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令和3年(2021年)5月5日(水) / 日医ニュース / 解説コーナー

国民皆保険を守り抜く

国民皆保険を守り抜く

国民皆保険を守り抜く

 日本医師連盟の推薦議員として初当選を果たし、現在、さまざまな場面で活躍されている自見はな子参議院議員。
 今回は、自見議員に特別インタビューを行い、改めて政治家になった経緯や今一番力を入れていることなどについて語ってもらった。2回に分けて掲載していく予定であるが、今回はその第1回目となる。

Q 改めて国会議員を志された理由を教えて下さい。

A 私が小学2年生の時、九州大学第一内科で勤務医をしていた父、自見庄三郎が政治家になりました。そんな父の姿を間近で見て育ち、大きな期待と責任を担う政治家の仕事の大変さを、家族として子どもながらに身をもって実感していましたが、直接的なきっかけとなったのは、私自身が医師になってからの出来事でした。
 小児科医として病院で当直業務をしていた時、夜中に患者さんのご家族から1本の電話を受けました。電話を掛けてきたのは、ハワイに住む患者のお母さんでした。日本でホームステイ中の小学生の娘さんが、体調を崩しているという内容で、詳しくお話を聞くと胃腸炎を疑わせる症状であったため、私は通常の診察のように水分補給の方法や注意すべき症状、こういう時はすぐに医療機関へ受診して下さいと説明をしました。
 すると、そのお母さんは「あなたは医師ですか?」と聞いてこられたので、「そうですよ」と私が答えると「私の国では、私が入っているタイプの民間医療保険だと、夜間の受診はもちろん、医師への電話相談もできないのです。日本は何て素晴らしい国なんでしょう」と言って、電話越しに大泣きされてしまいました。安堵(あんど)から来た涙でした。
 私はそのお母さんのお話にとても衝撃を受けました。日本で医師として働いていると、患者さんの経済状況を理由に、医療を提供できるかどうかを医師が選択することはありません。もし、日本がそのような状況になったら、私は医師を続けることはできないな、と素直に感じました。国民皆保険は、私達医療者のためにもあるのだと思いました。
 父の政治人生を見ている中で、大切な制度や財源は政治によってしか守られないこともあると学んでいました。
 そして、この1本の電話をきっかけに、全ての国民を公的医療保険で保障する国民皆保険は、これからの日本で絶対に守っていかなければならない、次の世代にも受け継いでいかなければならないという気持ちを、私自身強く持つようになりました。
 1961年にスタートした「国民皆保険制度」は、保険証1枚で「誰でも」「いつでも」「どこでも」平等に必要な保険医療を受けられる体制です。この仕組みにより、日本は世界でもトップレベルの平均寿命、健康寿命を誇る国となりました。
 実はこのシステムは、世界的に見ても珍しいものであり、高い健康水準を実現できると海外からも高評価を受けています。
 私は現役医師という立場の下、この思いを実現しようと、日本医師連盟が行った参議院議員選挙の候補者公募に応募させて頂き、さまざまなご縁の中で2016年に行われた参議院議員選挙に立候補させて頂き、当選することができました。
 皆様方の温かいご支援に改めて感謝申し上げたいと思います。

Q 国会議員として、今、一番力を入れていることは何ですか?

A210505g2.jpg 赤ちゃんからお年寄りまで、誰もが安心して医療・介護・福祉を受けられるよう、全ての課題に全力投球の日々を送っておりますが、「最近は特に」ということで一つ挙げるとすれば、「こども庁」の創設に向けた活動があります。
 超党派の議員連盟事務局長として議員立法に取り組み、日本医師会の先生方からも熱烈なご支援を頂き、2018年に成育基本法が成立しましたが、本年2月には基本方針が閣議決定され、いよいよ具体的な政策が動き始めます。
 成育基本法では、当初から行政組織のあり方についても問題意識を持ち、附則で「政府は、成育医療等の提供に関する施策を総合的に推進するための行政組織の在り方等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と規定しています。
 医療や教育、児童虐待や青少年の自殺、学校でのいじめなど、子ども達を取り巻くさまざまな問題に対処し、健やかな成長発達を妊娠期から切れ目なく支援する施策を総合的に進めていく上で、行政の縦割りの解消は大きな課題です。
 現在は複数の省庁に所管が分かれている医療・保健・療育・教育・福祉を切れ目なく届けることができるよう、これらを一元的に所管する「こども庁」の創設を目指して、議員勉強会「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」の共同事務局を山田太郎参議院議員と本年2月2日に立ち上げ、計8回の勉強会を開催しました。
 勉強会と並行してWEBアンケートも実施しましたが、ありがたいことに1万7458名から計4万8052件の意見が寄せられました。勉強会での議論と、WEBアンケートで寄せられた意見を踏まえて3月16日には政府への提言を取りまとめましたが、その中では、①専任の所管大臣によって率いられる「こども庁」の創設②子ども・子育て関係支出の対GDP比を倍増③行政の縦割りを克服し、府省庁横断の一貫性を確保するため、「こども庁」には総合調整、政策立案、政策遂行の強い権限をもたせる―を柱に、抜本的な少子化対策のためにも、子どもの医療・保健・療育・福祉・教育を一元的に所管する「こども庁」創設を求めています。
 4月1日には、菅義偉内閣総理大臣に提言の申し入れを行いました。菅総理からは、3月21日の第88回自民党大会で党総裁として「私自身何としても進めたいのが未来を担う子ども達のための政策です。これはまさに政治の役割だと思っています。子どもが生まれ、育ち、学んでいく。その一つ一つに光を当てて前に進めていきます」と演説した際の原稿を頂き、「こども庁」実現について強い決意をお示し頂きました。そして、同日中には自民党内の総裁直属機関で議論を進めることが決まりました。
 4月5日の参議院決算委員会で質問に立った際にも、改めて菅総理に「こども庁」創設に向けた決意を伺いました。菅総理からは、国の宝である子ども達の政策を進めていくことは政治の役割であるとの認識を再度お示し頂き、「行政の縦割りを打破し、組織のあり方をもう一度抜本的に考えることが必要。まずは党内において、日本の未来という視点から更に検討を進めて頂きたい」とした上で、本件を「極めて重く受け止めている。しっかり対応して参りたい」と大変力強い答弁を頂きました。
 更に、4月13日には自民党内に総裁直属の『「こども・若者」輝く未来創造本部』が立ち上がり、幹事を拝命しました。「こども庁」創設に向け、大きな一歩を踏み出せたと感じており、引き続き全力で取り組んで参ります。

