日本医師会定例記者会見 11月17日
11月8日に財務省財政制度等審議会財政制度分科会で社会保障について議論が行われたことを受けて、中川俊男会長は日本医師会の見解を説明した。
まず中川会長は、「財政面から個々の項目について、問題点を指摘するのは財務省の役割であり、よく勉強して頑張っているという印象もある」とする一方で、「所管である財政の問題を越えて細かく医療分野の各論に踏み込むのは、財務省としての守備範囲を越えており、現場の感覚と大きくずれている点もあり、容認できない指摘が多々ある」と指摘した。
財政審の資料に「躊躇(ちゅうちょ)なく『マイナス改定』をすべき」と記載されている点については、「新型コロナウイルス感染症禍において、地域の医療提供体制は依然として厳しい状況であり、躊躇なく『プラス改定』にすべきである」と改めて強く反論し、著しく疲弊している医療現場を立て直すためにも、引き続きこのメッセージをしっかりと発信していくとした。
その上で、令和4年度の予算編成に関しては、ポストコロナを見据え、新型コロナや新興感染症の医療と通常医療との両立が可能な医療提供体制を整備していく必要があるとするとともに、「平時の医療提供体制の余力こそが有事の際の対応力に直結すると訴え続けてきたが、2年近くに及ぶ新型コロナとの闘いで、このことは再確認できたのではないか」として、平時から余力を持った医療提供体制を整備しておく重要性を強調した。
また、財政審が「令和2年度、3年度で、収入の減少を補う以上の補助金が投入されたことにより、医療機関の経営実態は近年なく好調」と指摘していることに対しては、「補助金がなければ赤字の状態である。診療報酬で経営が成り立つようにしなくてはならず、そのためにもプラス改定は必須である」と反論した。
加えて、財政審が「低密度で対応できる医療しか行わない、いわゆる『なんちゃって急性期病床』が急増した」と述べ、診療報酬の見直しを求めていることについては、「『なんちゃって急性期病床』という揶揄(やゆ)するかのような呼び方は、医療機関に対しても、入院して治療を受けている患者さんに対しても極めて失礼な表現だ。まるで医療政策をもてあそんでいるかのようで、あぜんとしている」と強い不快感を示した。
更に、診療報酬については、「中医協で長年にわたり、真摯(しんし)に議論を積み重ねて現在に至っている」と説明し、「財政審の主張は診療報酬の各論に踏み込み過ぎであり、領空侵犯である。今後も引き続き、中医協で診療側と支払側で入院医療のあり方を真摯に議論していく」と述べた。
最後に中川会長は、今回の財政審の資料について、「『同一敷地内薬局等に係る調剤基本料の見直し』や、『薬価原価計算方式で採用されている上場製薬企業の高い平均営業利益率の見直し』など、一部異論がない部分もあるが、朝までかかっても反論しきれないくらいの問題がある」として、引き続き、中医協やその他の審議会等で、日本医師会の意見を述べていく考えを示した。
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