松本吉郎会長は1月19日に総理官邸を訪れ、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染症法上の位置付けに関して現在の「2類相当」から「5類」への変更が検討されていることなどについて、岸田文雄内閣総理大臣と会談を行った。
会談の冒頭、松本会長は、「社会経済活動と感染拡大防止、コロナ医療とコロナ以外の医療の両立を図りつつ、感染状況に見合った対策を講じていくことは必要と考えている」とする一方、新型コロナへの対応を急激に変更するのではなく、徐々に緩和していくことで、ソフトランディングさせていくことが重要との考えを説明。
患者の負担とならず、医療現場に混乱を来さぬ見直しを
更に、5類へ見直すことによって懸念される事項として、(1)新型コロナに係る医療費・医薬品費に対する国の支援が縮小される、(2)位置付けが見直されたとしても、医療・介護施設等においてはこれまでと同様に感染防御対策を取る必要がある、(3)現在、保健所が行っている入院調整がなくなってしまうことにより、患者及び医療現場の負担が増加する、(4)臨時発熱外来・検査施設等の位置付け―を挙げ、引き続き、国・行政による支援が必要であることを強調。位置付けを見直すとしても、患者の負担とならず、医療現場に混乱を招くことがないよう、段階的に行っていくよう要望した。
これらの要望に対して岸田総理は、段階的に見直す必要があるとの認識を示すとともに、懸念事項については関係各所とも検討の上、対応していきたいと応じた。
その他、当日の会談で松本会長は、「医療DX」「医師の働き方改革」についても言及した。
「医療DX」に関しては、健康保険証とマイナンバーカードの一体化の方向性には賛意を示した上で、「マイナンバーカードを取得していない方、高齢者や認知症患者など、カードを持っていても使いこなせない方々が、保険料を支払っているにもかかわらず、保険診療が受けられないような事態が起こることは絶対にあってはならない」と強調。昨年10月の衆議院予算委員会の中で岸田総理が同様の趣旨の発言をしていたことにも触れながら、国の対応を求めた。
また、医師の働き方改革については、「2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が適用されることになっているが、各大学病院から各地域の医療機関に派遣されていた医師が引き上げられることによって、地域医療、特に産科・救急に影響を及ぼすことが懸念される」と説明。「日本医師会としても、そうした事態が起こらぬよう大学病院とも話し合いを重ねていくが、大きな社会問題に発展する可能性もある。医師の働き方改革を進めていくには、『地域医療の継続性』と『医師の健康への配慮』を両立できるようにしていく必要がある」と述べ、国からの支援を求めた。これに対して、岸田総理は一定の理解を示し、この問題に関しても、関係者と協議を進めていくとした。
なお、新型コロナの感染症法上の位置付けの見直しに関しては、岸田総理が1月20日に加藤勝信厚生労働大臣、後藤茂之内閣府特命担当大臣と会談し、新型コロナを新型インフルエンザ等感染症から外す方向で作業を進めるように指示。今後は、日本医師会から釜萢敏常任理事も出席している厚労省の厚生科学審議会感染症部会で検討が進められることになっている。