中川俊男会長は8月25日の定例記者会見で、(1)感染状況と緊急事態宣言、(2)入院待機患者の急増への対応、(3)学校の対応―について、日本医師会の見解も交えて説明を行った。
(1)では、8月25日開催の基本的対処方針分科会で緊急事態宣言の対象区域に北海道、宮城県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、岡山県、広島県の8道県が、まん延防止等重点措置の対象区域に高知県、佐賀県、長崎県、宮崎県の4県がそれぞれ追加されることが了承されたことを報告。「東京パラリンピック開催中でも、緊急事態宣言の効果を発揮するためには、全国一律の発令が求められる」と改めて主張した。
8月23日に東京都内のすべての医療機関と医育機関等に対して、田村憲久厚生労働大臣と小池百合子東京都知事の連名により、改正感染症法に基づく協力要請が出されたことに対しては、「すべての医療機関が有事に一致団結して立ち向かうことは当然」とし、8月17日に全国の医師会員一人ひとりに新型コロナウイルス感染症の爆発的感染拡大に対するより一層の協力を求める書簡を直接送ったことを説明するとともに、日本医師会としても、この有事を乗り切るため、総力を挙げて対応していくとした。
中川会長はまた、厚労省と東京都が今回要請に至った背景に、病床逼迫と言いながら8月24日時点での東京都の資料では確保病床の69%しか使用されていないことが挙げられていることにも触れ、「どの場所にどのくらい病床が確保されているか、病床利用率がどのように把握されているかを丁寧に分析すべきである」とするとともに、都内の大学病院、基幹病院、公的、私的病院などすべての医療機関を公平に検証、評価することを求めた。
(2)では、感染者数の急増に伴い、自宅療養、入院待機の患者が急増し、一定の割合で重症者も増加していることを踏まえ、本来ならば入院が必要な状態の患者には、一定の治療が行える施設が必要だと強調。その解決策として、「地域の感染状況や医療資源に応じて、自宅療養と宿泊療養との適切な組み合わせが重要になる」とした他、「感染拡大地域では酸素ステーションや入院待機ステーションの整備も急務である」と述べた。
更に、日本医師会としても全国の都道府県医師会・郡市区医師会の協力の下に、昨年4月7日以来、COVIT-19JMATを延べ66,732名派遣していることを報告。8月7日からは、「かながわ緊急酸素投与センター」への派遣も開始し、これまでに医師21名、看護師6名が出務しているとした。
自宅待機者等に対する支援を目的とした経団連との取り組みについては、経団連に全国の加盟企業に対して、研修施設や保養所等を提供してもらうよう協力を求めていることを説明。今後は、その結果を踏まえて、提供可能な施設の情報を、日本医師会から都道府県医師会に連絡するとともに、その際に重要となる医師、看護師の確保に関しては日本医師会から病院団体、日本看護協会に協力を求めていると述べた。
(3)では、デルタ株の流行による20歳未満の感染者が急増していることに危機感を示し、文部科学省の学校保健所管部署に対して状況の把握と具体的な手立てを求めた結果、文科省から「早急に対応する」と回答を得たことを明らかにした。
また、新学期が開始し、学校活動や部活動等によってクラスターが発生することに懸念を示し、地域一斉の学校の臨時休業による児童生徒等の学びや心身への影響、保護者の仕事などの社会全体への影響を慎重に検討し、学校現場には改めて感染防止対策の徹底を、文科省には各地域の教育委員会や学校、教職員への支援を、それぞれ行うよう呼び掛けた。
最後に中川会長は、政府に対して「医療の逼迫、病床の逼迫への対応は強力に行うべきであり、日本医師会としても全面的に協力する。同時に、医療を守るためというよりも、まずは生命(いのち)を守るために感染防止対策を徹底する必要があるということを強く発信して欲しい。新型コロナウイルス感染症になったとき、どんな苦しみがあり、どれだけの後遺症があるかは、はかりしれない。これまでの踏襲ではない強力な感染防止対応をとって欲しい」と述べるとともに、「このまま、感染者が増加し、医療が逼迫することが際限なく続けば、もう誰も持たない。これまでの対策を引き延ばしている猶予はない。日本医師会は通常医療とコロナ医療を両立させるべきであると繰り返し申し上げてきた。通常の医療もコロナ医療も命の重さは同じであるが、一方で、厚生労働省と東京都の要請の中でも、『通常医療の制限も視野に入れて』と明記される事態となった。今回、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象を拡大した後の状況の変化を速やかに分析し、必要な英断を下して欲しい」と強調した。
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