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令和5年(2023年)2月5日(日) / 日医ニュース

「知ってほしい!新型たばこの危険性」をテーマに開催

西尾氏西尾氏

西尾氏西尾氏

 日本医師会シンポジウム「知ってほしい!新型たばこの危険性」の収録が昨年11月に日本医師会館において無観客で行われ、日本医師会公式YouTubeチャンネルでは1月6日からその動画の掲載を始めている。本号ではシンポジウムの概要を紹介する。
 本シンポジウムは、近年、新型たばこの使用者が増える傾向にある中で、新型たばこの危険性をより多くの方々に知ってもらうことを目的として、実施したものである。
 シンポジウムは、フリーアナウンサーの西尾由佳理氏の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長は、新型たばこは煙が出ないことから、健康被害も少なく安心といった誤解が生じており、その使用者が増えていることに危機感を示し、「本シンポジウムで新型たばこの危険性について、より一層の理解を深めてもらいたい」と述べた。

新型たばこの使用現状や規制に関して三つの講演

 その後は、三つの講演が行われた。

230205h2.jpg 田淵貴大大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部部長補佐は日本の現状について、新型たばこの中でも特に「加熱式たばこ」の使用者が増えており、2019年以降はその使用率が10%を超えていることなどを説明。「加熱式たばこは副流煙が少ないため、受動喫煙の問題もないと思われがちであるが、それは大きな誤解である」と強調した。
 また、加熱式たばこの害については「紙巻きたばこと大差はない」と述べ、アメリカの食品医薬品局も同様の見解を示していることを紹介。「新型たばこの使用者は良かれと思って使用している人も多いことから、その使用をやめさせるためには、対話を通じて正しい情報を知ってもらうことが重要になる」とした。

230205h3.jpg 田那村雅子田那村内科小児科医院副院長は、新型たばこの健康への影響について、「その全容は今後数十年掛けて観察・研究をしなければ分からない」とする一方、既に日本でも急性好酸球性肺炎を発症した事例や、妊娠中に母親が高血圧となったり、赤ちゃんが低体重で産まれてしまうといった影響が出ている他、子どもの誤飲といった問題も起きていることを報告。新型たばこであれば安心といった誤解から新型たばこの使用者が増えていることに危機感を示した。
 その上で、「たばこをやめたくてもやめられないのは『ニコチン依存症』という病気だからであり、必要に応じて禁煙外来などを活用して欲しい」と呼び掛けた。

230205h4.jpg  望月友美子新町クリニック健康管理センター産業保健統括部長は、改正された健康増進法が2020年4月から施行されて以降、日本においては原則、屋内は禁煙となったが、実際には加熱式たばこを規制の対象外としているところがあることを問題視。本来であれば、喫煙者も含め、例外なくあらゆる人が受動喫煙から守られなければならないと指摘した。
 また、各国の規制の状況として、①アメリカでは、たばこの煙にはどんなに少量でもリスクがある旨の政府報告書が出されている②EUでは2040年までにたばこの使用人口を5%以下にする目標の達成のため、加熱式たばこのフレーバー(香料)の使用を禁止する提案がなされている―こと等を紹介。日本においても、新型たばこへの認識や規制を刷新する必要があると強調した。

新型たばこへの早期の対応を求める意見が相次ぐ

230205h5.jpg 引き続き行われたパネルディスカッションでは、まず、黒瀬巌常任理事が、日本医師会として20年以上前から禁煙推進活動に積極的に取り組み、市民公開フォーラムの開催や公式YouTubeチャンネルを通じて、国民に禁煙の重要性を訴えてきていることなどを説明。特に、小冊子『禁煙は愛』については、企業での健康教育やかかりつけ医による禁煙治療の補助にも使用されていることを紹介し、「その内容を、今後もブラッシュアップしていきたい」と述べた。
 その後の意見交換では、田淵大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部部長補佐が、加熱式たばこと電子たばこの違いについて概説するとともに、日本においても、例外のない受動喫煙の防止に向けて、他国の事例に学び議論を深めるべきだと指摘。2025年の大阪・関西万博を前に、大阪府では国の規制よりも厳しい条例が施行される予定であることを紹介し、他の自治体にもその動きが広まることに期待感を示した。
 田那村田那村内科小児科医院副院長は、海外での禁煙への取り組みとして、たばこの人体への影響をリアルに示した写真をパッケージに使用している国もあること等を紹介。中高生の喫煙率はこの15年で約10分の1に減ってきてはいるものの、いまだに喫煙をしてしまう生徒もいるとして、そのような子ども達にニコチン依存の治療を促す対応をとることを学校側に要請した。
 望月新町クリニック健康管理センター産業保健統括部長は、たばこ対策の先進国に比べて30年遅れていると言われる日本では、医療従事者が積極的に働き掛け、法整備を含めた社会の構造を変えていくことが求められていると指摘。「年間に約20万人が、たばこが原因で亡くなっていることを考えれば、その対応は迅速でなければならない」と強調した。
 総括を行った黒瀬常任理事は、活発な討論が行われたことに感謝の意を示した上で、日本医師会として、「今後も科学的なエビデンスに基づいた実効性のある禁煙活動・施策を目指し、真摯(しんし)に禁煙活動に取り組んでいきたい」と述べ、シンポジウムは終了となった。

お知らせ
 日本医師会シンポジウム「知ってほしい!新型たばこの危険性」の模様は、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載していますので、ぜひ、ご視聴願います。
日本医師会広報課
https://www.youtube.com/channel/UCrZ632iTbtYlZ5S2CtGh6rA 230205h6.jpg

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