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令和3年(2021年)4月20日(火) / 南から北から / 日医ニュース

"小泉純一郎"で得をしたこと

 昔、元総理がまだ売り出し中の厚生大臣であった頃、年賀状が余ったので余白に「同姓同名の誼(よしみ)でよろしく」と書いて、住所が分からず「東京都・衆議員宿舎」にしてダメモトで投函した。
 正月早々、秋田の代議士秘書を通して「年賀状有難う」とのメッセージが届けられ、この対応の速さに一層応援する気になった。
 当時、長男も「まるで親父から医師免許証をもらったようだ」と喜んでいた。
 千秋公園直下の有名割烹の主人で、私にはゴルフ仲間・飲み友達だった人の葬儀。気さくな人柄を反映して、祭壇には弔電の山がいくつもあった。県内の有名人数名の弔電披露の後、一番最後に私のが読まれた。
 「オセワニナリマシタ。アリガトウゴザイマシタ。アキタシ コイズミジュンイチロウ」
 選ばれたのは元総理のネームバリューのお陰である。
 今でも余徳は続いている。妻が盆暮れの贈答品売り場で送り主の名前を書くと、受付嬢のほとんどが「立派な名前ですこと......」と言ってくれるとのこと。
 私にしても、名刺交換の時、相手の方はチラッと名前に目が行くと何となく好意な雰囲気を感ずる。名前がとても大きな潤滑油になっている。たまに、名刺を無表情・無反応で受け取られると心の中で「この変わり者」や「この頑固者」と思ってしまう。
 私が患者の立場で他の医療機関の待合室に居るとフルネームで呼ばれる時がある。半数以上の人の視線集中を感じ、何とも言えない気分になる。
 過日も、骨密度検査の申込用紙を記入してたら受付子は「おおッ、すごい名前ですね」と言ってくれた。″すごい"に気を良くして骨密度52の結果もどこへやら、軽い気分で帰路に着いた。
 俗に言えば、名前の「賞味期限」は切れていない。
 得ばかりでもない。私が、万引き・詐欺・婦女暴行......果ては交通事故に至るまで、何か罪を犯そうものなら、有名人と同じ名前プラス医師の肩書きのせいでたちまちマスコミの餌食になってしまうと自戒して、この25年近く、やむを得ず身の周りを奇麗にしている。

(一部省略)

秋田県 秋田医報 No.1579より

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