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令和5年(2023年)9月20日(水) / 日医ニュース

かかりつけ医機能の更なる充実・向上を目指して開催

かかりつけ医機能の更なる充実・向上を目指して開催

かかりつけ医機能の更なる充実・向上を目指して開催

 日医かかりつけ医機能研修制度令和5年度応用研修会(第1回)が8月27日、日本医師会館大講堂で開催され、34都道府県医師会の受講会場にも同時中継された。
 冒頭あいさつした松本吉郎会長は、全国各地で病院・診療所、診療科を問わず、多くの医師が患者との信頼関係の下、地域医療を支えるべく、かかりつけ医機能を発揮していることに敬意を表すとともに、「日本医師会としても、引き続き先生方がかかりつけ医として患者や地域医療への貢献を継続できるよう、全力を尽くしていく」と述べた。
 続いて、6題の講義が行われた。
 講義1「今後の新興感染症を踏まえた感染対策」では、大曲貴夫国立国際医療研究センター国際感染症センター長が新型コロナウイルス感染症について、(1)感染性が高い、(2)罹患(りかん)すると循環器系を始めとする健康問題のリスクが高まる、(3)高齢者に大きな影響を与える―といった特徴を踏まえて、今後も対応をしていく必要があると指摘。今後の課題としては、「診断をいかに早期に行うか」「患者にいかに早く治療薬を届けるか」「陽性者に曝露された患者に予防投薬するための薬の開発」等を挙げた。
 次のパンデミックへの備えについては、「パンデミックと認定されるまでに患者を受け止められる体制づくり」や「流行が長く続くことを踏まえて患者数が激増した場合に備えた体制づくり」が求められるとした他、今後の新興感染症を踏まえ、かかりつけ医が行う感染症一般への対応として、①症候群で分類して、感染症対応を確立する②地域連携の強化を図る③情報収集方法を確立する―などが必要になるとの考えを示した。
 講義2「介護保険制度における医療提供と生活期リハビリテーション」では、江澤和彦常任理事が介護保険サービスの種類を明示した上でその内容を概説した。
 同常任理事は改善すべき課題として、①高額な薬を使用している人は介護老人保健施設で受け入れにくい状況となっている②高齢者施設において「胃ろう」が増えていたため、「経鼻経管栄養」を経験したことのないスタッフが増えている③介護施設・福祉施設から医療機関に入院する患者の75%が急性期一般入院基本料を算定する病棟に入院しており、そのうち「誤嚥(ごえん)性肺炎」が14%を占めて最多であり、その中には地域連携ケア病棟等で対応可能な症例が混在している④口腔・栄養・リハビリテーションの取り組みをいかに一体的に提供するか―等があると指摘。
 その上で、「要介護となった方々を医療と介護の連携により、いかに支えていくことができるかが、我々の大きな役割になる」と強調し、参加者に引き続きの協力を求めた。
 講義3「口腔・栄養・リハビリテーションの多職種協働による一体的取組」では、まず、松尾浩一郎東京医科歯科大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野教授が「健康長寿のための口腔機能管理と口腔衛生管理のすすめ」として、口腔ケアの重要性を①口腔衛生管理②口腔機能管理―に分けて説明した。
 ①については、OHAT(Oral Health Assessment Tool)を使った口腔ケアの標準化の試みを紹介。口腔問題を共通言語化することで、連携ツールとして利用することができるなどのメリットがあるとし、かかりつけ医が日常診療において留意すべき口腔内の所見のポイントを踏まえた歯科への連携に言及した。
 また、②に関しては、自院の取り組み「カムカム健康プログラム」を紹介。口腔機能管理においては、咀嚼(そしゃく)と栄養を関連させて考える必要があるとした。
