日医定例記者会見 2月25日・3月3日
今村聡副会長は、現在、インターネットやドラッグストアで販売されている、唾液による抗原検査キットについて、日本医師会の見解を述べた。
同副会長はまず、新型コロナウイルス感染症を始めとする感染症における公衆衛生学的な対策として、「必要な方に十分な検査が行われることが重要であることは論をまたない」とするとともに、検査を実施することで、速やかに医療や行政につながることも可能になるとして、その意義を強調。
このような観点から、2020年8月末に、政府は新型コロナウイルス感染症のPCR検査能力を、1日当たり20万件まで拡充すると表明し、本年2月4日時点で1日当たり15万件まで拡充されていることを評価した上で、この拡充を実現するために尽力している国、自治体、多くの医療機関や関係者に感謝の意を表明した。
また、民間企業によるPCR検査能力は1日当たり7万件に上るとの報道に触れ、官民の連携が進めば、公的検査の補完につながる可能性を認めつつ、「民間検査の精度がしっかり維持されるだけでなく、感染まん延防止の観点から、感染症法(感染症の予防及び感染症法の患者に対する医療に関する法律)下での対応をしっかりやってもらうことが重要」との認識を示した。
更に、2月3日に通常国会で感染症法が改正されたことにより、民間検査事業者についても協力要請の対象となったことにも触れ、民間検査事業者は検査と感染症法の意義を十分に理解して欲しいとした。
その一方で、現在、感染症の検査を目的としているものの、医療用ではない(薬事承認されていない)研究用の抗原検査キットが、インターネットやドラッグストアで販売されていることを危惧。唾液を用いて行う検査キットが薬事承認を経ずに市販されており、購入者がこれにより感染の判断ができると誤認する可能性について、公衆衛生学的にも、感染対策としても極めて大きな問題との認識を示した上で、以下の4点を日本医師会の見解として表明した。
(1)医療に供する、薬事承認された体外診断薬を販売するものに対しては、医療機関以外へ販売しないよう、厚生労働省による指導を徹底すべき
(2)感染症法の適用範囲については、薬事承認の有無を問わず、感染症に関連した検査用製品の販売まで適用対象を拡大すべき
(3)こうした法的な対応が取られるまでの間は、感染症法第16条の2の理念を踏まえ、感染症に係る研究資材を製造販売している企業は、販売先及び販売数を厚労省に対して報告を行う
(4)こうした製品を現に使用している者は、症状の有無、使用した結果にかかわらず医療機関に相談する
最後に、同副会長は、グローバル化が進んだ現代社会では、感染症は一国の問題ではなく世界全体の問題であり、必要な時に必要な検査が受けられ、しっかりとした医療につなげられる仕組みが国内外で求められていると指摘。日本医師会は、今後も日本国内において体制構築に引き続き尽力していくとの決意を表明し、多くの関係者に理解と協力を求めた。
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