令和5年(2023年)7月5日(水) / 日医ニュース
かかりつけ医機能が発揮される制度整備等に関する理解を深めることを目的として開催
「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」に関する説明会
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「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」に関する説明会が6月14日、日本医師会館小講堂とWEB会議のハイブリッド形式で開催された。
同法律は、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」を始め、「後期高齢者負担率」「出産育児一時金支給額の引き上げ」「医療法人等の経営情報のデータベース化」等が盛り込まれており、本説明会はその内容に対する理解をより一層深めてもらうことを目的に開催された。
説明会は黒瀨巌常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長は、まず、本年6月7日に「経済財政運営と改革の基本方針2023」(以下、「骨太の方針2023」)の原案が公表され、かかりつけ医機能について、「かかりつけ医機能が発揮される制度の実効性を伴う着実な推進」と書き込まれたことを説明。「かかりつけ医機能の制度面については、本法律をもって一定の整理がされたものと理解している」と述べ、引き続き日本医師会として、国民のためにかかりつけ医機能が更に発揮されるよう推進していく姿勢を示した。
また、「骨太の方針2023」に令和6年度のトリプル改定における物価高騰と賃上げへの対応を記載するための、国会議員への働き掛けについて、都道府県医師会の尽力に謝意を示すとともに、同原案の現時点の案に"次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・賃金上昇(中略)の影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う"と書き込まれたことを紹介。今後、必要な財源の確保に向けて全力で取り組んでいく決意を示し、都道府県医師会にも協力を要請した。
引き続き説明に移り、釜萢敏常任理事が「かかりつけ医機能が発揮される制度整備等」について説明。日本医師会が反対してきた財務省のかかりつけ医に関する主張の内容や、同法律の施行により変わる部分を紹介した上で、「地域における面としてのかかりつけ医機能」に関して、「自身の医療機関だけで全ての機能を24時間担うことは不可能な場合が多いが、地域の医療機関と連携をしっかり行うことで必要な医療機能を確保できる」と述べ、患者の急変時においても可能な限り地域におけるネットワークで対応していく必要があるとした。
更に、「かかりつけ医」のあり方に対する認識は各ステークホルダーでさまざまであることを説明し、日本医師会では、「かかりつけ医は、あくまで国民が選ぶもの」であること等を主張しているとした他、医師自身もかかりつけ医として選ばれるように積極的な研修を積む必要性があることを強調。日本医師会が実施している「日医かかりつけ医機能研修制度」を、今後更にレベルアップしていかなければならないとの認識を示した。
「医療法人データベース」に関しては、職種別の給与費について、制度発足時は任意の報告事項となったことや定例記者会見(2月15日、6月7日実施)で松本会長が主張した内容を紹介。「出産育児一時金」に関しては、本年4月に増額されたばかりであり、状況をしっかり見極めてから議論することを求めた。
釜萢常任理事は最後に、本年5月に医療・介護関係12団体で「医療・介護における物価高騰・賃金上昇への対応を求める合同声明」を公表したことにも触れ、今後更に本件に対する関係各方面への働き掛けを強めていくとした。
次に、岡本利久厚生労働省医政局総務課長が、①かかりつけ医機能が発揮される制度整備②医療提供体制関係の改正事項③出産育児一時金の医療保険制度関係の改正事項―などについて説明を行った。
①では、まず、「その主旨は"かかりつけ医を制度化する"ということではない」とした上で、かかりつけ医機能に関する議論の経緯や厚労省における問題意識について説明。全国的に見れば少子高齢化が進むものの、人口構造は大都市と地方によって大きな差があることから、「これまでの地域医療構想や地域包括ケアシステムの取り組みに加えて、かかりつけ医機能が発揮される身近な地域の医療をきちんと確保していくための制度整備を進める必要がある」と述べ、今後、国民、患者が医療機関を選択するための分かりやすい情報提供と、地域の医療機関の連携によるかかりつけ医機能の強化を進めていくとした。
更に、「かかりつけ医機能報告」について詳説し、「地域を良くしていくために、協議に資するように現状を的確に把握していくことが目的であり、何かを認定することを目的としているわけではない」と述べた。
②では、「医療法人データベース」に対する個人情報の公開につながる懸念について、「(データベースは)医療法人が置かれている現状について理解するための情報を得るもので、決して個々の法人のデータを開示することが目的ではない」と説明し、理解を求めた。
また、「地域医療連携推進法人制度」の見直しによって、個人立医療機関なども参加が可能となったことや、期限が迫っていた「持分の定めのない医療法人の移行計画認定制度」が延長されたことも報告した。
③では、出産育児一時金の増額について、全世代で負担を分かち合うものであるとするとともに、併せて行うこととされた"出産費用の見える化"に関しては、「妊婦の方々が医療機関を適切に選択できるよう、各種情報について公表して頂く仕組みの導入をこれから進めていく」と述べた。
その後、協議として、都道府県から事前に寄せられた質問及び当日の参加者からの質問に、日本医師会役員及び厚労省担当者が回答。さまざまな質問・意見が出され、兵庫県医師会からの、「今回の法律改正によって、従来の日本医師会・四病院団体協議会合同提言におけるかかりつけ医の定義の取り扱いはどうなるか」を問う質問には、釜萢常任理事が、「同提言は現状においても極めて適切で何ら変更の必要はないと考えている」と述べ、定義の変更はしない意向を示した。