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令和5年(2023年)1月20日(金) / 日医ニュース

第31回日本医学会総会「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」に寄せて

第31回日本医学会総会「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」に寄せて

第31回日本医学会総会「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」に寄せて

 本年4月に東京で第31回日本医学会総会が開催される。今号では、松本吉郎会長と同総会の春日雅人会頭、門脇孝準備委員長が、医学会総会の魅力や、期待すること等について語り合った模様を新春特別鼎談(ていだん)として掲載する(令和4年11月1日、日本医師会会長室前室に於いて実施)。

ハイブリッド、オンデマンド方式を取り入れ、多忙な先生方にも参加しやすく

 春日・門脇(司会)明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 松本 明けましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします。
 門脇 松本会長、本日はご多忙の中、今年4月に開催されます第31回日本医学会総会について、ご説明のお時間をつくって頂き、誠にありがとうございます。
 まず、会頭の春日先生から一言お願いいたします。
 春日 おかげさまで準備は順調に進んでおります。副会頭には東京都医師会長の尾﨑治夫先生、ソシアルイベント委員長には日本医師会副会長の角田徹先生を始めとして、非常に多くの日本医師会会員の先生方にご協力頂きまして、誠にありがとうございます。心より御礼申し上げます。
 2011年の東京での日本医学会総会は、東日本大震災が発生した影響で、開催日や開催形態を大きく変更いたしまして規模も縮小となりましたため、本格的に東京で開催されるのは24年ぶりということになります。ぜひとも多くの先生方にご参加頂きたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 門脇 今回の第31回総会では講演の多彩さ、斬新さに加えてコロナ禍も踏まえまして、ご参加の皆様方への配慮として今までにないハイブリッド方式やオンデマンド方式などを取り入れて開催する予定です。お忙しい先生方にもご参加頂きやすくなっているかと思います。
 松本会長にお伺いしたいのですが、開催が間近に迫った今、今回の医学会総会に期待していることなどについて、お聞かせ頂けますでしょうか?
 松本 120年という長きにわたる歴史を持つ日本医学会の第31回総会が間もなく開かれるということで、大変楽しみにしております。
 医療において、インフォームド・コンセントを始めとする患者さんやそのご家族と医療提供者との信頼関係は最も重要となりますけれども、今回の総会はその点も重視して企画されていると伺いました。その辺りについて、本紙を読まれている会員の先生方のためにも詳しくご説明頂けますか。
 春日 今回のテーマは「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」としました。
 このテーマが示すように、今後はAI、IoT、ICT、あるいはロボティクスなどの技術革新によって、医学・医療が大きく変革し進化していくと思われます。しかしながら、このような革新的な技術を医療に実装するに当たっては、倫理的・法的あるいは社会的課題が新しく生じるというのは既に我々が経験しているところです。
 これらの課題について、患者さんや市民の皆様と合意形成し、社会から信頼を得ることが不可欠と考えております。従って、学術集会や展示の企画に当たってはこのような観点も重視しました。
 また、一般の方々向けには「第31回日本医学会総会 博覧会」と銘打ちまして、未来の医学・医療について分かりやすく親しみやすい、なおかつ充実した展示を準備しています。