 矢野目英樹相澤病院栄養科長は、「管理栄養士による居宅療養管理指導のニーズ」として、多職種の連携の下、自院で2015年から取り組んでいる在宅医療における栄養食事管理の概要を説明。かかりつけ医の日常診療における栄養状態の所見の要点や居宅療養管理指導の指示を始めとする管理栄養士との連携について触れるとともに、今後の課題として、栄養に関する情報が多職種間で十分に共有されていないことを挙げ、管理栄養士及び栄養ケア・ステーション等の活用を求めた。
 講義4「日常診療で留意する皮膚科・眼科・耳鼻科の症候」では、浅井俊弥浅井皮膚科クリニック院長が、水痘・帯状疱疹・単純ヘルペスを代表例として、帯状疱疹と単純ヘルペスの鑑別、迅速キットを活用した診断や早期の治療薬の処方、50歳以上の予防ワクチン接種について解説した。
 毛塚剛司毛塚眼科医院長は、眼科専門医ではないかかりつけ医が見逃してはいけない症候として「視力低下」「視野狭窄」「結膜充血」などについて説明するとともに、「状況に応じて、専門医に紹介して欲しい」と述べた。
 永田博史山王病院耳鼻咽喉科頭頸部外科部長は、耳鼻咽喉科での精査が必要な、のど・めまい・頸部・耳・鼻などの症候を概説。特にのどの痛みがあり、呼吸苦や嗄声(させい)を伴う場合には喉頭の急性炎症を疑い、早急に耳鼻咽喉科へ紹介して欲しいと訴えた。
 講義5「尊厳の保持と自立支援のための認知症ケアと生活支援」では、山口晴保群馬大学名誉教授が「本人・家族・医療者のwell-beingをめざして」と題して、脳科学の観点から認知症の理解を深めた上で、非薬物療法を基本としたBPSD(認知症患者にしばしば生じる、知覚認識・思考内容・気分・行動の障害による症状)の予防について解説。脳の活性化を促すリハビリテーションの5原則を提示した他、BPSDを本人からのSOSサインと捉えた生活支援やポジティブケアなど、人として復権することを理念とした認知症ケアについて具体例を交えて概説し、「最も重要なことは『本人視点・本人の気持ち』を理解・共感・受容することである」とした。
 講義6「症例検討~意思決定を尊重した看取り/フレイルの改善へ向けた取組~」では、髙木暢医師(多摩ファミリークリニック)が85歳の患者を例に看取りまでの経過を解説し、「意思決定の場面では医学的な情報提供にとどまらず、本人や家族の意向を共有するために、医療者・介護ケアスタッフも含めて話し合いを重ねることが求められる」と述べた。
 一方、荒井康之生きいき診療所・ゆうき院長はリハビリ・栄養管理・疼痛管理による、96歳のフレイル改善症例を解説。特に神経筋骨格の障害がない廃用が原因の場合は回復の可能性があり、「中心に据えるべきはその人の生き方、大切にしたいものの維持である」と強調するとともに、「患者の生活や生き方までも把握するかかりつけ医は、可逆性であるフレイルへのアプローチにおいても重要な役割を果たすことができる」とした。
 講義終了後、角田徹副会長が閉会のあいさつを行い、研修会は終了となった。
 その他、当日は茂松茂人副会長から、「日本医師会かかりつけ医診療データベース研究事業(J―DOME)」の概要についても紹介が行われた。

お知らせ
 日医かかりつけ医機能研修制度令和5年度応用研修会のテキストにつきましては、日本医師会ホームページ「医師のみなさまへ」の中の「日医かかりつけ医機能研修制度」に掲載されていますので、ご活用願います。
 https://www.med.or.jp/doctor/kakari/kakarieizou/ 230920b2.jpg
キーワード:日医かかりつけ医機能研修制度とは
230920b3.jpg 日医かかりつけ医機能研修制度は、今後の更なる少子高齢社会を見据え、地域住民から信頼される「かかりつけ医機能」のあるべき姿を評価し、その能力を維持・向上することを目的として、平成28年4月に創設したもので、応用研修会は中央研修として年1回以上毎年行っている。
 令和4年度までに、本研修制度の修了者数は延べ12,578名、応用研修会の受講者数は延べ58,437名となっている。
 なお、日本医師会では、今年度、10月1日、11月3日の2回、本研修会の録画映像をWEBによりライブ配信する研修会を開催する予定としている。本紙にも案内を掲載するのでぜひ、受講願いたい。

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