令和2・3年度 会内委員会答申・報告書(全文は日本医師会ホームページ「メンバーズルーム」に掲載)
医業税制検討委員会答申が取りまとめられ、5月18日、緑川正博委員長(日本医師会参与)から中川俊男会長に提出された。
本答申は、会長諮問「医業経営安定化のためにあるべき税制について」を受け、取りまとめられたもので、その内容は、(1)医療に係る消費税について、(2)医療法人税制について、(3)個人版事業承継税制の課題、(4)新型コロナウイルス感染症に係る税制措置、(5)その他―からなっている。
(1)では、「控除対象外消費税の問題は、国として取り組むべき喫緊の課題と言える」とした上で、小規模医療機関等の一定の医療機関においては、従前どおり非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、消費税負担の大きな医療機関においては、軽減税率による課税取引に改めることを含む税制の見直しを行うよう提言している。
(2)では、「認定医療法人制度」について、みなし贈与税課税を受けないための8要件のうち、相続税法66条4項にいう「負担が不当に減少」の解釈に直接関係のない項目を削除すべきと主張。「基金拠出型医療法人への移行と基金の評価」に関しては、基金の性質に対応した評価方法を通常の貸付金債権等とは別に設けることを提案している。
また、「経過措置医療法人と事業承継税制(新たな運営形態の検討を含む)」に関しては持分あり医療法人に対しても、非上場株式等の納税猶予制度に準じた事業承継税制の適用を認めるよう要求すべきと指摘。それが難しいのであれば、医業継続のために、非営利性を維持する形での新たな運営形態を改めて検討すべきとしている。
また、「経過措置医療法人の持分評価」については、相続税法第23条の存続期間の定めのない地上権の評価方法(6割の評価減)に準じて一定の評価減割合を乗じるなど、通達レベルの措置を早急に講じるべきとしている。
(3)では、個人版事業承継税制は医療の実態に即していないところもあるとして、①個人事業者の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の適用を受けている医業承継者が、特定事業用資産を基金として拠出して医療法人を設立した場合、当該基金に係る相続税・贈与税について納税猶予を認める措置を講ずる②特例事業相続人等が事業を継続することができなくなった場合、できなくなったことについて、財務省令で定めるやむを得ない理由を緩和する―ことが必要だとしている。
(4)では、新型コロナウイルス感染症から国民を守るために奮闘する医療機関や医療従事者を支援するとともに、今後も生じ得るパンデミックや大災害等に備える観点から、①社会医療法人・認定医療法人等の認定要件等における補助金収入の取扱いの見直し②新型コロナウイルス感染症に対応する医療機関・医療従事者に対する税制措置③新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者に対する税制措置―が強く求められるとしている。
(5)では、①減価償却等(耐用年数、設備投資減税)②四段階税制③事業税―について言及。①に関しては、医療用機器特別償却制度と「中小企業者」に対する特例措置の統合、②については、その存続のため、必要に応じて実態の把握と分析を行い、来年度以降の税制改正議論に備えることが、それぞれ必要だとしている。
また、③に関しては、「所得課税は、『所得』という担税力に対する課税であるのに対し、事業課税は、営利を目的とした事業体(事業収入)に対する課税であるという差異があること等に理解を求めるべき」としている。