五つの柱を設け、100を超える学術講演

 門脇 私からは準備状況のご説明をさせて頂きます。
 学術講演のプログラムは、(1)ビッグデータがもたらす医学・医療の変革、(2)革新的医療技術の最前線、(3)人生100年時代に向けた医学と医療、(4)持続可能な新しい医療システムと人材育成、(5)パンデミック・大災害に対抗するイノベーション立国による挑戦―の五つの柱を設け、100以上のプログラムを用意しています。
 また、特別講演でございますけれども、松本会長を始め、日本医学会長の門田守人先生、新型コロナウイルス感染症対策分科会長で結核予防会理事長の尾身茂先生、京都大学iPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥先生、春日会頭ら15名の方々からご講演を頂く予定としています。
 更に、会頭特別企画といたしまして、「ビッグデータがどのように医療・医学を変えるか」「2024年の医師の働き方改革元年を翌年に控えて―課題と展望」「COVID―19に世界はどう対応したのか?どう対応するのか?」「ヒトがん生物学が教えてくれるもの―次世代がん治療戦略の構築に向けて―」「2040年を見据えた地域医療構想―我が国の医療供給体制の課題と未来への提言」など、8講演を予定しています。
 また、総会への事前参加登録につきまして、日本医師会の先生方に大変ご尽力頂いていることに感謝申し上げたいと思います。
 今回の参加登録は、医師・歯科医師・研究者というカテゴリの中でも75歳以上の先生方、40歳未満の先生方については特別1万円の割引を導入するなど、多くの方が参加しやすいように工夫しています。
 加えて、今回の第31回から、春日会頭の発案により、初めて「ダイバーシティ推進委員会」という委員会を設置しました。この委員会の活動もありまして今回登壇される方々の女性比率は25%を超えております。
 前回大会では13%でしたので、その約2倍になっており、非常に画期的なことだと捉えております。
 それからもう1点。これまで医学会総会では、充実したプログラムであっても一度に参加できるのは1会場だけということもあり、「もっとたくさんの会場に行きたかった」という声を多く頂きました。
 そのため、今回は現地開催の模様をライブ配信し、WEBで視聴可能とするばかりでなく、オンデマンドで、医学会総会終了後も、5月から7月に掛けて繰り返し何度でも好きな時に視聴できるようにしました。
 つまり、希望されれば全部のプログラムの視聴が可能になります。
 このように、学術講演についても医師会の多くの先生方のご要望に応えられるのではないかと考えています。
 春日 今、門脇準備委員長からご説明頂いたことに加えまして、産業医セッションについても今回初めて現地参加に加えて全国にサテライト会場を設け、そこで受講することで現地参加と同様に産業医の単位を取得して頂けることになりましたことも今回の大きな特徴です。
 松本会長には、都道府県医師会への会場設営等につきましてお声掛けを頂き、深く感謝申し上げます。
 多くの先生方のご協力のおかげもありまして、この新しい試みもうまく運用できるのではないかと考えています。
 松本 ご説明頂き、ありがとうございます。参加者の立場にも立って、いろいろと工夫をされていらっしゃることに非常に感銘を受けました。
 オンデマンド方式によって、診療に追われている医師が現地参加できなくても学術講演を聴講できるのは大きな意味があります。
 また、自分の都合に合わせて好きな時間に繰り返し勉強できるということも学習する上では大変効果的だと思いますし、先程春日会頭が産業医セッションについて言及されましたが、サテライト会場を設置されたことは非常に素晴らしいアイデアだと思っています。
 一部の都道府県医師会でも、コロナ禍で一つの会場に大勢の人を集めることが非常に難しい時にサテライト会場を使って行っておりますが、全国の産業医は日進月歩の産業医の役割・機能に関する情報を必要としていますので、非常にタイムリーであると思います。
 会員の先生方にとりましても大変有意義で、感謝申し上げたいと思います。
 一般向けの学術展示や講演なども行われるようですが、診療所等に通院されている患者さんにとっても大変役に立つ内容になっているのではないかと思いました。
 展示についても何か工夫などされておられましたら、教えて頂けますでしょうか?

