓練すること』を続けていく『防災』の重要性を改めて認識できた」とその成果を強調するとともに、今年6月に日本医師会で作成し、ホームページにも掲載している「新型コロナウイルス感染症時代の避難所マニュアル」の活用を求めた。
なお、本セッションの動画は、「ぼうさいこくたい2020」オンライン特設ページに来年3月頃までアーカイブとして掲載予定。