Q 新型コロナウイルス感染症はいまだに収束の兆しが見られません。コロナ対応と言えば厚生労働大臣政務官として、横浜の停泊中のクルーズ船にも乗り込まれましたが、その際のご苦労などをお聞かせ下さい。

A210505g3.jpg 2020年2月10日から3月1日まで「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内で活動しました。約3700人の乗員・乗客がいましたが、そのうち約2000人は基礎疾患があり、50カ国以上の外国籍の方がいるという構成でした。
 乗員・乗客を救済する一方で、国内への感染拡大を防ぐという難しいミッションでしたが、結果として同船由来のクラスターが国内では発生していないとの国立感染症研究所からの報告にもあるとおり、水際対策としては目的を果たすことができたと考えています。
 これは、乗員・乗客の協力と、JMAT、DMAT、PMAT、AMAT、自衛隊、感染症の専門家など、多くの関係者のご尽力の賜物(たまもの)と考えています。下船の条件は、14日間の個室隔離、PCR検査の陰性、そして医師による健康確認でした。約3000人の健康確認を行って下さったのは、まさにJMATの先生方でした。無事にオペレーションを終えられましたこと、医師会の先生方への感謝の念に堪えません。
210505g4.jpg このオペレーションでは、感染防護はもちろん、大規模なPCR検査センターの検査体制や検体管理、厚労省と現場の連絡調整、患者搬送等、全てが前例のない事柄であり、その後の感染防止対策を考える上で非常に多くの教訓が得られました。
 例えば、船の中では乗員・乗客の健康状態などについて、毎日名簿をめくりながら手作業で集計して必要な医療資源を投入することに多大な労力を要したため、情報を一元的に把握して共有することの重要性を痛感しました。
 この教訓から、厚生労働省と内閣官房IT室の連携により、全国の医療機関(約8000病院)から病院の稼働状況、病床やスタッフの状況、医療機器・資材の確保状況等を一元的に把握して支援につなげる「新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム」(G―MIS)を2020年4月に立ち上げ、現在では医療機器・資材の配布支援等が可能になっています。
 これにより、保健所と医療機関が電話等で報告・照会を行うなどの負担軽減にもなっており、国民は自分が住む地域の病院の稼働状況を、政府のCIOポータルサイトから閲覧することができ、不安の解消にもつながっています。
 更に「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」(HER―SYS)も立ち上げ、患者本人や医療機関、保健所等が入力した情報(PCR検査件数、陽性件数、入退院患者数、重症者数、宿泊施設の数、健康状態など)を集計し、国や都道府県でも情報共有が可能になりました。
 このような新型コロナのワンクラウド化された患者サマリーは、世界でも類を見ないものと考えています。
 学校現場においても、長年の学校保健会の取り組みに新型コロナを加え、全国の状況を把握できるようにスーパーIDも発行しました。各学校が日々入力する新型コロナを加えた欠席情報を感染情報システムに反映できるよう、感染症情報システムと校務支援システムを連携させることによって、国が集団感染の状況を早期に把握できるようになりました。
 こうしたICTを用いた取り組みの発想は、海外との往来再開に向けて、現在政府が構築中の「統合型健康情報管理システム(仮称)」(専用システムなどで入国審査や入国後の健康管理に関する情報に加えて、変異株やワクチンに関する情報も一元的に把握し、水際の感染対策につなげるシステム)にもつながりました。
 その他にも、クルーズ船乗客の個室隔離は「Stay Home」の、乗員が感染予防を講じた上で働くことは「新しい生活様式」のそれぞれのモデルにもなりました。
 新型コロナウイルス感染症対策はいまだ予断を許さない情勢ですが、対策を進める上で「ダイヤモンド・プリンセス号」での経験から得られた知見は非常に大きいと思っています。これらの知見を生かしつつ、ワクチン等の安定供給や医療機関への更なる財政支援を含め、引き続き全力で取り組んで参ります。

自見(じみ) はな子 参議院議員
1976年、福岡県出身。筑波大学第三学群国際関係学類卒業後、東海大学医学部に入学し、平成16年に卒業。その後、同大学医学部附属病院等の勤務を経て、日本医師連盟の推薦により、平成28年に行われた第24回参議院議員選挙(全国比例区)に立候補し、初当選を果たす。令和元年9月には第4次安倍第2次改造内閣発足時に厚生労働大臣政務官を務めた。

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