ポストコロナを見据え平時の医療提供体制の整備へ

　「全国知事会 社会保障常任委員会と日本医師会との意見交換会」が4月12日、WEB会議で開催され、ポストコロナを見据えた平時の医療提供体制の整備として、3テーマについて協議を行った。
　今回の意見交換会は全国知事会からの呼び掛けにより開催されたもので、日本医師会からは羽鳥裕・釜萢敏・松本吉郎各常任理事が出席した。
　冒頭のあいさつで内堀雅雄全国知事会社会保障常任委員会委員長（福島県知事）は、日本医師会の日頃の地域医療への取り組みや新型コロナウイルス感染症に対する活動に謝意を示した上で、「今後はポストコロナも見据え、新興感染症等が発生した際の影響にも留意しながら、地域の実情に応じた強靭（きょうじん）な医療提供体制を確保し、国民の健康を守る体制を平時から備えていくことが重要となる」と強調。同会が3テーマ（①地域の実情を踏まえた医療提供体制の構築②医療人材の確保、医師の働き方改革③健康長寿社会の実現に向けた、生涯にわたる健康づくりの推進）の重要事項について、現状、課題、必要な支援策を取りまとめ、政府への提言を行う意向であることを説明し、日本医師会に意見を求めた。
　釜萢常任理事は、「これまでも全国知事会の皆様と日本医師会は色々な相談をしながら、連携・協力して活動できていることに感謝申し上げたい」と述べ、テーマごとに担当役員より意見を述べていきたいとした。

　三日月大造同副委員長（滋賀県知事）は、地域医療構想について、「令和5年度末までに各医療機関の対応方針の策定が求められているが、新型コロナウイルス感染症対応の検証結果を踏まえる必要があるばかりでなく、保健所等に新型コロナ対策の負担が大きくなっている」として、柔軟な対応を政府に求めていく考えを説明。また、第8次医療計画に盛り込む「新興感染症等の感染拡大時における医療」について、議論の前提となる国の方針が具体的に示されていないことを指摘した。
　これに対し、釜萢常任理事は、「感染症の対策をしっかり整えるためには平時から余力をもって準備することが大事であり、国には方針や役割を明確にしてもらいたいと私どもも強く思っており、財源措置についても求めていきたい」と応答。加えて、国や自治体における新型コロナワクチンの3回目接種の積極的な推進も求めた。

　内堀委員長は、医師確保や偏在解消のための都道府県の取り組みには限界があるとした上で、「新型コロナによって、医師や病床の不足が浮き彫りになった。感染症などの事象が発生したとしても、住民が安心して医療を受けることができる体制を確保することが重要である」と述べ、医学部臨時定員増の延長や、臨床研修医、専攻医の募集定員の設定に当たっては特定地域への集中の是正などを求めた。
　更に、医師の働き方改革に関し、「令和6年度から医師の時間外労働の上限規制が行われるが、医師不足の地域においては医療提供体制に多大な影響を与える」として、現場の声を踏まえることを要望した。
　羽鳥常任理事は、2023年度の専攻医募集に向け、必要医師数が0・8以下の地域と東京などが特別連携プログラムを組んで、1年間は医師少数県で研修することなどを検討しているとし、「強制的でなく、幅広い世代を通じて、より多くの医師が医師少数県を支える仕組みをつくっていきたい」と述べた。
　松本常任理事は、本年4月1日付で日本医師会が「医療機関勤務環境評価センター」に指定されたことを説明するとともに、同センターでは医療機関の取り締まりではなく、医師の支援をしていきたいと強調。また、3月18日には医師独自の宿日直許可基準を明確化し、相談窓口を設置することなどを、四病院団体協議会、全国有床診療所連絡協議会と共に、後藤茂之厚生労働大臣に要望した（別記事参照）結果、4月から「宿日直の許可申請に関する相談窓口」が設けられたことを報告した。

　吉村美栄子同副委員長（山形県知事）は、自粛生活による運動不足などによる生活習慣の悪化が懸念されるとして、食事、運動などの望ましい生活習慣の獲得に向けた各地域での取り組みへの支援を要望するとともに、地域包括ケアシステムの深化のために、人材育成や研修などへの支援を要請。
　羽鳥常任理事は、「第2次までの『健康日本21』によって都道府県の健康格差が解消でき、健康寿命も延伸したが、まだ市町村の格差や収入による格差などがあり、第3次の課題である」との認識を示し、協力して対応していく考えを示した。