中川俊男会長は11月25日の定例記者会見で、新規感染者数の増加傾向が更に強まり各地で過去最多の水準となる中で、医療機関における新型コロナウイルス感染症の受け入れ可能病床は満床の状態にあるとして危機意識を示すとともに、国が公表する病床占有率と現場感覚には著しいずれがあるとしてその見直しを求めた。
同会長はまず、先週の会見で呼び掛けた「秋の我慢の3連休」への協力に対する謝意を示した上で、「現在、全国各地で医療提供体制が崩壊の危機に直面しているが、2週間前には予想できなかった事態である。新規感染者数の増加傾向が更に強まり、各地で過去最多の水準となっている」と強調。特に北海道、首都圏、関西圏、中部圏を中心に深刻な状況であるとして、札幌市で起きた病院や福祉施設でのクラスターの事例や、搬送で医療機関が受け入れ困難となっている事例を紹介した。
国が公表する病床占有率ではまだ余裕があるように見えることに関しては、「この指標は、『即応病床』と『準備病床』を合わせた『確保病床』を分母として算出しているが、即座に患者を受け入れられる病床を分母とすべき。現場感覚とは著しいずれがある」と指摘。現実には、医療スタッフの不足もあり、新型コロナウイルス感染症の受け入れ可能病床は満床の状態で、脳卒中や心筋梗塞など他の疾患の患者の受け入れが困難になりつつあるとの認識を示した。
その上で中川会長は、これ以上感染者が急増すれば、新型コロナウイルス感染症の病床確保とそれ以外の疾病のための病床確保は両立できないと指摘。「今、新たな対策を講じなければ、感染拡大が全国的に波及する恐れがある。都道府県知事には国と調整の上、2週間後の状況を想定しながら、現在の地域の感染ステージを的確に判断し、必要な措置をとって頂きたい」と要請した。
一方、国民に対しては、再び緊急事態宣言のような日常生活への強い制限を避けるため、改めて「人との距離」「マスク着用」「手洗い・手指消毒」「換気の励行」などの基本的な感染防止対策の徹底を求め、新型コロナウイルス感染症への対応に緩みをもたらさないよう注意を促した。
また、感染対策と社会・経済活動のあり方にも言及し、「重要なことは、バランスを取りながら両立させること。医療の専門家の立場としては、国民の生命と健康を守ることが第一であり、万全の感染予防対策が結果的には一番の経済対策になるものと考えている」との見解を述べた。
記者との質疑応答では、「Go To キャンペーン」等の経済政策には肯定的な姿勢を示す一方、それが予防対策への意識の緩みをもたらす側面もあるとして、医療の専門家集団として引き続き粘り強く注意喚起していく考えを示した。
問い合わせ先
日本医師会健康医療第2課 TEL:03‐3946‐2121(代)