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令和4年(2022年)8月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

誕生日にはChopinを

 「駅ピアノ・空港ピアノ・街角ピアノ」というテレビ番組があります。空港や駅に置かれたピアノを人々が思い思いに弾き、行き交う旅人が耳を傾ける。一台のピアノから生まれる一期一会の素敵な時間。いつかどこかで自分も......元来の感化閾値の低さと空想癖を抑えきれず、さっそく近所のピアノ教室を訪ねました。
 「先日も認知症予防のためにと言われて、72歳の方が見えられたんですよ、ふふっ」
 いや、私はそうじゃなくて......。
 「弾きたい曲がありますか?」
 ウーん、ショパンとかバッハとか。
 「......そうですか......。ん~、『ふるさと』あたりから始めてみましょう」
 こうして週1回1時間のレッスン通いが始まり、電子ピアノも購入しました。
 「ターターウン、これが4分音符と4分休符」「Cコードはド・ミ・ソ」「えーと、ヘ音記号の一番上の線はラ」。左の小指と薬指が引きつったように離れません。それでもレッスンの終わりにもらえる動物シールが30枚ほど貯まる頃には、弾ける曲も出てきました。
 「そろそろ目標を持ちましょう。そうだ、奥様の誕生日にピアノを弾いて差し上げましょう。喜ばれますよ~」。妻には「ご近所迷惑よ」と叱られているのだが。そうこうしているうちにコロナ禍でレッスンは中断となり、鍵盤に触れる機会もめっきり減ってしまいました。
 さて今年こそは妻の誕生日にピアノの旋律に乗せて真っ赤なバラをプレゼントしよう。
 あっ、一つ問題が......暗譜で弾けるのはChopinの「別れの曲」だけなのだが、この曲で良いのかな......。

宮崎県 日州医事 第869号より

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