中川俊男会長は12月9日の定例記者会見で、現在、政府・与党間で議論が大詰めを迎えている後期高齢者の患者負担割合のあり方について、日本医師会の考え方を改めて説明し、理解を求めた。
中川会長はまず、後期高齢者の1人当たりの医療費は高く、年収に占める患者一部負担の割合も、既に十分高くなっているため、患者一部負担割合を引き上げることにより、受診控えが生じるおそれがあると指摘。「収入や所得に応じた負担である応能負担は、本来は共助である保険料及び公助である税で求めるべき」と述べるとともに、患者一部負担での応能負担は限定的にすべきとした。
また、後期高齢者について、「現役並み所得者は3割負担、それ以外は1割負担とされていて、その間に新たな負担割合をつくるとしても法改正が必要なことから、国民の納得と合意が絶対に必要になる」と強調。後期高齢者の患者負担割合については、「保険料や税負担、収入や所得、高額療養費の財政面、そして、高齢者の生活や心身の状態なども十分考慮して、厚生労働省の関係審議会で丁寧な議論を行った上で決定されるべきものである」とした。
更に、中川会長は新型コロナウイルス感染症禍での受診控えにより、国民の健康へ影響が懸念される中での後期高齢者の患者負担割合引き上げは、「更なる受診控えを生じさせかねない政策であり、高齢者に追い打ちをかけるべきではない」との考えを示した。
その他、中川会長は、(1) 日医総研ワーキングペーパー「第7回 日本の医療に関する意識調査」(2020年10月発行)によると、具合が悪いにもかかわらず、経済的理由で必要な医療を受けなかった人の割合は全体で4.5%であるが、所得が200万円未満の人に限ってみるとその割合が7.8%となる、(2)12月2日に開催された国民医療推進協議会総会において、後期高齢者の患者負担割合について、慎重な対応を求める決議が採択された―こと等を紹介。
「新型コロナウイルス感染症の感染者が急増し、医療提供体制が崩壊の危機にさらされている状況下で、後期高齢者の患者負担割合を倍にするための議論を行うこと自体がそもそも問題であり、引き上げの範囲は限定的なものにとどめるべき」との認識を示すとともに、日本医師会として、後期高齢者を含めた我が国の医療、すなわち公的医療保険による国民皆保険を守り抜く決意を表明した。
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