令和3年(2021年)11月20日(土) / 日医ニュース
COVID―19に関する取り組みや課題について情報共有を図る
COVID―19ワクチン接種及び各国医師会の役割に関する台湾・日本・韓国シンポジウム
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「COVID―19ワクチン接種及び各国医師会の役割に関する台湾・日本・韓国シンポジウム」が10月29日、WEB会議で開催された。
本シンポジウムは、「日本と韓国のCOVID―19との闘いに関する豊富な経験は貴重な教訓であり、他のアジア諸国と共有する価値がある」としてシンポジウムの開催を求める邸泰源台湾医師会長の呼び掛けに応じて、開催されたものである。
最初にあいさつを行った中川俊男会長は、今回のシンポジウム開催に対する謝辞を述べた上で、新型コロナウイルス感染症の感染者が初めて確認されてから2年近く経っているにもかかわらず、今もなお予断を許さない状況が続いていると指摘。「新規感染者数の急減に伴い、日本では10月1日に、4回目の『緊急事態宣言』及び『まん延防止等重点措置』が全面解除されたものの、ワクチン接種の先行国でも行動制限緩和後に感染が再拡大した海外の事例があることを鑑みれば、引き続き、気を緩めることなく、新型コロナウイルスと向き合っていかなければならない」と強調した。
続いて、リー・ピル・ソー韓国医師会長、邱台湾医師会長がそれぞれあいさつした後、三つの医師会によるセッションが行われた。
日本医師会セッション
松原謙二副会長を座長とした日本医師会のセッションでは、まず釜萢敏常任理事が「COVID―19ワクチンの準備と推進―専門家の視点から」と題して、講演を行った。
同常任理事は、日本国内におけるワクチン接種の進捗状況について、本年2月17日に、医療従事者を対象にワクチンの先行接種が開始されたものの、「ワクチンに対し、より丁寧な対応を求める共通認識があり、各国に比べ、当初は接種の開始が2カ月程度遅れていた」と説明。
また、海外で承認されたワクチンを、国内での治験を経ずに承認する「特例承認」については、昨年12月時点の政府の分科会においては慎重な意見が大勢を占めていたが、ワクチン接種が進んだ国々において、新規感染者数が減少するなどの効果が見られたこと並びにワクチンの安全性について日本国内で報道されるに従い、「有事と平時の対応を分けて考えるべきとの意見が強まった」とし、「今後は特例承認が早期に認められる傾向となるのではないか」との展望を示した。
続いて、菅義偉内閣総理大臣(当時)が、5月に「1日100万回」の接種回数目標を掲げたことに対し、日本医師会員を始め、医療従事者が総力を挙げて取り組んだ結果、その目標を達成し、その後、ワクチン接種率は、10月25日公表時点で69・6%(2回接種者が全人口に占める割合)に達していることを紹介し、この割合をどこまで増やせるかが課題であるとした。
一方、接種が先行して進んだイスラエルやイギリス、厳重な水際対策を徹底していたシンガポールにおいて、新規感染者数が増加傾向にあることに言及。被接種者の免疫力、特に中和抗体が減少したことが問題になっていると指摘するとともに、「基本的な感染対策を怠ると感染拡大を防げず、新規感染者数と死亡者数の増加につながる」と警鐘を鳴らした。
また、今後については、3回目接種、交互接種、若年(10、20代)男性の接種における心筋炎への配慮等の課題を踏まえ、わが国の今後の方向性を決定する必要があるとの認識を示した。
続いて「パンデミック対策における日本医師会の影響力と支援」と題し、橋本省常任理事による講演が行われた。
COVID―19について、感染は感染者の20%から広まり、クラスターへと発展するとの知見を紹介した上で、日本では「三密の回避」「身体的接触を避けるための行動様式の推奨」などの感染予防策が取られてきたことを説明。日本医師会としても、毎週水曜日の定例記者会見を通じた情報提供や新型コロナウイルス感染症対策の緊急提言を行った他、他の医療団体との共同宣言発表、菅総理(当時)とのワクチン接種に関する会談、新型コロナワクチンの疑問に答える動画作成及び、全国知事会とオンライン協議を行ってきたことを報告した。
引き続き行われた韓国、台湾両医師会のセッションでは、韓国側から「韓国におけるCOVID―19診断とワクチン接種の全国的な経験」「韓国におけるCOVID―19の国家戦略」と題する二つの講演、台湾側から「COVID―19パンデミックの総合管理:eTCBからワクチンキャンペーンまで―台湾の観点から」「パンデミック対策における台湾医師会の影響力と支援」と題する二つの講演がそれぞれ行われた。
その後のパネルディスカッションでは、ブレイクスルー感染、学校での対応と子どもへのワクチン接種、ICUでのケアと医療従事者の役割、正しい情報提供のための取り組みなど、活発な意見交換が行われた。
今回の成果がパンデミック収束に寄与することを期待―中川会長
最後に中川会長が、新たな感染症の出現に備え、「COVID―19の経験の検証が重要」との認識を示すとともに、「今回のシンポジウムの成果が、世界医師会やCMAAOへのフィードバックを通じて、グローバルなレベルでのCOVID―19パンデミック収束に向けた取り組みに寄与するものになることを期待している」と述べ、シンポジウムは終了となった。