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令和3年(2021年)4月5日(月) / 日医ニュース

令和3年度の介護報酬改定内容について説明

令和3年度の介護報酬改定内容について説明

令和3年度の介護報酬改定内容について説明

 都道府県医師会介護保険担当理事連絡協議会が3月10日、日本医師会館で、WEB会議システムを用いて開催され、江澤和彦常任理事が令和3年度の介護報酬改定の内容について資料を基に説明した。

 冒頭のビデオメッセージによるあいさつで中川俊男会長は、まず、都道府県・郡市区医師会に向け、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対応に対する尽力に感謝の意を表明した。
 その上で、令和3年度の介護報酬改定率が、新型コロナ対応の特例的評価分0・05%を含むプラス0・7%に決定されたことに触れ、「今回のプラス改定が、尊厳の保持や、自立支援・重度化防止の取り組み等、わが国の社会保障制度充実のために、有効に活用されることを期待する」と述べるとともに、地域包括ケアシステムを構築し、国民が住み慣れた地域で質の高い医療・介護サービスを受けられるよう、日本医師会として、社会保障制度の充実に努めていくと強調した。
 また、地域包括ケアシステムに関しては、「認知症の対応力向上、看取りへの対応の充実、医療と介護の連携が推進される中で、感染症対策、近年頻発する災害への対応について、地域住民も含めた一層の連携強化が重要となる」として、かかりつけ医や地域の医師会が、医療・介護における多職種連携のリーダーとなり、関わっていくことに期待を寄せた。
 続いて、江澤常任理事が令和3年度介護報酬改定内容等について説明を行った。
 同常任理事は、まず、令和2年度の介護事業経営実態調査結果に触れ、令和元年度決算の介護サービス収支差率が、平成28年度決算時と比してマイナス0・9%の2・4%となったことを報告。収支差の悪化原因については、介護人材の確保が課題となる中、人件費が増加していることが一因として考えられるとした上で、介護職の適切な賃金に見合った介護報酬の設定が、喫緊かつ中長期的な重要課題であると指摘した。
 次に、介護給付費分科会で報告された、「新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業(速報)①」(令和2年10月14~21日実施)の内容について解説。
 通所介護、通所リハビリテーションといった通所系サービスにおいて、利用者がサービス利用を控える傾向が見られたために経営への影響が大きく、保険給付額においても、昨年5月の対前年度同月比の減少幅が最大で、特に通所リハビリテーションにおいて大きな落ち込みが見られたとした。

「尊厳の保持」「自立支援」を着実に進める改定と評価

 改定に当たっては新型コロナや大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、(1)感染症や災害への対応力強化、(2)地域包括ケアシステムの推進、(3)自立支援・重度化防止の取組の推進、(4)介護人材の確保・介護現場の革新、(5)制度の安定性・持続可能性の確保―といった柱が設定されたことを説明。特に今回は(3)に力点が置かれたことについては、介護保険制度の2大目的である「尊厳の保持」と「自立支援」を着実に進めるものとして、評価する考えを示した。
 (1)では、全ての介護サービス事業者に感染症対策のための委員会の開催や指針の整備、訓練(シミュレーション)の実施等の他、感染症と災害を想定したBCP(業務継続計画)作成が義務付けられたことに言及。「現在コロナ禍にあることや近年多発する災害を考慮すると、速やかに取り組むべきである」とした。
 (2)では、認知症への対応力向上に向けた取り組みの推進として、無資格者に認知症介護基礎研修を受講することが義務付けられたことを紹介。看取りへの対応の充実については、基本報酬や看取りに係る加算の算定要件に、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みを行うことが求められるだけでなく、施設系サービスでは、サービス提供に当たり、本人の意志を尊重した医療ケアの方針決定に対する支援が努力義務として定められたことを説明した。
 また、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設)における退所者の状況として、死亡による退所の割合が増えていることに触れ、尊厳を最期まで手厚く保障した看取りが、今後ますます重要になっていくとした。
 (3)では、まず、令和3年度から「CHASE」と「VISIT」が統一され、「LIFE(科学的介護情報システム)」として一体的に運用されることを報告。これにより、訪問系サービス、居宅介護支援事業所、介護療養型医療施設を除く全ての介護サービスが、「LIFE」にデータ提出され、フィードバックされることで、全国平均から見た施設の状況が把握可能となり、PDCAを回すことも可能になるとした。
 また、自立支援・重度化防止の取り組みの推進として、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する各種計画書(リハビリテーション計画書、栄養ケア計画書、口腔機能向上サービスの管理指導計画・実施記録)に関して、重複する項目の整理と、それぞれの実施計画を一体的に記入できる様式が作成されることになったことに触れ、「これを評価したい」と述べた。
 更に、ケアの質の向上に向けて、尊厳の保持、本人を尊重した個別ケア、寝たきり防止、自立した生活の支援を着眼点とした「自立支援促進加算」が新設されたことを高く評価した。
 (4)では、介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取り組みの推進として、「特定処遇改善加算」の要件を、配分ルールを柔軟化し、経験・技能のある介護職員は、その他の介護職員より賃金水準を「高くする」よう見直しを行った他、「サービス提供体制強化加算」については、勤続年数の長い介護福祉士が多く在籍する事業者を評価する新たな区分が設けられたことなどを説明。
 更に(5)では、区分支給限度基準額の計算方法の一部見直しや、リハビリテーション専門職による訪問看護の評価・提供回数等の見直し等、評価の適正化・重点化と、報酬体系の簡素化が行われることを報告した。
 最後に、同常任理事は、介護サービス事業者が、本来の生活を送ることができるように利用者を援助し、その尊厳が保障されるよう努めることが重要になると指摘。「新型コロナが収束した後も、ICTを活用した生活の質の向上は、介護現場でもどんどん取り入れていくべきであるが、介護の2大目的である『尊厳の保持』と『自立支援』への取り組みは、未来永劫(えいごう)不変であり、維持していかなければならない。今回の改定はその意味でも非常に有意義である」と改めて評価する考えを示し、松原謙二副会長の閉会のあいさつをもって、協議会は終了となった。
 なお、当日の映像は日本医師会ホームページ「メンバーズルーム」に掲載されているので、ぜひご覧頂きたい。

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