松本吉郎会長は8月2日の定例記者会見で、政府の令和6年度予算要求へ向けて要望するに当たり、日本医師会では、7月25日開催の第12回常任理事会で要望を機関決定し、31日に加藤勝信厚生労働大臣に要望を行ったことを報告。加藤厚労大臣からは、「8月末の厚労省としての概算要求取りまとめに向けて、今回の日本医師会からの要求も踏まえて対応していきたい」との考えが示されたことを明らかにするとともに、概算要求として取りまとめた(1)新型コロナウイルス感染症対策、(2)働き方改革、(3)地域医療、(4)医療DX―の4項目について概説した。
(1)について、松本会長は、まず、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、経済活動、社会活動等、国家の成長を支えるあらゆる活動は、安全・安心な医療提供体制の下に成り立っていることが証明された」と述べるとともに、次期医療計画「5疾病6事業」における新興感染症等対策の前倒し実施により、いかなる感染症のまん延が起きた際にも、感染症以外の医療も確保しつつ、必要な人に必要な医療を安定的に提供することができる体制を構築する必要があると指摘。これらの考えの下、今回の要望ではこれまで実施されてきた新型コロナウイルス感染症対策を踏まえて、財源確保と施策の強化・拡充、補助制度の簡素化や迅速な交付等を求めていることを説明した。
(2)については、働き方改革への予算確保に関して、令和6年度からの医師の働き方の新制度施行に向けたさまざまな切り口での施策や、令和6年度以降、国民に安心・安全な医療提供体制を構築することが必要なことから、「医師の働き方の制度の基盤整備」等の4項目に関する新たな予算措置及び現行予算の大幅な増額を求めているとした。
(3)に関しては、1.かかりつけ医機能を中心とした医療提供体制や地域包括ケアシステムの充実のため、「地域医療介護総合確保基金」を始めとした支援策の強化が必要2.コロナ禍により、医療機能の役割分担と需要の急拡大への即応体制の重要性が認識されるとともに、東日本大震災等の災害の教訓を次世代につなげていかなければならないとの考えの下、感染拡大や災害等の有事に対して強靭な医療提供体制を構築していくため、「地域医療介護総合確保基金の拡充及び柔軟運用」など3項目に関する新たな予算措置及び現行予算の大幅な増額を要望しているとした。
また、(4)については、国が提唱する医療DXの推進のためには、オンライン資格確認を普及させ、その基盤を全国の医療機関等を結ぶ全国医療情報プラットフォームとして有効活用することが求められると指摘。そして、医師がこのプラットフォームを安心・安全に活用するためには、サイバーセキュリティ対策の強化及び厚労省の施策である保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI)の活用が必須だと述べ、それらを踏まえて、「医療機関等のサイバーセキュリティ対策費用支援」等の6項目に関する新たな予算措置及び現行予算の大幅な増額を求めているとした。
更に、松本会長は、今回の要望では、概算要求と併せて、事項要求として令和6年度トリプル改定についても、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性に基づいた改定が実現するよう求めたことを説明した。
その上で、今後については、引き続き、政府・与野党等の関係各所に対して要望を行っていく考えを示した。
関連資料
問い合わせ先
日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)