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令和4年(2022年)5月5日(木) / 日医ニュース

医療的ケア児支援法の施行に伴う各方面の取り組みを報告

医療的ケア児支援法の施行に伴う各方面の取り組みを報告

医療的ケア児支援法の施行に伴う各方面の取り組みを報告

 令和3年度都道府県医師会小児在宅ケア担当理事連絡協議会が3月30日、WEB会議で開催された。
 厚生労働省と文部科学省からは、昨年成立した「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(以下、医療的ケア児支援法)に基づく医療的ケア児支援センターの設立に向けた動きや、保育所・学校等における支援の拡充などについて報告があった他、自治体での具体的な取り組みなどが紹介された。

 松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした中川俊男会長は、「昨年6月に公布、9月に施行された医療的ケア児支援法の下で、各地域における相談体制の整備、保育所・学校等における受け入れ体制の拡充が図られるよう、行政、関係機関、関係団体がより一層連携して取り組んでいく必要がある」とするとともに、日本医師会としても協力していく姿勢を示した。

(1)医療的ケア児支援法について

①医療的ケア児支援センター等について
 河村のり子厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室長は、まず、これまで障害児通所サービスの基本報酬においては、医療的ケア児が直接評価されず、一般の障害児と同じ扱いであるために受け入れの裾野が十分広がってこなかったことを説明。そのため、今回の診療報酬改定では、いわゆる"動ける医療的ケア児"にも対応した新たな判定スコアを用い、医療的ケア児を直接評価する基本報酬を新設した他、基本報酬では採算が取りづらい1事業所当たりごく少数の医療的ケア児の場合であっても、幅広い事業所での受け入れが進むよう「医療連携体制加算」の単価を大幅に拡充したことなどを報告した。
 医療的ケア児支援センターについては、令和4年度の予算において、医療的ケア児等コーディネーターの配置等の人件費を拡充したことに触れ、同センターの開設が更に促進されるよう、期待を寄せた。
②学校における医療的ケアの充実について
 右田周平文科省初等中等教育局特別支援教育課長補佐は、全国で約2万人の医療的ケア児のうち、今後1万人が就学年齢を迎えることから、学校における医療的ケア児に対する支援の充実がますます重要になることを強調。
 医療的ケア児支援法では、国・地方公共団体の責務だけでなく、保育所・学校の設置者等の責務も明示されていることを踏まえて作成した『小学校等における医療的ケア実施支援資料~医療的ケア児を安心・安全に受け入れるために~』を基に、初めて医療的ケア児に携わる教師にも理解を求めていくとした。
 また、学校に配置される看護師について法令上の規定がなかったことから、昨年8月に学校教育法施行規則が改正され、「医療的ケア看護職員」という名称と職務内容を定めたことを報告。医療的ケア看護職員の配置については、令和4年度予算において3000人分の補助を行う予定であるとし、今後も学校現場における医療的ケアの環境整備を図っていく考えを示した。
③保育所等における医療的ケア児への支援について
 西浦啓子厚労省子ども家庭局保育課長補佐は、医療的ケア児支援法によって、保育所にも看護師等、または喀痰(かくたん)吸引等が可能な保育士を配置することが責務とされたことから、令和4年度予算においては看護師等の配置の補助を拡充する他、喀痰吸引等の研修の受講支援、補助者の配置、ガイドラインの策定、検討会の設置などにも加算するとした。
 一方、保育所等で医療的ケア児を受け入れていくための実践的な手引きとして、『保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン』を取りまとめたことに触れ、急な体調不良、事故・災害発生時等の緊急連絡先、手順、対応方法について、主治医からの指示の内容を踏まえ、保護者との間であらかじめ協議しておく必要性や、体調の急変時に備えた地域の中核医療機関との連携事例などが記されていることを解説した。

(2)大阪府豊中市の取り組みについて

 佐々木まや豊中市教育委員会事務局児童生徒課支援教育係主査は、同市が昭和53年に策定した「豊中市障害児教育基本方針」に沿って、障害のある子どももない子どもも共に学び、共に育つ教育を目指してきた中で、医療的ケア児も、本人や保護者が希望した場合には、地域の小中学校に就学し、他の児童生徒と一緒に学んでいることを説明。
 平成15年には教育委員会が小中学校へ看護師を配置しており、令和3年には市立豊中病院との連携を開始したとし、かかりつけの医療機関からの診療情報提供書を基に、豊中病院の医師が学校における医療的ケアの指示書を一元化して作成しているとした。
 佐々木氏は、人工呼吸器を使用している児童や肢体不自由な生徒が運動会や水泳授業、宿泊行事に参加している様子を紹介しながら、医療的ケア児は「ケアを受ける人」ではなく、「発達段階において医療的ケアを必要としながら"生活する・生きる"そして"学ぶ"主体」であると強調。教員には医療的ケア児の可能性を最大限に発揮させ、将来的に自立や社会参加のために必要な力を養うための指導力が求められると指摘した。

(3)令和4年度診療報酬改定について(医療的ケア児関係)

 松本常任理事は、令和4年度診療報酬改定において、小児慢性特定疾病やアレルギー疾患を有する児童に関わる関係機関の連携として、診療情報提供料(Ⅰ)注7の情報提供先に保育所や高等学校等が追加され、対象患者に小児慢性特定疾病支援及びアレルギー疾患を有する患者が追加されたことを報告。
 また、日本医師会の小児在宅ケア検討委員会の強い要望を受け、小児に対する在宅医療の評価の見直しとして緊急往診加算の要件が見直され、小児特有の速やかな往診が必要な場合が明確化された他、在宅がん医療総合診療料に小児加算(1000点/週に1回)が設けられたとした。
 更に、小児入院医療管理料を算定する病棟における、退院時の当該患者等に対する服薬指導及び薬局に対する情報提供についての評価として、退院時薬剤情報管理指導連携加算(150点/退院時1回)が新設され、対象患者は小児慢性特定疾病医療支援の対象者と医療的ケア児であることなどを説明した。

(4)小児在宅ケア検討委員会答申について

 田村正徳小児在宅ケア検討委員会委員長/埼玉医科大学総合医療センター名誉教授は、会長諮問「医療的ケア児のライフステージに応じた適切な医療・福祉サービスの提供」について、7回の検討を経て取りまとめた答申について概説した。
 その上で、人工呼吸器を必要とし、密接な見守りが求められるにもかかわらず、動ける医療的ケア児は重症心身障害児の枠を外れてしまい、障害福祉サービスが使えないことを訴えた結果、新医療的ケア判定スコアを用いた医療的ケア児の基本報酬が新設されたことを評価。同答申においても、市町村レベルでも浸透するよう、医師会員に周知することなどを提言していると述べた。

(5)協議

 協議では、事前に都道府県医師会から寄せられた多職種連携のための場の設置や、医療的ケア看護職員のオンラインでの相談を診療報酬の対象とすることについての要望などに松本常任理事が回答した。
 最後に猪口雄二副会長が、「医療的ケア児を実際に受け入れるに当たっては一筋縄ではいかないこともあるかも知れないが、豊中市の事例など進んでいる地域を参考に、各地域の関係者でよく話し合い、一歩ずつでも進めていくことが大事である」と総括し、引き続きの協力を求めた。

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