新型コロナウイルスの脅威が拡大し始めた昨年の3月以降、恐らく多くの先生方と同様に旅行を控え、外食も極力避けて週末を悶々(もんもん)と過ごすしかありませんでした。
そんな最中、小学生の息子と近くの川べりを散歩していたところ、浅瀬をメダカが数匹泳いでいるのが目に入りました。息子に少しは父親のいいところを見せてやろうと家へ攩網(たもあみ)を取りに帰り、「えい」と一振り。幸運にも捕獲でき、小さな水槽で飼育することにしました。
その後間もなく息子はメダカへの興味を失いましたので、主に私が水替えと餌やりをしていたところ、1匹のメダカがお腹に卵を付けているのを発見しました。心躍りまして、YouTubeで卵の孵(かえ)し方を研究し、産卵藻などメダカ飼育グッズを買いあさり、何とか孵化(ふか)に成功。その後は要領が分かりましたので、あっという間に50匹を超えるほどになり、私はいつの間にかメダカ飼育の虜(とりこ)になってしまったようです。
更に一つ水槽を買い足しましたが、それでも飼いきれなくなったので、増えすぎた稚魚や卵を近所の方や当院の職員へ分けることにしました。この生き物は繁殖行動が実にダイナミックで、水槽の中を活発に泳ぎ回り、どんどん増えていくところが非常に面白いと思います。
ある朝、自宅玄関前で水槽の掃除と水替えをしていたところ、見知らぬ方が近付いていらして、「先生メダカされるんですか? 実は私もかれこれ5年メダカ飼ってましてね」と話し掛けてこられました。「先生」と呼ばれたので、きっと当院の患者さんでしょう。しかし、「ゴルフされるんですか?」など趣味を問う言葉の使い方はよく聞いたことがありますが、「メダカされるんですか?」という用法は聞いたことがありません。そんなジャンルの趣味があるのですね。私の知らないうちに、趣味としてはやり始めたのでしょうか。確かに、コロナ時代にはよく合う趣味なのかも知れません。天気が悪く、家に閉じこもりがちな日々には水槽を眺めていると自然と心が癒される気がいたします。
最近は川で捕獲した黒メダカと購入した白メダカを交雑させ、その孫世代から白、黄、青、黒と色とりどりの個体が生まれてくるのを楽しんで見ています。卵ご希望の方はご一報下さい。
(一部省略)
石川県 金沢市医師会だより 第577号より