令和2・3年度 会内委員会答申・報告書(全文は日本医師会ホームページ「メンバーズルーム」に掲載)
令和2年度に新設した医療経営検討委員会(委員長:佐藤和宏宮城県医師会長)は、会長諮問「医療機関における経営上の諸課題への対応」を受け、7回にわたる議論を重ねた上で答申書を取りまとめた。
本答申は、「はじめに」「Ⅰ.新型コロナウイルス感染症下の経営上の課題」「Ⅱ.今後のあり方を含めた検討」「Ⅲ.地域における取り組み」「むすびに」で構成されている。
「Ⅰ.新型コロナウイルス感染症下の経営上の課題」では、(1)新型コロナウイルス感染症下の医療機関の経営状況、(2)ワクチン接種協力体制での医療機関の経営上の問題点、(3)新型コロナウイルス感染症廃棄物の取り扱い―について言及。
(1)では、新型コロナ以前から見られた経営状況の二極化の傾向が更に強くなっていること等が指摘されている他、(2)では、ワクチン接種費用やワクチン接種促進支援事業、マネジメントコストの負担の問題点を指摘。(3)では、多くの地域で廃棄物処理業者からペール缶での処理を求められることによるコスト高のために経営を圧迫している事例が報告される一方で、交渉によりナイロン袋で引き取ってもらえた事例などを紹介している。
「Ⅱ.今後のあり方を含めた検討」では、有事におけるわが国の病院体制について、民間中小病院の減少による地域住民の困窮を解決するためには公的資金が必要であると指摘した上で、地域医療提供体制確保のためにも公的資金の確保に尽力することが求められている。
更に、有床診療所についても、コロナ禍での活動や経営を概観し、新型コロナウイルス感染症の収束まで補助金が継続して実施されるべきであると指摘するとともに、感染リスクは下がったものの高齢者施設や自宅で受け入れが難しい患者を引き受けるなど、活躍の場があるとしている。
また、中小医療機関におけるICT化推進の支援事業については、日本医師会による具体的支援策を提案するとともに、オンライン診療への対応については、かかりつけ医機能の一つとして必須となるとし、地域事情に応じて行政や医師会の協力の下、全てのかかりつけ医がいつでも安心して適切なコストで活用できる体制づくりが必要であるとしている。
「Ⅲ.地域における取り組み」では、北海道における取り組みとして、道内の病院・診療所へのアンケート結果概要及びアンケート結果を踏まえた具体的な取り組みの考察の他、大阪府の医療機関における新型コロナ対応の取り組み事例が紹介されている。