最先端の医学・医療、それから医療技術、知識を得られることは非常に有意義

 門脇 ご質問ありがとうございます。
 これまでの医学会総会では学術講演の会場と展示会場が離れている場合が多く、なかなか一体感が無かったのですけれども、今回は全て東京駅周辺、東京国際フォーラムを中心とした丸の内・有楽町エリアで開催いたします。
 また、従来の学術展示は主に医療関係者向けのもので大型の展示会場で開催しましたが、今回は丸の内・有楽町エリアにおいて、"まち"と一体となった博覧会の実現を目指しています。
 丸の内・有楽町エリアという地の利を生かして、一般市民向けの展示を「博覧会」と呼び、これにも力を入れています。
 「みんなで健康 みんなの医療 みんなが長寿」を一つのスローガンに、まさに市民と医療提供者との信頼関係を強める良い機会になればと願っています。
 その他、幅広い年齢層を念頭に、最先端の医学・医療に出合い、体験する「次世代スマートホスピタル202X」、健康を支える社会につながる「コミュニティクリニック」、暮らしから健康を伝える「セルフケアスタジオ」やCOVID―19企画、がんゲノム医療合同展示、子ども向けの展示も予定しておりますし、将来医師を目指す若い人向けの企画などもあります。
 また、ご家族で来場され、それぞれ関心のある企画に参加される方法もありますし、このイベントにはオンラインも含め、全体で50万人の参加を想定しております。
 松本 ご説明頂きまして、ありがとうございました。
 パンフレットも拝見しましたが、非常に幅広い最新の医学・医療を中心としたセッションがたくさん盛り込まれていますね。
 日本医師会の会員の先生方にとりましても、こういった最先端の医学・医療、それから医療技術、知識を得られることは非常に有意義でありますし、普段の診療から離れ、時間の許す限り学びの時を持って頂くことは、将来に向けての刺激にもなりますので、大変期待をするとともに本当に楽しみにしております。
 また、ダイバーシティ推進委員会とU40委員会の企画がございますけれども、やはり、私共としましても、ダイバーシティの取り組みは大事な観点だと思います。
 若い医師が地域医療に目を向け、ご自分の医療機関の中だけではなく、外に飛び出してさまざまな公的な仕事、あるいは地域包括ケアにのっとって行われている活動へ参加することは大変重要なことだと思っています。
 例えば、大学病院等でずっと勤務を続けられる場合でも、「地域との連携」「機能分担」が今のキーワードになっておりますので、そういったところに少しでも目を向けて下さる方が増えると、非常に良いのではないかと思っております。
 春日 松本会長、貴重なご意見に感謝申し上げます。
 今、松本会長がおっしゃいましたように、4年に一度の医学会総会ということですので、各世代の先生方におかれましても、ご自分の専門領域だけでなく、現在のわが国の医学・医療の全体像を俯瞰(ふかん)して頂いて、未来の医学・医療を考える機会にして頂けたら非常にありがたいと思っております。
 そのような観点からも松本会長の特別講演も非常に楽しみにしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 松本 ありがとうございます。私も今回のこの画期的な医学会総会で、講演をさせて頂くのは非常に光栄なことだと思っております。開催まであとわずかになりましたので、しっかりと準備をして講演に臨みたいと思っております。
 最後になりましたが、医学会総会のご盛会を心よりお祈り申し上げます。本日はお忙しい中、日本医師会館までお越し頂き、有意義なお話をお聞きできましたことを大変うれしく思っております。
 本当にありがとうございました。
 門脇 こちらこそ貴重なお時間を頂き、感謝いたしております。なお一層気を引き締めて、無事に医学会総会を開催できるよう努めて参りたいと思います。
 春日 日本医師会の先生方を始め、医療関係者、一般市民の方、1人でも多くの皆様と共に、第31回日本医学会総会が未来の医学・医療について考える機会になることを願っております。
 本日は誠にありがとうございました。

第31回日本医学会総会 2023東京
▪会 期
  [学術集会]2023年4月21日(金)~23日(日)
  [学術展示]    4月20日(木)~23日(日)
  [博覧会]     4月15日(土)~23日(日)
▪会 場
  東京国際フォーラム及び丸の内・有楽町エリア
▪開催形式
  現地開催+WEB開催(ライブ配信及びオンデマンド配信)
▪ウェブサイト
  https://isoukai2023.jp/
230120a5.jpg
230120a2.jpg松本 吉郎 会長
浜松医科大学卒業。医療法人松本皮膚科形成外科医院理事長・院長。大宮医師会理事、埼玉県医師会理事・常任理事、大宮医師会長、日本医師会代議員、日本医師会常任理事、厚生労働省 中央社会保険医療協議会委員等を歴任。2022年、第21代日本医師会長に就任
230120a3.jpg春日 雅人 会頭
東京大学医学部卒業。米国国立衛生研究所、米国ジョスリン糖尿病センターに留学。神戸大学医学部教授、神戸大学医学部附属病院長等を歴任。2012年、国立国際医療研究センター理事長・総長。現在、国立国際医療研究センター名誉理事長、朝日生命成人病研究所所長
230120a4.jpg門脇 孝 準備委員長
東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三内科、米国国立衛生研究所糖尿病部門客員研究員、東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授等を歴任。2011~2015年、東京大学医学部附属病院長。現在、国家公務員共済組合連合会虎の門病院長

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